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令和4年3月10日(病診連携消化器カンファレンスを開催
あらゆる機会を捉え、地域医療の質の向上を目指す。
武田病院グループと地域の開業医の先生とで消化器領域を中心とした最新の医療について意見交換を行う「病診連携消化器カンファレンス」(康生会武田病院、下京西部医師会、武田薬品工業㈱、大塚製薬㈱:共催)が3月10日、オンライン方式で開催されました。カンファレンスは二部構成で、京都市内の開業医の先生ら約50名の医療関係者が聴講。登壇者の取り組みや報告に対し次々と質問が交わされるなど、闊達な意見交換の場となりました。
冒頭の開会挨拶で康生会武田病院の武田純院長は、新型コロナウイルスの感染状況について説明しながら「3回目のワクチン接種は非常に有効との興味深い論文(※)がでました。また、BA.2株は、私達が使っている抗ウイルス薬や抗体(カクテル)療法が有効との東京大学の論文も出されました。これは地域医療を預かる私達にとっても福音ではないかと思っています」と情報提供を行いました。
また武田院長は延期されていた当カンファレンスについて、「2年振りの開催となり、本来でしたらリアルでの講演会にしたかったのですが、感染の状況からバーチャルな開催形式となりました。あらゆる機会を捉え、地域医療の質の向上になるよう努めてまいります。皆様のご理解・ご協力を頂き、本日の講演を実りあるものとすることを祈念します」と聴講者に語りかけました。
※The New England Journal of Medicine
セッション1では、康生会武田病院消化器センターの磯崎豊部長が座長を務め、同センターの平田育大副部長が、「酸関連疾患最新の話題 ~H.pylori 除菌と GERD 診療ガイドライン 2021~」と題し講演しました。
平田副部長はまず、ガイドラインに基づく除菌レジメンについて説明。そのうえで同院でのピロリ菌診療として、2017年7月~2021年12月に同院での619株・判定が完了している471例についての調査結果を披露しました。平田副部長は、「H.pyloriの抗菌薬耐性化はCAM(クラリスロマイシン)が37.6%、AMPC(アモキシシリン)が21.2%、MNZ(メトロニダゾール)が4.8%でした。一次除菌治療成功率は93.6%と良好で、CAM感受性があればPAC療法で除菌成功率は97.8%になります」と説明。さらに、「ピロリ菌に対する抗菌作用を得るため、早く強力な胃酸分泌抑制(胃内pH>5)が望ましく、ボノプラザンが有力な薬剤と考えられます」と見解を話しました。
セッション2では、小笠原クリニックの小笠原宏行院長が座長を務め、康生会武田病院消化器センター磯崎豊部長が「コロナ禍における当科の大腸腫瘍診療の実際」と題し講演しました。
磯崎豊部長は、コロナ禍前後での診断時の病期など比較データを披露し、「2020年度以降、後期高齢者ではⅣ期の症例が増加傾向にありました。コロナ禍で受診控えとなり、症状のある患者さんの率も上昇しています。こうしたことが積み重なると、病期が進んだ患者さんが来年度以降、増加するのではないかと思われます」との懸念を説明しました。
続いて磯崎豊部長は、敷居の低い大腸がん検診をめざしCTC(大腸CT検査)を導入していることを紹介し、「CTCは検査時間が15分と短いこと、大腸内視鏡検査と比べると苦痛が少ないこと、必ずしも完全な腸管戦場を必要としないことが長所です。当然、内視鏡の挿入が困難な場合にも施行できますし、画像データの客観性も高い、大腸外の情報も把握できます。一方、短所としては、組織採取が出来ない、平坦病変の検出が難しい、CTを使いますので少ないながらも医療被曝があります」とメリット・デメリットを解説しました。
磯崎部長は、大腸がんが増加傾向にあることに触れながら、「早期発見された大腸がんの予後は良好です。無症状のうちに発見することが重要で、大腸がん一次健診・二次精密健診の受診率向上が必要。当科では、様々な患者さんのニーズに沿うよう検査及び治療の選択肢を用意し、大腸がんで亡くなる方が減ることを目標としています」と語りました。
カンファレンスの締めくくりにあたり小笠原座長は、一つひとつ講演内容を振り返りながら、「CTCによる画像を見せていただきました。大腸ファイバー(内視鏡)を受けたくないというケースでは、磯崎先生にご紹介頂ければ綺麗な画像を撮影して頂けると思います。本日は、皆様のお力と下京西部医師会の共済で本日のカンファレンスを開催することができました。また次回開催についても、多くのご参加を宜しくお願いします」と挨拶しました。