リウマチセンター/リウマチ科
リウマチの薬物療法
リウマチの治療の基本は薬物療法です。かつては抗炎症剤(ステロイド剤、非ステロイド性抗炎症鎮痛剤)と金製剤が主な治療でしたが、1990 年代より多くの抗リウマチ薬の開発が進み、特に1999 年リウマトレックスが関節リウマチの適応をとり、さらに2003 年に国内で生物学的製剤の使用が可能となり、飛躍的な治療の進歩となりました。
今では生物学的製剤も8種類の注射製剤(レミケード、エンブレム、アクテムラ、ヒュミラ、オレンシア、シンポニー、シムジア、ケブサラ)に増えました。
また、生物学的製剤と同様に優れた効果が期待できる低分子化合物も登場し、2013年からトファシチニブ(ゼルヤンツ)、2017年からはバリシチニブ(オルミエント)が使えるようになっています。
当院では従来の治療に加え、これら最新の薬物治療が使用可能です。
分類 | 痛みを抑える | 腫れを抑える | 関節が壊れるのを抑える | |
---|---|---|---|---|
対症療法 | 非ステロイド性消炎鎮痛剤 (NSAIDs) |
〇 | - | - |
ステロイド薬 | 〇 | △ | △ | |
抗リウマチ療法 | 疾患修飾性抗リウマチ薬 (csDMARDs) |
△ | △ | △~〇 |
生物学的製剤 | 〇 | 〇 | ◎ | |
分子標的型合成抗リウマチ薬 (tsDMARDs) |
〇 | 〇 | ◎ |
抗リウマチ薬
リウマチの炎を消し関節破壊を抑えるためには、根本であるリウマチの進行を抑制する抗リウマチ療法が必要で、それは、疾患修飾性抗リウマチ薬と言われるメソトレキサート(リウマトレックス等)、プログラフ、アザルフィジン、リマチル、ケアラム(コルベット等)などの内服薬と、レミケードなどの生物学的製剤の注射薬を含みます。また、新しい強力な抗リウマチ薬としてJAK阻害薬(ゼルヤンツ、オルミエント)も登場しています。
メソトレキサート(リウマトレックス、メトレート)について
メトトレキサート(リウマトレックス)は世界でも日本でも最も多くの患者さんに使われているリウマチ治療薬で、リウマチ治療の基本的な薬剤です。
抗リウマチ薬の中で最も継続率が高く、高い有効性を示します。単独で使用するだけでなく、他薬剤との併用も一般的で、特に生物学的製剤との併用はその有効性をあげるだけでなく副作用軽減の意味でも望ましいと考えられています。メトトレキサートは、葉酸という一種のビタミンの代謝を邪魔することによって、炎症を起こしている白血球などの細胞の増殖や活性化を抑えます。それによって、関節滑膜の腫れが治まり、関節破壊の進行が抑えられます。
メトトレキサートは服用方法は間欠的です。あらかじめ決められた曜日、例えば月曜日の朝、夕などに服用し、それ以外の日には飲みません。
副作用などでこの薬が使用できない人もいますが、リウマチ患者全体の約8割の方が服用している標準的な大事な薬です。
主な副作用は肝機能障害、口内炎や胃腸障害などです。多くの場合、これらの用量依存性の副作用は葉酸(フォリアミン等)を併用することで抑制できます。葉酸はリウマトレックスを服用した1~2日後に週に1回服用するのが一般的です。なお、腎障害のある人は薬の作用が強く出るため白血球や血小板が急減する骨髄抑制に注意が必要です(高度の腎機能障害がある方は服用することができません。)
リウマトレックスの稀な副作用として間質性肺炎を認めることもあります。
間質性肺炎は特殊な肺炎で、リウマチ患者さんに発症しやすいことが知られています。
リウマトレックスを服用中の患者さんではそのリスクが上がると考えられており、数百人に一人の割合で発症すると考えられています。通常は入院治療を要し、重症化すると手遅れにもなりかねません。
主な症状は「発熱、からぜき、息切れ」であり、これらの症状があればすぐにご連絡下さい。リウマトレックス服用中は定期的な受診と検査を欠かさないようにしてください。
どのような薬もそうですが、体調が悪ければ服用をやめて、早めにご連絡をお願いします。
生物学的製剤について
生物学的製剤はバイオテクノロジーにより炎症物質や細胞を標的に作られた医薬品で、リウマチに対しては2003年から国内販売が開始されました。
保険は効いても薬剤費が高価という欠点はありますが有効性は高く、特に関節破壊抑制効果に優れています。長い目でみれば関節破壊が進行して将来的に人工関節置換などの手術に至り生活の不自由がでる経済的損失よりも生物学的製剤を使って関節を守り自由に働ける方が経済効果がよいとも言えます。
メトトレキサート(リウマトレックス)を中心とする抗リウマチ剤治療で充分な病勢のコントロールが出来なければ、出来るだけ早期に生物学的製剤を導入して関節破壊を防ぐという治療指針が国際的にも広く受け入れられています。 注意する副作用は重症感染症で、中でもニューモシスティス肺炎や細菌性肺炎、結核などの肺病変に特に注意が必要です。
投与前のスクリーニング検査が厳格に行われ必要に応じて予防投与も行われるため、 結核については当初憂慮されていたよりも少ないようです。
しかし生物学的製剤は強力な免疫抑制作用を持つため、免疫抑制下でリスクが高まる疾病であるニューモシスティス肺炎や細菌性肺炎を完全に避けることは難しく、頻度は少ないながらも発生を認めます。
早期対応することが重要なので、急性の発熱、咳、息苦しさなどの異常を感じた場合、直ちに主治医に連絡し診療をうけるようにして下さい。
ニューモシスティス肺炎に対しては、ST合剤(バクタ、バクトラミン等)という予防薬があり、特に発症リスクが高いと考えられる方は、この予防薬を服用します。
また、インフルエンザや肺炎球菌の予防注射(ニューモバックス)を受けることを主治医にご相談下さい。
この二つの予防接種は不活化ワクチンであり、リウマトッレクスや生物学的製剤を使用中でも接種できます。
その他、点滴剤の場合はアレルギー性の投与時反応(発熱、頭痛、発疹など)や、皮下注射剤の場合は注射部位の局所反応(発赤、腫脹など)がみられる場合がありますが、多くは対症療法で対応が可能です。
現在以下の製剤が使用可能で、今後も新たな製剤の発売が予定されています。
標的とする生体内物質(TNF、Tリンパ球)、投与方法(点滴もしくは皮下注射)、投与間隔(週1~2回から2ケ月に1回)、薬剤費(3割負担で月1.5万円程度から3万円強)ほか各々特徴がありますので、主治医の先生と相談し使用する生物学的製剤を決めてください。
薬剤費については高額療養費制度の対象となる可能性もあり、また別途補助制度などもあるため薬価だけで一律に説明することは困難です。必要に応じ加入する健康保険にも問い合わせてみて下さい。
各種社会福祉制度、厚生年金、公的補助については該当するかどうか院内の地域連携室(医療ソーシャルワーカー)、事務にお問い合わせください。
JAK阻害薬について
~JAK阻害薬の特徴~
リウマチの炎症が起きている関節の中では、炎症性サイトカインと呼ばれる物質が過剰に産生されています。
このサイトカインが白血球などの免疫細胞の表面にある受容体に結合すると、細胞内の「伝達経路」を通って核にシグナルが送られ、炎症性サイトカインが過剰につくられます。すると、免疫細胞が関節に集まってきて炎症が悪化し、関節の痛みや腫れ・破壊を引き起こします。「伝達経路」にはいくつか種類がありますが、ゼルヤンツとオルミエントはJAK(ジャック)という細胞内酵素の働きを邪魔することで、サイトカインからの刺激が核に伝わることを阻害し治療効果を表します。JAK阻害薬は、リウマチの病勢や合併症を考慮した上で、メトトレキサートと同時服用するかしないかを選択します。
JAK阻害薬の利点~生物学的製剤と同様に症状の改善だけではなく、関節破壊を抑えることが期待されます。生物学的製剤が無効だった方でも、JAK阻害薬が効く可能性があります。飲み薬ですから、特に注射が苦手な方にとっては救いになると思われますし、利便性の高い薬と言えます。
~JAK阻害薬の注意点~
生物学的製剤と同様に感染症(肺炎・敗血症:尿路感染・帯状疱疹等)が重くなる可能性があるため、注意が必要です。
普段から、手洗い、うがいなどの感染予防に努め、体調管理に気を配り、インフルエンザや肺炎球菌の予防接種も忘れずに受けましょう。帯状疱疹といって、子供の頃にかかった水ぼうそうのウィルスが再活性化して、皮膚に赤い水疱を起こすことがあります。JAK阻害薬を投与中の方は、その発生率が比較的高いことが知られています。帯状疱疹にかかった場合は、JAK阻害薬を休薬し、抗ウィルス薬の内服を早めに開始することが肝心です。
ステロイド剤・非ステロイド性抗炎症鎮痛剤について
ステロイド薬は商品名でプレドニン、プレドニゾロンといい、少量でも即効性のある薬です。しかし、ステロイド薬では関節破壊進行は防止できず、長期間服用すると骨粗鬆症や糖尿病、高血圧などの副作用が問題となる場合が多くみられます。また、ステロイド薬の離脱(中止)は容易ではなく、感染症のリスクも高くなります。したがって、発症初期などの炎症が著しく強い場合に限り低用量でのステロイド薬投与を考慮するが、使用する場合は同時に抗リウマチ薬の効果が発現する頃からステロイド剤の減量を開始して、可能な限り速やか(6ケ月以内)に離脱(中止)させるべきと推奨されています。
なお、ステロイド剤を長期間服用していると、体内でステロイドを作る機能(副腎機能)が働く必要がなくなるため低下してきます。そのため、急に服用を止めると体内にステロイド量が不足し、危険な状態になることがあります。
減量の際は必ず医師の指示に従ってください。
非ステロイド性抗炎症鎮痛剤はNSAIDとも呼ばれ、ロキソニンやボルタレン、セレコックスなど多種類あります。いわゆる痛み止め、消炎鎮痛剤で、リウマチが良くなればやめられます。胃潰瘍や腎機能、心機能の悪い方はNSAIDによる消化器症状や腎機能障害に注意が必要です。
薬剤師の関わり
- ・入院患者さんへ、薬の説明、指導、副作用の確認などをおこなっています。
- ・アクテムラ、オレンシア、レミケードなどの点滴を薬剤師が調製しています。
外来診療表
リウマチ科
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | |
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午前 | 予約優先駒野 有希子
総合内科・リウマチ内科副部長 (予約) |
予約優先益田 郁子
リウマチ科部長 (予約) |
予約優先門場
予約 |
予約優先益田 郁子
リウマチ科部長 (予約) |
予約優先第2・4・5週 門場
予約 |
|
午後 | 再診完全予約益田 郁子
リウマチ科部長 (予約) |
予約優先駒野 有希子
総合内科・リウマチ内科副部長 (第1・2・3・5週(予約)) |
休診・代診
- 2024年11月19日(火) リウマチ科 (午前):益田→休診
- 2024年11月20日(水) リウマチ科 (午後):益田→休診
- 2024年11月22日(金) リウマチ科 (午前):益田→休診
受付時間
午前診 8:30〜12:00
午後診 12:30〜16:00
夜 診 16:30〜20:00
予約外来
当院では待ち時間短縮のため、下記の印の科目については予約制を導入しています。
- 完全予約・・・完全予約制となっております。初診、再診ともに電話予約を受付しております。
- 予約優先・・・初診、再診ともに電話予約を受付しております。
- 再診完全予約・・・完全予約制となっております。再診の方のみ電話を受付しております。