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「第32回症例検討会・講演会」を開催いたしました。
●循環器病(脳卒中等)対策基本計画の動きなど疾患課題、地域課題について意見を交わす●
康生会武田病院と地域の開業医の先生、医療関係者が最新知見を一緒になって学ぶ「第32回症例検討会・講演会」(共催:康生会武田病院、下京西部医師会、第一三共株式会社)が10月26日、ホテルグランヴィア京都(京都市下京区)で開催されました。
今回のテーマは、昨年末に成立し大きな注目を集めている『脳卒中・循環器病対策基本法』の解説と血管病に関する症例検討です。冒頭挨拶に立った康生会武田病院の武田純院長は、主旨説明をしながら「非常に重要な法律であり、超高齢社会を迎える我が国、京都府、京都市、私共の病院、当地域、いずれにおきましても大きな課題となります。今日は皆さんとともにディスカッションし地域医療の質の向上につなげていく場としていきたい」と会場に呼びかけました。
症例提示Ⅰでは、くろやなぎ・いいだ医院の畔柳彰院長が座長を務め、康生会武田病院循環器センターの木下法之部長が「冠動脈石灰化病変の治療」と題し発表しました。
木下部長は講演で、「血管の石灰化は高齢層で起こると思われがちですが、意外と若年層でも発症しています。この石灰化により脳梗塞等のリスクが高くなります」とし、ACS(急性冠症候群)の細胞学的な変化、メカニズムを解説。プラークの破裂やErosion(破裂しない内膜障害)によって血管が詰まるケース、プラーク内で板状になった石灰化病変が折れて飛び出し血管が詰まるケースについて丁寧に説明しました。
また、PCI(経皮的冠動脈インターベーション)後の抗血小板療法ガイドラインが大きく変わってきていることについても言及。ガイドラインや抗凝固薬について質問にいつでも対応することを説明し、「開業医の先生方と協力し治療に携わっていきたい。何かあればお声がけいただきたい」と会場に呼びかけました。
症例提示Ⅱでは、梶山内科クリニックの梶山靜夫院長が座長を務め、康生会武田病院内分泌・糖尿病内科の米田紘子部長が「糖尿病の陰に潜む病気にご用心」と題し発表しました。
米田部長は、康生会武田病院脳卒中センターに搬送される患者さんのHbA1cの値を示しながら「6.4%以上の糖尿病患者さんより、境界型未満の5.5%~5.9%で搬送される患者さんが非常に多い」と高リスク群について説明。さらに頸動脈IMTの異常をみたデータを紹介し、「血糖値スパイクが大血管症に関与します。心血管イベントの予防のため、高血糖の是正とともに血糖変動の平坦化をめざすべき」と説明しました。このほか米田部長は、難治性の高血圧やインスリン抵抗性についての症例、認知症低下やうつ傾向、パーキンソニズムを考慮すべき症例、血糖コントロールが理由なく悪化する悪性疾患の症例など合わせて4症例を紹介しました。
特別講演では、武田純院長が座長を務め、日本脳卒中学会の宮本享理事長(京都大学医学部附属病院長)が登壇。「脳卒中・循環器対策基本法とこれからの脳卒中医療」をテーマに、同基本法の成立経緯と目的、今後のステップについて解説しました。
宮本理事長はまず、基本法成立にかかる厚生労働省の動きと関係学会の動きを紹介。とくに日本脳卒中学会が日本循環器学会と協力し「脳卒中と循環器病克服5ヵ年計画」を2016年12月に公開し、これに基づくアクションプランを進めていることを強調。そして来年7月頃まとめられる予定の「循環器病対策基本計画」に対し、臨床現場にマッチするものとなるよう学会が提言を行っていくこと、2021年施行の都道府県循環器病対策推進計画に対し医師会・都道府県と連携して学会が働きかけを行っていくことを説明しました。 また、注目される医師の働き方改革について触れながら「医師の時間外労働の規制が施行されるのが2024年4月。推進計画の2期目と第8次医療計画のスタートも同時であり、医療計画と働き方改革は連動しています。この対応に向け24時間365日体制のところは人的補充をしなければなりません」と語りました。
閉会挨拶では、下京西部医師会の小笠原宏行会長が登壇し、それぞれの症例発表・講演内容を振り返りました。とくに特別講演で取り上げられたACP(アドバンス・ケア・プランニング)について、「ご家族と患者さんご本人が話し合われても、その後、話が変わるということが頻発しています。どの時点でどう上手くまとめられるのか非常に困難です」とし、終末期医療の難しさを語りました。そして「勉強熱心な先生方にお集まりいただき感謝いたします」と会場に謝意を表し、今後の発展を祈念して挨拶を締め括りました。