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新着情報

お知らせ 2018/10/22

第31回康生会武田病院症例検討会を開催いたしました。

わが国の国民病とされる糖尿病の最新情報

地域の開業医や看護師ら154人が熱心に討議

 京都市域の開業医の先生など医療従事者が、最新医療を学ぶ第31回「康生会武田病院症例検討会」(共催:康生会武田病院、下京西部医師会、第一三共株式会社)が10月13日、京都市下京区のホテルグランビア京都で開かれ、医療関係者154人が熱心な討議を重ねました。①武田純院長.png

 開会に先立って武田純院長が「31回と歴史ある症例検討会を迎えられたのも、開業医の先生方の先端医療実践への熱意の賜物です。私も本日のメーンテーマである糖尿病専門医で、高齢者のり患率増や管理の難しさなど憂慮しているところです。一方で、薬の進化など多くの選択肢ができつつあるのも事実です。また、がんの死因も増えており、糖質と関連した糖尿病へのシフトの在り方も問題です。最新情報を共有して当院と手を携えて病気の治療、対策に尽力していけるよう願っております」と挨拶しました。

 

                      

 

症例Ⅰ
 「井上医院」の井上治院長が座長を務められ、武田病院糖尿業内科・内分泌の米田紘子部長が、「高単位インスリンを大幅に減量できた2症例―適正インスリン量の意義について」を発表。米田部長は冒頭、「糖尿病治療の指標としてHbA1cの値を主に反映させます。特にHbA1cの値が大きい場合には合併症を伴い、時には突然死を招いてしまいます」と強調しました。
 また、米田部長は症例発表に際して、2型糖尿病はインスリン分泌不全とインスリン抵抗性の協調によって惹起される点を示し、「補助インスリンは、少なくとも一時的には血糖改善に有効であるが、食事療法や運動療法が不十分であると、高用量インスリンの長期使用は、低血糖、体重増加、脂質異常、動脈硬化など代謝病態の悪化リスクとなる」と述べ、血統改善に難渋して過剰インスリン投与に至り、その結果、HbA1c高値にもかかわらず、低血糖を頻発した2症例について報告しました。症例Ⅰとして、「66歳男性、糖尿病歴29年。脊柱管狭窄症による運動障害と症状によるストレスから血糖上昇をきたし、インスリン治療が開始」を分析。インスリン抵抗性のために高用量(92単位/日)にした結果、空腹感による過食、間食で体重増加を招き、インスリン治療が開始したことを強調。症例Ⅱ「69歳男性、BMI23.6、糖尿量歴17年。狭心症に対してステント治療を繰り返した」についても発表しました。

②米田Dr.png    ③井上Dr.png                        

 

 

症例Ⅱ
 続いて、「たかあきクリニック」の高顯純平院長を座長に、症例Ⅱの「脂肪肝という生活習慣病~健康スポーツ医としての観点も含めて~」と題して、消化器センターの岡嶋亮医長が、脂肪肝の治療と対策を分析。「糖尿病患者の8人に1人が、肝がんや肝硬変などの肝疾患が原因で死亡されています。最新のアンケートでも糖尿病患者の約10%が肝疾患と報告しています。また、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)は生活習慣病が原因で在ることが多く、合併症として糖尿病に至ることは確かで、早期発見・治療が何よりです」と、画像を示しながら訴えました。
 岡嶋亮医長はスポーツ医師でもあり、康生会武田病院で始めたメディカルチエック、運動療法も画像をしましながら分かりやすく報告。岡嶋医長は、患者さんの病態、年齢や体力に応じた運動習慣の重要性を強調、「いつも患者さんに伝えているのは、ダイエットについて期待しないようにということです。懸命に運動をしても、1日400㌍の燃焼が精いっぱいだからです」とユーモアを交えて訴えました。

④岡嶋Dr.png    ⑤タカアキDr.pngのサムネイル画像

                      

特別講演
 京都大学大学院医学研究科・糖尿病・内分泌・栄養内科学の稲垣暢也教授が、「糖尿病をとりまく最近の話題」のタイトルで糖尿病の現状を分析。近年では、戦後、40倍も増加した事実や、1997年から5年ごとに厚労省が糖尿病調査をしており、6900万人が今は1000万人、予備軍を併せて2000万人に上っていることを、冒頭に訴え、近年の最新医療情報の「心血管イベントを見据えた糖尿病医療」について発表しました。⑥稲垣.png

 稲垣教授は、世界の2型糖尿病に対する長期間にわたる分析発表に続いて、日本の「糖尿病学会」でのコントロール目標として、血圧コントロールでは130~80未満を目指し、腎症の進展患者の場合は125~75未満、脂質はLDLコレステロールを120未満から100未満を目標にしていることを報告。特に「心血管イベントの患者さんの場合には、LDLコレステロール値は70未満を目指すようになっています」と述べました。

 ただ、こういった目標達成患者の現状について、「HbA1cが7%未満を達成できている患者さんは50%強で、血圧も同様です。脂質も65%だし、全てに目標を達成している患者さんは2割に過ぎません」と訴えました。

 近年日本の厚労省による「糖尿病予防のための戦略研究」での課題(3)が始まり、1200人を対象に8年間追跡する研究を発表。目標達成で、HbA1cが7.2%(目標は6.2%)でもかなり良好で、すでに6%未満を達成した群もありました。LDLコレステロールも104から良好群では86と際立っています」と評価しました。結果として、稲垣教授は、心血管イベントは19%~24%の減少や、中でも脳卒中が少なくなったことが際立っています」と分析調。また、「大事なことは、心筋梗塞や脳梗塞の発症率が抑制されており、日本での心血管イベントは明らかに減ってきているのは事実です」と強調しました。

 開業医の先生などから、「インスリンで最高92単位用いた結果について」「高齢者へのインスリン投与の注意は」「肥満の方へのSGLT2阻害薬の使用頻度について」「一日の歩行2000歩は少ないのでは」「高齢者への筋肉トレーニング方法」など多くの質問が寄せられ、担当の医師が、「外来ではHbA1cの数値にこだわってしまい、インスリンなどの薬を増量しがちになるので注意しています」と丁寧に応えました。

07検討会風景.jpg