宮津武田病院

  1. トップ
  2. 施設のご案内
  3. 宮津武田病院
  4. 排尿障害・尿失禁専門外来

医療法人財団 宮津康生会
宮津武田病院

排尿障害・尿失禁専門外来

当院ではご高齢の方の排尿障害(おしっこが出にくいこと)や尿失禁(おしっこが漏れてしまう・漏れそうになる)といった症状・悩みに対して専門的に対応する外来があります。

高齢男性では前立腺肥大症(前立腺が大きくなり、尿道を圧迫しておしっこが出にくくなる病気)や前立腺癌(放っておくと骨などに転移します)が急増しています。これは食生活の欧米化に伴い、脂肪成分の摂取が増加したためといわれています。前立腺癌には前立腺特異抗原(PSA)という診断価値の高い腫瘍マーカーがあり、無症状(早期)のうちに診断ができることが多くなりました。早期発見により種々の治療が選択でき、予後も改善しています。

前立腺肥大症は高齢男性の排尿障害の原因として最も多く、今までは手術以外に有効な治療法がありませんでした。しかし、最近では新薬の登場により前立腺を縮小させたり、排尿の症状をコントロールしたりすることが可能になってきました。

ご高齢女性の方に多い尿失禁は人に相談することもできず、日常生活(QOL)に影響を与えるつらい症状です。
尿失禁には切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁という2つのタイプがあり、全く違う原因で、違う症状なのですが、十分な区別ができず、間違った対応がなされていることもあります。切迫性尿失禁は急に生じる強い尿意が特徴(この症状は男性でもあります)で、これを尿意切迫感(過活動膀胱)といいます。

近年、この尿意切迫感を抑える新薬が多く開発され、良好な結果が出ています。また、薬剤が使用できない方には干渉低周波治療という方法もあります。腹圧性尿失禁は女性特有の症状で、咳やくしゃみをしたり、強い腹圧をかけた瞬間(重いものを持った時など)に尿が漏れる状態をいいます。腹圧性尿失禁は女性の骨盤底筋の脆弱化が原因ですので有効な薬剤はありません。このような方にはまずは尿失禁体操をしていただきますが、重症の方や尿失禁体操が無効な方では特殊なテープを使った簡単な手術(尿道スリング手術)が必要となります。

排尿障害や尿失禁の治療は近年、特に進歩しており諦めることはありません。

ぜひ、排尿障害・尿失禁を担当している泌尿器科を受診してください。

高齢者の夜間頻尿について

宮津康生会宮津武田病院泌尿器科  曽根淳史院長

夜間頻尿とは

夜間頻尿とは夜間睡眠中に1回以上排尿のためトイレに行き、そのために不眠になったり、排尿に不快感があったりなどの日常生活に影響を及ぼす症状のことを言います。トイレに行っても排尿に不快感なく、睡眠にも影響を及ぼさないものは治療の対象とはなりません。実際に治療の対象となる人は夜間に排尿に行く人の約60%くらいです。
夜間頻尿には大きく分けて3つの原因があります(図1)。

膀胱蓄尿障害とは前立腺肥大症や過活動膀胱といった膀胱や前立腺の疾患が原因です。夜間多尿(多尿)は糖尿病や心不全、腎不全、高血圧、睡眠時無呼吸といった全身疾患が原因で、生活習慣病と大きくかかわっています。睡眠障害は中途覚醒や早朝覚醒による覚醒後の頻尿や特に高齢者ではさらに長時間睡眠といった問題点もあります。
この3つの原因はそれぞれ独立したものではなく複雑に絡み合っており、中には3つとも原因として持っている人もいます。この3つの原因を簡単に鑑別できる有意義な方法が排尿日誌(図2)です。

前立腺肥大症や過活動膀胱といった泌尿器科疾患の場合、今はたくさんよい薬が出ていますし、手術も内視鏡でほぼ完治できる時代になっています。一般にはこのような泌尿器科疾患が原因として一番多いと思いがちですが、排尿日誌からみると高齢者の夜間頻尿の原因として最も多いのは実は夜間多尿なのです。当然、夜間多尿では排尿に関係する泌尿器科の薬剤は無効です。多尿になる原因の一番は過剰飲水です。たくさん飲水すると血液がサラサラになると思い込み、たくさん水分を取り夜間睡眠中に約1000mlもの尿を出している高齢者がたくさんいます。1日の標準尿量は1500ml前後であり、夜間睡眠中尿量は約500mlがよいといわれており、たくさん飲水しても血液はサラサラにはならず、ただ排尿回数が増えるだけです。こんな方は排尿日誌をつけることで原因が明確となり、飲水制限やアルコール、カフェインの制限だけでも改善します。後期高齢者では動脈硬化や軽い心不全のため下肢に浮腫(むくみ)がある方があり、夕方に強くなります。このむくみが夜間に尿となるため夜間多尿になります。こういった方は昼間に下肢に弾性ストッキングを履くことや夕方に下肢を高くして横になることで改善できます。高血圧や心不全、糖尿病、腎不全、睡眠時無呼吸症候群などの全身疾患のため、あるいはその薬剤のために夜間多尿になっている人もあり、一度は詳しく調べてみたほうがよいでしょう。高齢者の睡眠時間は6-7時間といわれており、就寝から1回目にトイレに起きるまでの時間が3時間以上あれば、まず問題はないといわれています。
当院では高齢者の夜間頻尿の原因を精査して患者さん一人一人に合った解決法を探していきます。必ずしも薬剤に頼らないところが特徴です。気になる方は一度外来を受診してみてください。