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令和4年1月15日「糖尿病カレントフォーラム ~高齢者の糖尿病管理を考える~」を開催しました。
高血糖・低血糖のリスク、有用な評価ツール、フロンティア研究など多面的なアプローチから実臨床への応用を考える
高齢者の薬物療法について地域の医療機関が討議する「糖尿病カレントフォーラム ~高齢者の糖尿病管理を考える~」が1月15日、オンライン・会場参加のハイブリッド方式で開催されました(康生会武田病院・下京西部医師会・㈱三和化学研究所:共催)。
演目は2部で構成され、会場とオンラインを結んで闊達な意見交換が行われました。
冒頭、康生会武田病院内分泌・糖尿病内科の米田紘子部長は、「新型コロナウイルス感染症の拡大で、ほぼ2年振りにこうしたフォーラムを開く機会をいただきました」とし、感謝を示すとともに開催の意義を強調しました。
第一部(基調講演)は、米田部長が座長を務め、同科の谷川隆久特任部長が「高齢者糖尿病の薬物管理について」と題し講演しました。
講演で谷川特任部長は、『血糖コントロールの目標』、『ポリファーマシー対策』、『服薬指導支援』の3つのテーマについて解説しました。
なかでも服薬指導では、アルツハイマー型認知症の2型糖尿病の事例(74歳男性)をとりあげ、自己注射を希望するも認知機能の低下で困難な状況であること、パンフレットで手順の進行をカバーしようとしても情報量が多いため、かえってそれが困難になったことを順に紹介。「これは単純化することが重要と考え、『日めくりの指導帳』を自作し、それを使っていただきました。最終的には8ヵ月後にインスリンから離脱することができ、あらためて本人に合ったやり方があるのだと実感しました」と説明しました。
講演のまとめとして谷川特任部長は、「血糖コントロール・ポリファーマシー・服薬指導に共通するのは『患者さんをよく知る』ことです。それはコミュニケーションをとるだけでなく、自覚的・他覚的に総合評価を行うことが大事だと思います」と語りました。
第二部(特別講演)は、康生会武田病院の武田純院長が座長を務め、国立長寿医療研究センター・もの忘れセンターの櫻井孝センター長が登壇。「高齢者2型糖尿病の評価と包括的管理」と題し講演しました。
講演で櫻井センター長は、高血糖・低血糖のリスクをそれぞれ紹介した後、実臨床における高齢者糖尿病で評価すべきこととして『身体機能』、『認知機能』、『心理状態・QOL』、『栄養状態』、『薬剤』、『社会・経済状況』をあげました。そのうえで「これらを具体的にどういった指標で測るのか、標準化していくことが医療・介護の連携という面でも重要です」とし、代表的な指標ツールを解説。汎用性・評価者・版権の面からも説明を加えながら、老年学会が推奨している指標ツールとして、認知機能・手段的ADL・基本的ADLを21項目の質問にまとめた『DASC-21』、これを老年学会が研究し8項目に絞り込んだ『DASC-8』を紹介し、その有用性を説明しました。櫻井センター長は、「ご家族からのヒアリングがなしに、コメディカルの方が観察し評価しても妥当性が保証されているのが大きな特徴です」と強調しました。
また、櫻井センター長は、糖尿病の管理・運動指導・栄養指導・社会参加による多因子介入を行い、認知障害の進行が抑制されることを明らかにするため、カテゴリーⅡの方を対象に15施設で研究を進めていることを紹介しました。その一部として、平均歩数と血糖変動のデータを披露し「横断的なデータなので因果関係を判断するものではありませんが、『平均歩数を伸ばしていくと血糖変動を抑えられる可能性が示唆される』ことが期待できるものと思っています」と語りました。
武田院長は、「高齢者における、高血糖・低血糖のリスク、評価ツール、研究のフロンティア情報をご紹介頂きました。なかでも認知症のカテゴリー分類の『DASC-8』は、先生方のお忙しい外来のなか、簡便で有用なスクリーニングツールになると思います。今日のお話は、いずれも、まさに明日から使えそうな内容であり、まさに新年に相応しいご講演だったと思います」と語り、フォーラムを締めくくりました。