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第18回「病診連携消化器クリニカルカンファレンス」を開催しました
◆武田病院グループと下京西部医師会◆
様々な専門領域が連携していくことでより質の高い地域医療へとつなげる
武田病院グループと地域の開業医の先生とで消化器領域を中心とした最新の医療について研修する第18回「病診連携消化器クリニカルカンファレンス」(康生会武田病院、下京西部医師会、アストラゼネカ株式会社、第一三共株式会社共催)が6月30日にTKP京都駅前カンファレンスセンターで開催されました。
当日は京都市内の開業医の先生ら医療関係者72名が出席。登壇者が当院での取り組みや治療成績などを報告すると、会場から次々と鋭い質問が出されるなど、闊達な意見交換が行われました。
開会挨拶に立った康生会武田病院の武田純院長は、「地域医療を行ううえで最も重要なのは医師会との連携です。病院・診療所、それぞれに担うべき分担があり、良質な医療を地域に提供していくためには質の高い連携が求められます。先進医療はどんどん先鋭化し、また領域を超えた連携も求められています。やはり顔の見える連携の場を設け、議論を深めていくことが欠かせません。今日の会が実りあるものとして、そして、地域における連携がさらに強いものとなることを願います」と挨拶しました。
挨拶後は、康生会武田病院消化器センターの平田育大副部長が登壇し、「当院でのピロリ菌診療の現状~抗菌薬感受性検査の原則全例実施と除菌治療成績」と題するTopics講演が行われました。
平田副部長は、感受性検査に基づくテーラーメード処方により、極めて良好な除菌率が達成できることを報告。また、平田副部長はピロリ菌胃炎患児の76%が家族と同じ菌株であることを指摘。次世代・次々世代への家族内伝播を止めるために適正なピロリ菌診療が必要であると強調しました。
続いて一般講演に移り、康生会武田病院消化器センターの碓井文隆医長が「当院における嚥下内視鏡(VE)の現状」と題し講演しました。碓井医長は、胃瘻(いろう)造設後に経口摂取が可能となるケースの分類を紹介したうえで、造設前評価にあたって嚥下内視鏡(VE)による検査が重要であると説明。「お口で安全に、美味しく食べられる喜びを感じて頂くこと」を目標を掲げ、胃瘻造設後も嚥下リハビリ等により経口摂取の可能性を探り、「ハッピーな胃瘻をめざし、アンハッピーな胃瘻を避けたい」と語りました。
一般講演2では、康生会武田病院の古元克好外科副部長が、「胃粘膜下腫瘍に対する当院の取り組み」として、腹腔鏡内視鏡合同手術において、胃壁の全層切開前に胃壁を糸で吊り上げ、腫瘍を内視鏡で切除するCrown法(Inverted LECS with Crown Methods)を紹介しました。古元副部長は、「粘膜下腫瘍に際し、全層切開するものの、吊り上げることで腫瘍が腹腔内にこぼれにくい」と同術式のポイントを解説。実際の手術の様子を動画で紹介しながら、「武田病院で安全に施行しており、適応症例を重ねていきたい」と語りました。
そして一般講演3では、下京西部医師会の大森浩二院長(大森医院)が、地域包括ケアの先進事例として、高齢の大腸末期がんの患者さんを、下京区の地域包括支援センターと一緒に支えたケースを「京都市下京区・南区認知症初期集中支援チームと病院が連携した大腸末期がんの1例」として報告。大森院長は、「地域とのつながりが薄い独居の高齢者が増加しており、認知機能の低下、病(がん)が進行しているケースが増加している点を指摘。早期介入と病診連携の重要性を訴えました。
その後、京都府立医科大学大学院医学研究科の山口寛二消化器内科学講師による特別講演「当院のNASH診断治療の取り組みについて」が行われました。講演で山口講師は、非アルコール性の脂肪性肝疾患には、比較的予後の良好なNAFLと繊維化が進むNASHがあることを説明。さらに、NAFLとNASHは別のものではなくNAFLからNASHに移行しうること、NASHは癌化する危険性が高い点を説明。両者をまとめてNAFLDとし、これを見逃さないためのポイントと治療薬の効果について解説しました。
さらに欧米のガイドラインでは、糖尿病患者では脂肪肝を疑い、脂肪肝の患者は糖尿病を疑うことを紹介。両科による連携で重度化(心不全・認知症・透析など)してしまうメタボリックドミノを防がねばならないことを強調しました。
結びにあたって下京西部医師会の安田雄司会長(やすだ医院院長)は、本日の演題を振り返りながら「高度な医療の症例が数多く紹介され、大変有意義なカンファレンスとなりました。今後とも下京西部医師会、そして武田病院の高度な医療を共有していきたい」とし、病診連携をより深め地域医療に貢献していくことの重要性を述べられました。