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令和4年1月21日「CKD医療連携を考える会」を開催しました
『ADL・QOLと生命予後の改善』をリハビリテーション医療全体の目標に
地域連携のもとに慢性腎臓病(CKD)の病態を考え意見交換する「CKD医療連携を考える会」が2022年1月21日、中京区のホテルモントレ京都で開催されました(康生会武田病院、田辺三菱製薬㈱:共催)。同会は会場とWEBのハイブリッド方式で開催され、100を超える医療関係者が参加しました。
開会にあたり康生会武田病院の武田純院長は、包括的に腎治療を考える意義を説明しながら、「治療薬の選択、栄養指導、職域を超えた療養指導が非常に重要です。この連携の輪に新たな重要パーツとして加わったのが、本日のメインテーマとなる腎臓リハビリテーションです」と講演の主旨を紹介。続いて、「私が主催させて頂いた第1回日本糖尿病療養指導学術集会において、腎臓リハが重症化予防の新たなプレイヤーになるのではと思い、特別講演にお招きしたのが本日の講師である上月正博教授でした。当時は透析中の患者さんが運動をするという取り組みに非常に驚きました。現時点でも「腎障害と運動」というキーワードを私たちはまだ十分に活用できていないのではと思います。本日の講演では多くのご示唆が伺えるものと期待しております」と笑顔で挨拶しました。
特別講演では武田院長が座長となり、東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野の上月正博教授が「腎臓病を伴う糖尿病治療と腎臓リハビリテーション」と題し講演しました。
上月教授は、保存期CKD患者さんが運動療法を行うことで総死亡率や透析・腎移植移行を抑制するなど多彩なデータを披露しながら、「おそらく90年卒業の先生ぐらいまでは、CKD保存期の患者さんは『腎機能を悪化させないよう安静が治療の一つ』、CKD透析患者さんは『透析前後は疲労が出やすいので安静にしていた方が良い』とされていました。その考え方が大転換し、おそらく2011年以降、CKD保存期の患者さんは『息切れしない程度の有酸素運動を中心とした運動は腎機能を改善する。透析移行防止の治療の一つともなる。心血管疾患の予防にも有効である。CKD透析患者さんは、運動で透析効率が改善するほか、ADL改善、降圧薬の量を減らせる、心不全を減らせる、心血管疾患の予防に有効』といった認識になりました」と説明しました。
また上月教授は、リハビリテーションの3つのキーワードである『機能を回復する』『障害を克服する』『活動を育む』を取り上げ「一部しか目標達成が出来ないケースが多いですが、もっとできそうな患者さんに対しては運動ボリュームを増やすことで生命予後の改善が得られます」とし、『医療者はもっと欲張るべき』との見解を示しました。さらに今後について、「ADL・QOLと生命予後の改善は、腎臓だけでなく、心臓や吸呼など内部障害リハビリテーションの目標となっており、これからは、運動器や脳卒中など全体的なリハビリテーションにひろげ、『広く、早く、密に、そしてつなげる』ことをリハビリテーション医療全体でやるべきだろう」と聴講者に呼びかけました。
講演後の質疑応答では、心臓リハビリテーションと腎臓リハビリテーションのオーバーラップについての質問が出されると、「日本心臓リハビリテーション学会の会長が日本腎臓リハビリテーション学会の理事をしていただき、互いの学術集会でジョイントシンポジウムを行い、重複障害の治療について意見を交わすなどの取り組みを進めています」と上月教授が現況を説明しました。
武田院長は、「まさに臓器や職域を超えた連携だと思います。それとやはり、日常の診療において患者さんに運動の励行を頻回に薦めていくことが大事だと感じました。そして、その延長線上に今日のお話があると思いました。本日は多くの開業医の先生に聴講頂いておりますが、皆さんの診療に対して新たな刺激になったと思います」と語り、謝辞とともに講演を締めくくりました。