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第8回地域医療連携PAD学術講演会が開催されました
■第8回地域医療連携PAD学術講演会
循環器疾患の最新医療情報の共有のために
京都市内の開業医の先生方との連携を深め、最新医療情報の共有をめざす武田病院グループの「第8回地域医療連携PAD学術講演会」(下京西部医師会、大塚製薬株式会社など共催)が5月30日、京都市下京区のリーガロイヤルホテル京都で開かれ、循環器疾患など末梢動脈の血管内治療や外科的治療について研修を深めました。
下京西部医師会の開業の先生方ら20人が出席、冒頭、康生会武田病院の内藤和世院長から、「武田病院では循環器だけでなく、全ての末梢動脈疾患に対して全国的な水準以上の医療を提供しつづけております。PAD学術講演会を通じて、治療技術の一層のレベルアップを図るとともに、今後、心臓弁膜症など大動脈領域の低侵襲、最新医療の提供のためにも力を注いでいく決意でおります」と挨拶しました。
第1部講演では、循環器内科・内科まつばらクリニックの松原欣也院長が座長を務められ、武田病院循環器センターの宮井伸幸医長が、『当院でのトルバプタン使用経験からの考察』と題して、染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の治療薬として大塚製薬が開発したトルバプタン(サムスカ錠)の利尿効果について、武田病院循環器センターでの3症例を示しながら分析。宮井医長は、心不全患者の75%がサムスカ錠の投与によって病態が改善したことを報告し、「当院では循環器疾患治療の切り札としてサムスカを用いています。在宅で体重の増加によって症状の悪化を来す患者さんについては、サムスカの外来での使用が必須で、入院回数も減らすことが可能になりました」と結びました。
第2部は、武田病院心臓血管外科の三和千里部長が、『高齢者弁膜症に対する外科治療』のタイトルで講演。三和部長は人工心肺の約70年の開発の歴史を示しながら、高齢化に伴って心臓弁膜症患者が急増している状況を強調。特にリウマチ起因よりも、動脈硬化性の大動脈弁狭窄症が増えており、「弁輪石灰化が進んでいる弁膜症に関しては手術以外に改善は望めません。なかでもアテローム性の弁膜症の場合には症状の悪化が早く、一定時期から急速に変化が起こります。予後も悪く、治療をせずに放置した人は発症後2~3年で亡くなっておられるので、弁膜置換術をお勧めしています」と訴えました。
また三和部長は、ワーファリン投与が多い若年層に用いるチタンやパイロライトカーボンなどの「金属弁(機械弁)」や、ウシやブタの「生体弁」など最新の機器、武田病院で手術に当たった75歳以上の患者さんの7症例を示しながら、心臓弁膜置換術の詳細を報告しました。
特別講演では、武田病院循環器センターの木下法之部長から、『Vascular Intervention~最近の話題~』との演題で、日本人の食生活の変化により、脂質異常症などによって心疾患の若年化の進行や、高齢化による動脈硬化、糖尿病の増加などによる疾患構造の変化について最初に報告。近年、下肢動脈疾患へのアプローチも増えており、20例の症例画像を提示しながら、足の内側やふくらはぎでの脈動を診たり、ABI検査(足関節上腕血圧比)など足首と上腕の血圧を測定する診断法も紹介しました。
木下部長は、「現在、循環器センターだからといって心臓領域だけを念頭に治療を行うのではなく、患者さんの全身を診ないといけない時代です。虚血性の下肢の潰瘍や壊死が進んでいる方もおられます。ステントを留置しても曲がったり捻じれたりするなど、困難が伴うことがあり、『Nitinol』という最新のステントを用いて治療成績が大幅に向上しています」と強調しました。