新着情報
令和元年8月11日(祝・日)第6回京都ハートの日市民公開講座を開催しました。
第6回京都ハートの日 市民公開講座を開催
●150名が参加し最新の治療と予防法を学ぶ
心臓病予防をテーマとした「京都ハートの日 市民公開講座」が8月11日にメルパルク京都(京都市・下京区)で開催されました。
第6回となる今回の講座には150名が参加。講師の話に耳を傾けながら熱心にメモをとるなど、心臓病についての知識を深めました。
冒頭挨拶に立った、康生会武田病院循環器センターの木下法之部長(京都ハートの日実行委員会委員長)は、今年で6回目を迎える喜びとともに、「毎年お盆前に開かれるハートの日講座ですが、酷暑の中、多くのみなさまに集まっていただきましたこと感謝申し上げます」と謝意を表明。
そして「本日は心臓病に関する多くの専門家の先生にお集まり頂いており、会場の皆さんからのご質問にお答えしていきたい」と会場一体の学びの場であることを強調しました。
●運動療法などで長期予後の改善を
オープニング講演は、「これからの心臓リハビリテーションについて」と題して、康生会クリニックの今井優健康運動指導士が講演。
かつては、術後は安静にするのがリハビリテーションであったが、運動能力が低下し、同じ量の運動で心拍数が上がってしまうようになるなど、より心臓に負担がかかることが分かり、心臓リハビリテーションが始まったことを紹介。
最近では、心筋梗塞のほかに心不全でも心臓リハビリテーションが大変有効であることをあげましたが、実態は「まだまだ知られていないケースが多いし、継続して通院されなくなってしまうことも多い」と説明。
また、家庭でもできるかんたんなストレッチ運動や、数をかぞえながら脚を動かす認知機能低下予防運動などいくつか紹介し、参加者全員で身体を動かしました。今井科長は、「武田病院グループをはじめ、多くの施設で心臓リハビリテーションを行っているので、長期予後の改善のためにも、問い合わせてもらえれば」と呼びかけました。
●過度な摂取はせず、無理のない食事を
続いて、康生会武田病院の財木恵管理栄養士は、「ハートにやさしい食事」と題し、ホルモンバランスや細胞膜の生成など、重要な働きを担っている脂肪酸の摂り方や減塩について紹介。
「脂肪の摂取は、植物性を中心にすることで動脈硬化予防に効果がある」、「食塩の代わりに大葉やショウガ、からしなど、香味野菜や香辛料を活用することでおいしく感じる」「醤油は直接かけずに小皿にとる」など、調理の工夫やコツを紹介。
栄養バランスを考えながら、適度な食事量と運動をすることが大切であると話しました。
●むくみは心臓からのサイン
また座長を務める木下法之部長も循環器内科医として「心不全について」講演。血管の石灰化が招く心不全については、「同じ血管の狭窄でも、血管が石灰化する場合、たとえ同じ症状であっても石灰化する方が重篤である」と説明。
骨粗しょう症などで骨から溶け出したリンが石灰化の原因の一つだと紹介し、「心臓カテーテル治療の際、ロータブレーターというドリルで血管の石灰化を削って治療する方法がある」と話しました。
また、「心不全の症状には動機や息切れがありますが、むくみ(浮腫)は特に重要で心臓からのサインである」とし、「塩分と水分のコントロールが非常に大切」と説明したほか、「何らかの原因となる病気がもとで起こる心臓の病態を心不全という。原因を治療しない限り心不全を繰り返す可能性がある」と原因の追究と治療の大切さを会場に語りかけました。
●血圧管理で心臓病を予防
続いて、康生会武田病院健診センター・桝田出センター所長は、「心臓病を予防するための血圧管理」と題して、高血圧の基準値や目標血圧値、降圧薬などについて解りやすく解説しました。
2019年4月に改定された高血圧治療ガイドラインで、新たに高値血圧が設けられたことを報告「正常内より高めの血圧が高値血圧。より早期から生活習慣改善に取り組むことで、高血圧に移行する危険性が低くなる」と訴えました。
また、血圧は診察室血圧よりも家庭血圧を重視することを指摘し、「実は診察室血圧が家庭血圧よりも低い仮面高血圧の方が怖い。心血管疾患のリスクも高くなる」と述べました。
さらに、サラリーマン川柳などで会場を和ませながら、「収縮期血圧を10、拡張期血圧を5下げると、心臓病は22%、脳卒中は40%減少する」とし、「高血圧のタイプやほかの病気の有無などを考慮した降圧薬などで血圧をコントロールし、食事の改善や運動など生活習慣の修正を行うことで心臓病を予防していきましょう」と呼びかけました。
シンポジウム
●心臓に関する不安に登壇者が回答 ・ 力強い発言に参加者も安心
講演後はハイライトとしてシンポジウム「心臓病予防のために」を開催。4人の講演者に加え、まつばらクリニックの松原欣也院長と康生会武田病院心臓血管外科・朴昌禧副院長がシンポジストとして登壇。会場からの様々な質問に、それぞれ専門家の立場から丁寧に回答しました。
「不整脈は治るのか」との質問に対しては、桝田所長が「治る不整脈かどうか、検査で見極める必要がある」とし、さまざまなケースを説明。
松原院長は、「実は不整脈は突然起こるので診断が難しく、自覚症状がとても重要。狭心症のような深刻なケースもあれば、突然ドキンとなる、少し違和感がある程度の大事に至らないケースもある」と見解を示しました。
また、「収縮性心膜炎の手術をしたが将来が不安」という質問に対して、朴副院長は「収縮性心膜炎の手術後、ジムに通えるということは手術がうまくいっているという証拠。
退院後も心臓リハビリテーションを積極的に続けることで、身体能力や心肺機能の向上と、今の状態を把握するのに非常に大切」とし、それを受け今井健康運動指導士が「適切な運動療法が必要。
終わったあとに苦しいと感じる運動はよくない。無理のない程度に生涯続けられる運動をサポートしている」と、術後の支援体制について説明しました。
また、財木管理栄養士は、「栄養指導は継続で最低3回程度行い、病態に応じた食事相談や食事療法などを提案。一度で理解できなくても次回確認してもらえれば」と力強く呼びかけました。
締め括りにあたっては朴部長が「目に見えない努力を継続することはなかなか難しいことです。ですが、毎日血圧を測る、筋肉量を上げる、減塩を心がけるなど、継続することで心臓病の予防にもつながります」と挨拶。会場からは盛大な拍手が送られました。