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武田病院消化器クリニカルカンファレンスを開催しました
■武田病院消化器クリニカルカンファレンス
症例検討などで地域の病診連携をはかる
地域の開業医の先生方との連携と最新医療情報の共有をはかる第17回「病診連携消化器クリニカルカンファレンス」(共催:康生会武田病院、下京西部医師会、アストラゼネカ、第一三共)が5月27日、京都市下京区のホテルグランヴィア京都で開催され、院外から48名の先生方と当院のスタッフが参加しました。
開催にあたり康生会武田病院の内藤和世院長が、「武田病院グループは心疾患、脳卒中とともに近年、がんなど消化器疾患の治療と予防に全力を注いでいます。そのためにも開業医の先生と連携して力を併せて患者対応に当たることが、なにより大切なことです」と挨拶。
トピックス講演として『H.pylori(ピロリ菌)感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版を紐解く』と題し、武田病院消化器センターの安岡貴之専攻医が、ヘリコバクター・ピロリ感染病態研究の歴史と、ガイドラインについて報告しました。安岡専攻医は、「2016年度のガイドラインでは、ピロリ菌感染と胃がんの関連が明らかとなり除菌が強く勧められています。対象として胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、早期胃がんにおける内視鏡下治療後などが挙げられ、当院でも2016年4月から2017年3月までの1年間に334症例の除菌治療を行い、1次除菌と2次除菌により95%以上の除菌に成功しています」と、ピロリ菌の早期除菌の大切さを強調しました。
続いて、岡嶋亮医長から『NAFLD診療の現状と今後の展望~脂肪肝といかに向き合っていくべきか~』が一般講演Ⅰとして発表。冒頭、岡嶋医長は人類の肥満の歴史について、「サルから人への進化の歴史を1年とすると、肥満の歴史は5分15秒に過ぎない」と分析。NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)について、「日本人の2型糖尿病患者の8人に1人が肝がん、肝硬変などで死亡しています」と述べました。また、岡嶋医長は「非アルコール性脂肪肝(NAFL)と炎症などを併発するNASHを鑑別することが重要です」と訴え、最新の薬剤として糖を排泄する「SGLT2阻害薬」の有効性、他にも「GLP1アゴニスト」なども紹介しました。
一般講演Ⅱでは、『慢性関節リウマチ治療中に発症した消化管穿孔について』について武田病院外科の大江正士郎副部長が、62歳男性の症例として検査の結果によって上部消化管穿孔と診断、緊急手術を画像で分かりやすく分析しました。
特別講演として、京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学の保田宏明講師から、『急性膵炎の病診連携~治療ガイドライン2015を中心に~』と題し、冒頭で「急性膵炎では早く診断のうえ治療を行うことが重要です。急性膵炎で死亡に至るのは超急性期の循環不全と、4~5週以後の感染によるもので、初期の重症度評価と、重症度に応じた対応が重要である」と強調。内視鏡を用いたインターベンション治療の有用性についても報告されました。
「1次除菌とクラリスロマイシン耐性について」「逆流性食道炎が除菌後に悪化したらどうするのか」「重症膵炎における早期経腸栄養の実際は?」「重症膵炎でのタンパク分解阻害剤の局所動注療法の位置付けはどうなるのか」といった質問が会場から寄せられ、保田先生らも丁寧に答えておられました。閉会にあたり下京西部医師会副会長の小泉俊三・七條診療所長が、「開業医にとっても直面することの多い疾患について、詳細に話していただき、今後の診療に役立てたいと思います」と謝辞を述べられました。