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令和元年11月7日(木)『心不全地域連携セミナー』が開催されました。
●職域を超えた"ワンチーム"での対応へ●
"増加の一途を辿る心不全"への対応を地域の医療機関が他職種で検討する「心不全地域連携セミナー」が11月7日、ホテルグランヴィア京都(京都市下京区)で開催されました(康生会武田病院、下京西部医師会、大塚製薬株式会社:共催)。
当日は地域の開業医の先生やコメディカルなど多くの参加者が集まり、闊達な意見交換を行いました。
冒頭挨拶で当院の武田純院長は、疫学調査について紹介しながら「糖尿病では、合併症のひとつとして心不全が注目されています。1型も2型も、HbA1cを1%改善させると、心不全リスクが8-38%も低下するという幾つかの研究が示されていますが、これらの成績は、肥満、脂質異常、高血圧、冠動脈の虚血性病変などの一般リスクの関与を除外して評価されたものです。従って、生活習慣病は重なると"掛け算"で心不全リスクを上昇させるので、私見ですが、生活習慣の改善と共にHbA1cを1%下げることで心不全リスクは50%ぐらい低下するのではないかと思います」と説明しました。その上でラグビーになぞらえ、「これはまさに、病診連携や診療科連携だけでなく、職域を越えて"ワンチーム"で取り組むべき課題であることを意味します。今日は、幅広い医療連携に基づいた対策を皆さんと一緒に考えたいです」と会場に呼びかけました。
第一部では、循環器内科・内科まつばらクリニックの松原欣也院長が座長を務められ、滋賀県立総合病院循環器内科の犬塚康孝副部長が「地域で診る心不全 -びわこ心不全連携スコアを活用して-」と題し基調講演を行いました。
座長の松原院長は「高齢の患者さんが増え、病床を占有していることから心不全パンデミック化している」と説明したうえで、「いよいよ差し迫ってきたが、現実的にまだまだ連携が不十分であるとの認識。もう一歩踏み込んでいく必要があります」と語りました。
犬塚副部長は、「当方の病棟でも心不全の患者さんの病床占有が進んでいます。これを地域で診ていかないといけない」とし、守山野洲医師会が一緒に取り組む『びわこ心不全連携スコア』について、症例をあげながら紹介しました。
さらに犬塚副部長は、慢性心不全の急性増悪による再入院について原因の1位~5位は、塩分・水分制限の不徹底、感染症、過労、治療薬服用の不徹底、身体的・精神的ストレスであるとし、「他職種介入により予防可能な因子がほとんどで、ここがチーム医療の介入のしどころ」であると強調。「体重が2kg以上増えた時、息切れやむくみがひどくなったら病院を受診する」と指導内容を絞り込むことで、効果的に増悪予防につながることを説明しました。
第二部では、当院循環器センターの木下法之部長が座長となり、医師・コメディカルの多職種によるディスカッション「心不全における病診連携を考える」を行いました。
登壇したのは、開業医の代表として関医院内科・循環器科の関透院長、当院より、勤務医として循環器センター澤西高佳副部長、看護師として植村真祐美循環器病棟看護師、心臓リハビリテーションとして上西貴美子心臓リハビリテーション指導士(健康運動指導士)、栄養士として財木恵管理栄養士、そして座長を合わせた6名。これに犬塚副部長がコメンテーターとして加わり、積極的な討議を行いました。
会場からは、塩分制限やたんぱく質の摂取による筋肉量の保持など、とりわけ食事指導に関する質問が多く出され、在宅患者さんのセルフケアの難しさが浮き彫りとなりました。
座長の木下部長は基調講演を踏まえ、「介入を増やした方が良いという話でしたが、それは医師だけでなくやはりコメディカルのアプローチも重要です。ちょっとした声かけやリハビリで日常の生活習慣が改善され、それが再入院を減らすことにつながると期待しています」と積極的な多職種介入の必要性を強調しました。
閉会挨拶では関院長が「今後2040年まで高齢者は増え続けます。とくに在宅医療分野はケアマネジャーはじめ訪問看護等に手伝っていただかなければ進まない。増悪すれば入院し良くなれば退院と、病診連携もこの繰り返しです。今後も討議を重ね、病診連携、多職種協働、そして冒頭に出ました"ワンチーム"で一緒に頑張っていただくことを願います」と締めくくり、会場は大きな拍手で包まれました。