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2017 ABC-WIN Seminar 脳動脈瘤塞栓用最新器材ニュースNo.2017-3 FD【医療関係者向け】

2017年ABC-WIN Seminar:15-20 January, 2017 Val d’Isere, France
No.:2017-3 脳動脈瘤塞栓用最新器材ニュース FD

http://www.abcwin-seminar.com/programme

フローダイバータ〜(FD) 2017年ABC-WINからの話題

本邦ではフローダイバータ~(FD)としてPipelineが薬事承認を受けている。
FDとして、いままでにPipeline, Silkがより早くから使われていることは皆さんご存知と思うが、最近ではPipeline Flex, Fred, Fred Jr, Derivo, Surpass, P64などの各種のFDが臨床治験されつつあるし、また実臨床に使用されだしている。
またFDに抗血小板機能を付与させる目的で、FD表面をphosphorylcholineでコーティング(Shield technology)したFDも実験的に検討されている1)。
Phosphorylcholineは赤血球の表面の主要構成物質である。
FD関連のいろいろな演題の中でいくつか興味を引いたものを紹介する。

FD留置後の自然動脈瘤破裂予防のためのコイル併用は有効か?

FD留置後に、治療目的を踏みにじるような現象、自然破裂が報告されて久しい。
当院のニュースでも取り上げているが、Pierotらの破裂原因に関しての論文から引用したFD,Fig.1を再掲する。
この動脈瘤破裂を予防するために、FD留置に加えてコイルを留置して、早期から確実な動脈瘤塞栓を行うという試みが行われている。
このコイル塞栓併用が果たして破裂防止策になるのか予備的に検討した演題があったので紹介する2)。
多施設共同研究である。
Kicielinskiらは10mm以上の大きな動脈瘤でFD治療症例220例について検討している(FD,Fig.2,3)。
30日以内の自然破裂群9例と非破裂群211例に分けさらに各群でコイル使用、否使用の2群に分けて検討している。
自然破裂群9例中コイル否使用は7例(78%)、非破裂群211例中コイル否使用は164例(78%)で、オッズ比は1でまったく差がないという結果であった。
FD留置後の自然破裂は稀な事象であることや、既往歴、動脈瘤の性状、血栓の有無、手技の違い、コイルの充填率、投薬内容など、多くの関連要因が含まれているため、解釈はまだまだ予備的ではあるが、差がないという予備的結果に少々驚きました。
意味なくコイルを使用しているのか、あるいは適切であるのか、これからの多症例の積み重ねが大事である。

FD:Willis動脈輪とその末梢の動脈瘤への適応拡大―FRED Jr

本邦でのPipelineの使用適応は内頚動脈の錐体部から上下垂体部における大型動脈瘤に限られている。
薬事承認の根拠となった臨床試験の結果からこの適応になっているが、それからも様々なFDが出てきており、海外ではより広い範囲の適応で臨床試験が行われている。
FDがより末梢の小動脈瘤にも使用できるかどうかが興味を持たれるとことである。
これに関してHeidelberg大学Möhlenbruchよりの多施設共同研究を紹介する4)。
使用されているのはFRED Jr.®である。
FRED Jrはウイリス輪とその末梢の動脈瘤の治療用にデザインされている。
42動脈瘤が治療されている(FD,Fig.4,5,6,7,8,9)。
未破裂、破裂の区別については不明であるが、FD留置後のゆっくりとした動脈瘤閉塞を前提としているので、おそらく未破裂あるいは慢性期であろうと思われる。
動脈瘤の位置は中大脳動脈が16例、distal ACAが12例、前交通動脈瘤が10例、後大脳動脈が2例、小脳動脈が1例、内頚動脈末端部が1例であった。
平均動脈瘤サイズは6mmでネックサイズは平均3.5mmであった。
治療成績は12か月後のものをみるとOKM scaleで瘤内への入り口部分の残存が37%で、瘤内に血流を認めないものが63%であった5,6)。
留置後から12カ月までの瘤内血流の変化について、全症例が一様であるわけではないが、おおむね閉塞の方向に進んでいる。
合併症はFD留置後30分以内の無症候性ステント部分血栓付着、一過性脳虚血発作が1例、小梗塞が1例、大梗塞が1例、死亡なしであった。
おそらく通常の塞栓術で困難な動脈瘤が治療適応になっていると想像されるので、そういった背景などを推測すると、大変良好な成績ではないかと小生は考えている。
発表者の結論にあるようにさらなる症例の追加と長期成績が望まれる。

引用文献・発表)

  1. Thrombogenicity of flow diverters in an ex vivo shunt model: effect of phosphorylcholine surface modification: Matthew W Hagen, Gaurav Girdhar, John Wainwright, Monica T Hinds: http://dx.doi.org/10.1136/neurintsurg-2016-012612
  2. Effect of concurrent coil embolization on delayed spontaneous aneurysm rupture following flow diversion: Kicielinski K., Deveikis J., Harrigan M., University of Alabama, Birmingham, UNITED STATES: ABC-WIN 18/1/2017 Val d‘Isere France
  3. Flow diverter stents in the treatment of intracranial aneurysms: Where are we?:
    Pierot L. et al. : Journal of Neuroradiology (2011) 38, 40-46
  4. Multicenter Experience with the new FRED Jr. Flow-Diverter Stent for Intracranial Aneurysms: Möhlenbruch M.,et al.: Department of Neuroradiology University Hospital, Heidelberg, GERMANY ; Naci K., Department of Radiology, Cerrahpasa Medical Faculty, University, Istanbul, TURKEY: 18 January 2017 ABC-WIN Seminar
  5. Observer Variability of an Angiographic Grading Scale Used for the Assessment of Intracranial Aneurysms Treated with Flow-Diverting Stents
    Joshia M.D., O'Kelly C.J., Krings T., Fiorella D., Marotta T.R.:
  6. A Novel Grading Scale for the Angiographic Assessment of Intracranial Aneurysms Treated Using Flow Diverting Stents: O'Kelly C.J., Krings T., Fiorella D., Marotta T.R.: Interv Neuroradiol. 2010 Jun; 16(2): 133-137 AJNR 34:1589-92 Aug 2013

文責 滝 和郎

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