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第29回康生会武田病院症例検討会が開催されました
第29回康生会武田病院症例検討会
最新先端医療の今を開業医の先生と研修
地域医療支援病院としての貢献とともに、最先端医療情報を開業医や医療従事者と共有する目指す第29回「症例検討会」(共催:康生会武田病院、下京西部医師会、第一三共株式会社)が10月22日、リーガロイヤルホテル京都で開かれ、医療関係者ら100人が先進医療の今について症例を元に研修を行いました。
症例発表に先立って内藤和世院長から、「2025年問題で言われている超高齢化や餓死社会という、これまで日本が経験したことのない状況が迫ってきています。その際に増えてくると考えられているのが肺がんやCOPD(慢性閉塞性肺疾患)といった呼吸器疾患で、当院で経験したこれらの症例を中心に分析して今後の医療に役立てていただきたいと思います」と挨拶。横村医院の横村一郎院長を座長に、第1症例『ステロイド治療後に再燃したアミオダロン肺障害の一例』の発表に移りました。
発表は武田病院呼吸器センターの永田一洋内科部長が行い、他の薬剤が無効な再発性不整脈や慢性心房細動に対して重要な役割を果たす抗不整脈薬について分析、「副作用として起る肺障害は致死率が高く、長期間にわたって組織中に残存するため再発しやすく、慎重な使用が求められます」と強調しました。症例では62歳男性のアミオダロン肺障害再発への対応について画像を示しながら詳細に報告、「アミオダロンの肝臓など組織貯留によって死亡例や8カ月後の再発も報告されており、定期的なCTによる肝臓の異常の把握が大切になります」と分析しました。
症例2では座長としておがわ内科呼吸器医院の小川栄治院長が担当され、『生検後に自然消退した縦隔リンパ管腫の2例』について、武田病院呼吸器センターの竹中一正外科部長が発表。「小児や若年者に多くみられる拡張した嚢胞状の先天性奇形疾患で、頚部などに発生、咳や胸痛などですが、画像診断だけではリンパ管腫としての判断がし困難で、診断を兼ねた手術を行っているのが現状です。そのため手術を拒まれるケースもあり、患者、家族との十分なインフォームドコンセントが大切になります」と述べました。
特別講演として、京都府立医科大学大学院呼吸器内科学の高山浩一教授から『肺がんを見落とさないために』と題して、死亡原因の第1位で年間の死亡例が約8万人に上っており、「単一疾患でこれだけ多くの患者さんが亡くなっているのは、1935年から終戦まで死亡順位の第1位で亡国病と言われた肺結核以来です」と冒頭に紹介。高山教授は受動喫煙の肺がんに及ぼす影響は確かで、禁煙外来で3カ月を経過した場合の禁煙成功率が高いことも実例を挙げました。また、近年流行の「電子タバコ」について、「タバコの葉を吸うのではなく、葉を加熱した水蒸気でニコチンだけを吸うのです。燃やさないことで周囲への被害は低いものの、肺がんの発症との因果関係は証明できていません」と訴えました。
高山教授は、肺がんが転移しやすい疾患で「脊椎骨や脳への転移の際に発見されることも多く、腰痛での整形外科や眼科などで受診し、治癒しないため呼吸器内科へ来られます。ですから、どんな症状でも改善することなく2週間以上継続する場合には、胸部レントゲンを撮っていただきたいのです」と強調、胸部レントゲンやCT(コンピュータ断層撮影)による肺がん診断の事例を示しながら詳細に分析しました。
「効果的な薬剤の投与」「薬物の自然排出の有無」「呼吸器疾患は再発が考えられ、不断の対応が求められるのでは」「喀痰細胞診の有用性について」といった専門的な質問が寄せられ、各演者から丁寧な回答がありました。