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令和3年9月4日(土)『第20回病診連携消化器クリニカルカンファレンス』を開催しました
最新知見の共有と病診連携の促進に向け
第20回病診連携消化器クリニカルカンファレンスを開催
武田病院グループと地域の開業医の先生とで消化器領域を中心とした最新知見を共有し検討する「第20回病診連携消化器クリニカルカンファレンス」が9月4日に開催されました(共催:康生会武田病院、下京西部医師会、アストラゼネカ株式会社、第一三共株式会社)。カンファレンスは病診連携講演と特別講演の二部構成で、感染拡大防止のためオンライン方式で聴講・意見交換が行われました。
開会挨拶で下京西部医師会の中野昌彦会長は、コロナ禍の対応への協力と健康への留意を求めつつ、「こうしたカンファレンスや学術講演会等を精力的に開催し、先生方の研鑽・ブラッシュアップの糧となるよう運営してまいります。本日はどうぞ宜しくお願いします」と語りました。
第一部の病診連携講演会は、大森浩二院長(大森医院)が総合座長となり二題の講演が行われました。
講演①では梶山内科クリニックの梶山靜夫院長が「糖尿病に合併する癌の早期発見-下部消化管-」と題し講演しました。
梶山院長は、「糖尿病患者の死亡原因の第一位は癌で34.15%を占めており、糖尿病患者のがんの発症率はおおよそ1.2倍です」とデータを示し、早期発見・早期治療の重要性を強調しました。
この有効な検査法として梶山院長は『便潜血検査』を取り上げ、「65歳以上で無症状の糖尿病患者210名に便潜血反応2回法を実施したところ36例が陽性(17.1%)でした。このうち要治療が31例(14.8%)で、がんが6例(早期がん3例、進行がん3例)、ポリープが25例とかなりの数が見つかることが分かりました。便潜血は1回37点、2回で74点と、低コストで非常に有効な検査です」と説明しました。
講演②では康生会武田病院消化器センターの碓井文隆医長が「当院における嚥下内視鏡検査を通した嚥下障害への早期介入について」と題し講演しました。
碓井医長は冒頭、「高齢化によって在宅嚥下障害が増加している」とし、診断に嚥下内視鏡検査(VE)を活用していることし、評価方法を解説しました。そのうえで碓井医長は、「高度の嚥下障害や高度の認知症が出現する前に嚥下リハビリの導入を行うほど、嚥下機能の改善・誤嚥性肺炎回避の可能性が高くなる傾向にあります」と康生会武田病院での取り組みを紹介。「適切なリハビリや適切な食事形態の選択など早期介入によって嚥下のトラブルを回避し、QOLの高い時間を延長できます」と語りました。
第二部の特別講演は、康生会武田病院消化器センターの磯﨑豊部長が座長を務め、三重大学医学部附属病院消化器病センターの堀木紀行病院教授が「酸関連疾患の診断と注意点および酸分泌抑制療法」と題し講演しました。
堀木教授は、国内でGERD(胃食道逆流症)の有病率が増加していることを紹介し、「背景を考えるとヘリコバクター(H.pylori)感染率の低下、菌療法の普及、GERD疾患の浸透があげられ、GERD診療ガイドライン2021でもこれが示されています」と説明しました。また、「日本人の病態は軽度のGERD疾患およびNERD(非びらん性胃食道逆流症)が多い」とし、自身が行った治療開始前の内視鏡検査での重症度評価データ(欧米人116人、日本人376人)を披露しました。
さらに堀木教授は、PPI(プロトンポンプ阻害薬)の長期投与について、『LOTUS試験における有効性報告』『日本でのネキシウム使用成績調査副作用発現率』を紹介し、「ほとんど問題となるような副作用はありません」と安全性について説明。そのうえで、「酸を抑え過ぎても必ずしも症状がとれるとは限りません。食道の過敏や胆汁の逆流もからんできています。pHを70%まで抑えると、そこからフラットになり、むしろ下がってきます。酸の抑え過ぎは良くないということが、今回のガイドラインでも示されています」とし、70%を超える酸分泌抑制は治癒率の向上をもたらさないことを強調しました。
閉会挨拶では康生会武田病院の武田純院長が登壇し、「コロナ感染の拡大を受けこのカンファレンスが延期になっていましたが、今日はようやくたどり着けたという気持ちです」と笑顔を見せました。そして、一つひとつの講演を振り返りながら、「総じて、今まで渇望していた学術集会の満足感を与えてくれただけでなく、まさに明日からも使える臨床的なものであり、そして病診連携を進めていく大きなエンジンになったと思います」と総括しました。
また武田院長は、「私共は地域医療支援病院として、病診連携は大きなミッションです。下京西部医師会も学術講演会は大事な活動です。できればコロナが早く落ち着き、『リアルに顔が見える講演会』を精力的に企画していくようにならなくてはいけないと思っています」と締めくくりました。