腎臓内科
概要
当科は、「慢性腎臓病」など腎臓病全般にわたって診断と治療をおこなっております。
診療指針
京都南部の数少ない腎臓専門医および透析専門医として2012年4月から診療しています。腎臓病の急性期から慢性期、そして透析などの腎代替療法まで全般にわたって診断、治療を行っています。
腎臓病は、他臓器疾患の悪化に伴って腎機能障害が進行する症例が多く、注意が必要です。また、膠原病や糖尿病などの病気の1つの症状として腎機能障害が見られることが多いです。同時に、脳卒中や心臓病など心血管系合併症の危険性が高まります。したがって、腎臓だけを診ていれば良いというものではなく全身管理が必要になります。院内、院外に関わらず他診療科の先生方と連携を取って診療を行なっています。
腎機能障害の進行に伴い、腎代替療法(血液透析、腹膜透析、腎移植)の選択及び準備が必要になってきます。医学的な判断のみならず、社会生活をどのように送るか?といったことも含めて患者様と一緒に相談しながら先の方向性を決めていきます(Shared decision making)。
維持血液透析施行における内シャントの新規増設ないし修正術は他院に適宜ご紹介させていただいております。
2012年~2024年の12年間で計13名の方が腎移植を選択され、腎移植を実施している他院へご紹介させていただきました。現在でも腎移植に向けて準備を進めている方もおられます。
近年、難病指定を受けている疾患は年々追加され、腎疾患もいくつかあります。その中に多発性嚢胞腎があります。今まではこの疾患に対する特異的な治療法がありませんでしたが、現在はVasopressin Ⅱ受容体拮抗薬(Tolvaptan:商品名サムスカ®)投与によりその進行を遅らせることが可能になっています。
この治療は腎臓専門医かつe-learningを受講して認定を受けた医師のみが処方可能ですが、当院では治療可能です。
診療体制
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部長
1人の常勤医として診療を行なっています。
腎臓専門外来以外にも病棟での入院患者さんの診察や維持透析患者さんの診察も行なっています。
腎臓の専門外来は週2回、毎週月曜日及び木曜日の午後に診療を行なっています。
地域医療連携
お近くの開業医の先生方や他院からのご紹介は、当院の地域連携室を介して予め診察予約をしていただいた上で診察をさせていただいております。
ご紹介いただく際、それまでのかかりつけの医療機関で実施した検査の結果を持参していただくことも非常に大切ですので、服薬内容が記載されているお薬手帳と合わせて外来受診時にはご持参ください。 また、ご紹介いただいた内容により、診察前に予め採血や検尿、レントゲン写真など各種検査を受けていただくことがあります。
腎不全保存療法について
食事療法(蛋白制限、塩分制限)、血圧管理、貧血管理、脂質管理など行なっています。
厳しい食事管理、特に厳しい蛋白制限を行うことにより腎機能障害の進行を遅らせることが可能となる患者様もいます。しかし、全身の栄養状態の維持も同時に考慮しなければなりません。そのあたりのバランスを取ることを考慮しながら診療を行っています。
蓄尿などにより食事摂取内容を確認しながら管理栄養士さんの栄養指導も受けていただいております。
2018年6月に日本腎臓リハビリテーション学会から、腎臓病患者さんにおける運動療法の有効性についての情報をまとめ、腎臓リハビリテーションガイドラインが世界に先駆けて発刊されました。
ガイドライン作成委員として、保存期慢性腎臓病患者さんにおける運動療法の有効性について、その評価をさせていただきました。
慢性腎臓病の各stageにおいて、運動療法は推奨されています。
2022年4月には、透析患者さんへの運動療法が保険収載されました。併せてご相談しながら治療を進めていきます。
腎代替療法への移行について
残念ながらある程度以上腎機能障害が進行した場合、腎代替療法が必要になります。
具体的には血液透析、腹膜透析、腎移植です。いずれの療法につきましてもお話させていただき、医学的だけでなく社会生活面など含めて総合的にご相談させていただいた上で腎代替療法を選択していただいております。
また、”血液透析+腹膜透析併用療法”は世界で唯一、日本でのみ健康保険が適応されています。併用療法についても適宜対応していきます。
腎移植については説明を行います。しかし、当院で腎移植の手術を実際に行なっておりません。
腎代替療法として腎移植を選択された場合、腎移植を実施している他施設に適宜ご紹介しております。
また、近年第4の選択肢として保存的腎臓管理(Conservative kidney management:CKM)と言って、腎不全保存的治療のみでいき、“腎代替療法を行わずに最期を迎える”という方針もあります。
いずれにしましても、医学的な判断のみならず社会生活面なども踏まえて総合的にご相談の上、選択・決定する必要があります。
腎臓病患者さんの感染予防について
院内感染対策委員として職務を行う中で、感染予防対策も推奨しています。
腎機能障害が進行すると、服薬の種類の変更や服薬量及び服薬間隔の調整が必要になることが多いです。
(感染対策だけでなく、慢性腎臓病診療全般に該当することと言えます)
慢性腎臓病患者様は免疫能が低下し、感染症罹患の危険性が高くなっています。
(日本腎臓学会発刊:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023において、慢性腎臓病患者におけるワクチン接種について評価してまとめました。)
感染予防対策についてもご相談しながら方針を決めていきたいです。