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地域医療連携『糖尿病』学術講演会を開催いたしました。
●透析予防に向け、地域からのアクションを呼びかける。
地域医療連携を通じて糖尿病の重症化予防の推進を図る、「地域医療連携『糖尿病』学術講演会」(康生会武田病院、大日本住友製薬株式会社共催)が2月28日、下京区のメルパルク京都で開催されました。
当日は、京都市内の開業医の先生ら医療関係者約40名が出席。登壇者と会場が闊達に意見を交わす場となりました。
開会挨拶に立った康生会武田病院の武田純院長は、「地域との医療連携、すなわち、病診連携、病病連携、診療科連携、職域を超えた連携など、私たちの役割として、この『連携』が一番大事と考えています」と開催意義を強調。
続けて、自身の専門分野が糖尿病であることを説明しながら、「本日のテーマは、高齢患者の合併疾患と、糖尿病性腎症の重症化予防です。
とくに後者の透析予防は国策として動いていますが、京都市は出遅れているので、地域から声を上げ、何がしかのアクションを起こしていくことが重要」と会場に呼びかけました。
●糖尿病患者の死因は「がん」が増加し38%に
講演Ⅰでは、梶山内科クリニックの梶山靜夫院長が座長となり、康生会武田病院糖尿病内科の米田紘子部長が登壇、「入院で初めて明らかになる高齢者糖尿病の落とし穴」と題して講演を行いました。
米田部長は、低血糖が心筋虚血や脳血管疾患、転倒による骨折などをもたらすことを説明し、こうしたリスクを軽減するために、「低血糖を生じにくい治療薬を選択することや栄養状態の改善アプローチが重要」と説明しました。
また、日本人の糖尿病患者の死因では、虚血性心疾患、脳血管障害、慢性腎不全の頻度が4~7%程度まで低下したのに対し、悪性新生物は増加を続け38%になっていることを取り上げ、「高血糖をきっかけとしてご紹介頂いた患者さんに、大腸がん、胃がん、肺がんなどが見つかるケースがしばしばあります。
原因不明の治療抵抗性がある場合には、悪性疾患の合併を考慮する必要があります」と語りました。
●糖尿病性腎症の抑制の鍵のひとつは「リン」の可能性
講演Ⅱでは、康生会武田病院の武田純院長が座長となり、京都市立病院腎臓内科の家原典之部長(京都透析医会会長)が「糖尿病性腎症重症化予防のための連携治療」と題する講演を行いました。
家原部長は、透析導入について「原疾患の第一位は糖尿病性腎症で全体の43.2%。一方、第二位の慢性腎炎は16.6%と減ってきており、ここは腎臓内科が胸を張って言えるところです。
今後ひそかに増えてきそうなのが、高血圧や加齢による腎硬化症です。
今は14.2%ですが、将来的にトップに躍り出るのではないかと危惧されています」と説明しました。
また、糖尿病性腎症の指導について家原部長は、「腎不全の進行に伴い、リン再吸収を抑制するシステムが破綻していきます。
腎臓病にはタンパク制限が有効だと言われてきましたが、その背景にはタンパク質に含まれるリン制限があるとの指摘があります」と語ると、会場から大きな反響が起こりました。家原部長は、低タンパク食自体は腎機能低下のスピードを抑制するものではないとの日本腎臓学会やアメリカ糖尿病学会の見解を披露した上で、「ただし、リン含有量が高い食材は控えるべきです」と強調しました。
●腎症重症化予防の食事指導ができる栄養士の育成・連携
意見交換では、多剤服用の高齢患者さんに対し、減塩食によって薬剤の効果があがり、その結果として多剤処方の抑制につながるとの報告があったほか、武田純院長は、リン制限については、「タンパク制限をすると、どうしてもカロリー摂取が糖質と脂質に偏ってしまい、心血管イベントのリスクを増やしてしまう。リンの少ない食材選択を上手に指導する栄養士さんが大事である」と専門スタッフの育成と多職種連携の重要性について語りました。