よくあるご質問にお答えします
がん免疫治療 Q&A
- Q. 樹状細胞ペプチドワクチン療法とはどのような治療ですか?
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A. 樹状細胞ペプチドワクチンとは、樹状細胞に特定の癌抗原(主にペプチド抗原)を取り込ませて皮内に投与することにより、患者さんのナイーブT細胞を刺激して患者さん自身のキラーT細胞を活性化する治療です。樹状細胞は血液中には非常に少ないので、成分採血で多量の血液を採取して、血液中の単球を集め、これに数種類の薬を作用させて、樹状細胞に育て上げます。この樹状細胞に特定の癌抗原(ぺプチド抗原)を取り込ませます。治療は、こうしてできあがった樹状細胞ペプチドワクチンを患者さんの皮内に投与(1回のワクチンを両腋窩に2か所ずつ皮内注射)いたします。
樹状細胞ペプチドワクチンの作用メカニズムについて説明しますと、腋窩に皮内投与した樹状細胞ペプチドワクチンは、速やかに腋窩のリンパ節に移動します。ここで、樹状細胞がもっている癌抗原の情報(癌ペプチド)を用いて、リンパ節内でがん特異的キラーTリンパ球を増殖させます。これらのキラーTリンパ球が、がん細胞を攻撃するというメカニズムです。
上記の方法以外に、培養して得た樹状細胞を直接腫瘍に注射をすることがあります。こうすることで、樹状細胞は、腫瘍組織の癌抗原を効率よく直接取り込むことができます。ただ、この治療を行うためには、腫瘍が針で穿刺可能な部位にあることが条件となります。 - Q. 自家がんワクチン療法とはどのような治療ですか?
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A. 自家がんワクチン療法とは、手術で取り出した患者さん自身の癌抗原(癌の特徴的タンパク質)を患者さんの皮内に投与することにより、患者さんの免疫機構を刺激して、患者さん自身の免疫細胞を活性化する方法です。主として、術後の再発予防などに用います。この皮内投与した癌抗原は、皮膚内にいる樹状細胞という細胞が、この癌抗原を認識するのですが、リンパ節内でがん特異的キラーTリンパ球を増殖させます。これらのキラーTリンパ球が、がん細胞を攻撃します。このワクチンは、あくまでも患者さん自身の免疫力を活性化することを目的(ワクチンが、直接がんを死滅させる訳ではない)に用いますので、強い抗がん剤で免疫が抑制されているときや、がんそのもので体力が無くなっているときなどは、免疫力を上昇させることは難しいと言われています。
当院では、セルメディシン株式会社と提携して、自家がんワクチン療法を行っております。これは、2種類の使い方があります。まず、手術をされた患者さんの術後1ヶ月後から投与する再発予防目的の治療です。手術で摘出した癌組織は、ホルマリン固定でもパラフィン包理のいずれの組織でもワクチンは作成出来ますので、術後に主治医に自家がんワクチンを希望すると伝えても、十分間に合います。
もうひとつは再発がんに対して用います。この場合は、前述致しましたが、自家がんワクチンの治療のみでは、効果が限定的ですので、ハイパーサーミア等を併用した総合的な免疫療法に、抗がん剤、場合によっては、放射線療法などを用いた集学的治療で対応する必要があります。 - Q. がん免疫療法だけでがんを治療することができますか?
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A. 癌の術後で、しかも比較的進行病期が早期での手術の場合には、術後にがん免疫療法だけを行って、再発を防ぐことは可能と考えますが、進行がんの手術後の場合は、免疫療法だけでなく、術後補助化学療法や必要なら放射線療法、ハイパーサーミアなどで再発を抑える必要があります。
一方、残念ながら手術の適応が無い、切除不能癌や再発癌の場合は、集学的治療といって、抗がん剤や放射線治療、ハイパーサーミア、免疫療法などを、上手に使いこなさなければなりません。最も近年、免疫チェックポイント阻害剤という新しい免疫療法の薬が多数発売されていますので、今後は、免疫療法の重要性が高くなると思います。 - Q. 免疫チェックポイント阻害剤とは?
- A. 免疫チェックポイントとは、すべての人間が持ち合わせている、免疫調節機構のひとつです。この免疫チェックポイントがうまく働くことにより、自己免疫疾患になるのを予防したり、過剰な免疫応答を抑制したりしています。ところが、癌患者さんにとっては、免疫チェックポイントは、癌免疫にブレーキをかけてしまうことになるので、近年免疫チェックポイント阻害剤が開発されました。免疫チェックポイント阻害剤は患者さん自身の免疫によりがん細胞を攻撃する機能を高める作用があり、その一つは2014年7月に承認認可された薬剤です。この免疫チェックポイント阻害剤の中で最も開発が進んでいるのが、抗PD-1抗体という抗体です。がん細胞上のPD-L1,PD-L2 とキラーTリンパ球やナチュラルキラー細胞上のPD-1が結合すると、キラーTリンパ球やナチュラルキラー細胞は、不活性化してしまいます。そこで、免疫チェックポイント阻害剤を用いて、PD-L1、PD-L2とPD-1の結合を阻害すると、キラーTリンパ球やナチュラルキラー細胞は、活性化を維持し、癌細胞を攻撃し続けます。
- Q. ハイパーサーミアとはどのような治療ですか?
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A. ハイパーサーミアとは、腫瘍局所を42-43度に加温する治療法です。抗がん効果の発現メカニズムは、かなり詳しく調べられています。
まず、癌細胞は、正常細胞に比べて熱に弱いことが指摘されています。また、癌組織は、その周りの正常組織より加温し易いこともわかっております。(熱そのものによる癌細胞の死滅)。さらに、加温状態では、抗がん剤の効果が高まる(3〜6倍)こともわかっており、抗がん剤の耐性が出来にくいこともよく知られています。また、ハイパーサーミアと放射線療法の併用は、それぞれの作用機序から考えて、非常に良い組み合わせであり、実際治療効果の相乗効果が数多く報告されています。さらに、最近の知見ですが、免疫療法に関与しているあらゆる免疫細胞は、正常体温より加温された状態の方が活性化されます。また、ハイパーサーミア自体も免疫力を高めます。
ハイパーサーミアは、二つの電極で患部を挟んで治療します。治療時間は40分間です。電極の内部には水が入っており、患者さんの皮膚をやけどから守り、より快適に受けていただくために、温水と冷水が循環できるようになっています。温水・冷水どちらを流しても治療効果は変わりませんので、気持ちよく治療を受けていただけるように調整します。また、この二つの電極はやけどを予防するために、可能な限り皮膚に密着させる必要がありますが、電極部分以外の手足は動かすことができます。時間とともに体全体が温かくなります。部分的な熱さ・痛みやピリピリ感はやけどの前兆です。スタッフがマッサージ等の処置をして、症状の緩和を図りながら治療をしていきます。発汗しやすくなるため、治療前後には十分な水分摂取が必要です。この治療は多少の疲労と体力の消耗を伴いますが、上記の効果以外にも、食欲増進や気分が良くなる等の療養中の生活の質の向上が期待できます。
- Q. 有害事象はありますか?
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A. 樹状細胞ペプチドワクチンでは、ワクチン接種時に針を腋窩に刺しますので、その時は痛いですが、そのほかには特に有害事象はありません。
自家がんワクチン療法では、ワクチン接種部が発赤し、その後しばらくの間、黒色斑として残ります。ワクチン接種部は通常、肩から上腕にかけてです。
ハイパーサーミアでは、加温中に熱さを訴えられる方がおられますので、加温の程度を調節します。また、時折皮下脂肪が結節状に固くなることがありますが、2週間ほど休めば治ります。
- Q. 主治医の了承が得られないと治療できませんか?
- A. 基本的には、主治医の先生からの診療情報提供書が必要です。主治医の先生と当院の医師と患者さんの三者の協力で、癌に対して立ち向かっていくことになります。よって、治療を行うには、主治医の了承は必ず必要となります。また、主治医のもとで行った各種検査結果のご持参をお願いしています。
- Q. 主治医が免疫療法に対し否定的です。主治医と連携してもらえますか?
- A. 当院は全ての患者さんに、主治医と連携のうえ、紹介していただいています。免疫療法は、近い将来、癌治療の主流となる可能性の高い治療です。しかし、現在どの癌に対するガイドラインでも、当院で行う免疫療法が推奨されているわけではない(自由診療の為)ので、当院より積極的に免疫療法を行うよう主治医に働きかけることはありません。患者さんさえ差し支えなければ、現在通院中の病院の地域連携室を介して、免疫療法の併用を容認していただける適切な病院を決めて頂き、治療を進めてまいります。
- Q. 主治医の先生に、「免疫療法はあまり効果が無く、インチキが多い。」といわれましたが?
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A. 一部の免疫療法を行っている施設では、効果について十分な説明がなされない、ケースがあったことは否定出来ません。
ただ、現在は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」という法律が平成25年11月に施行されており、厚生労働省、近畿厚生局の管轄下におかれています。当診療所でも、法に遵守すべく「再生医療等提供計画書」を提出し受理されています。こういったことから厳しい規則のもとで「がん免疫療法」を行っています。
効果については、患者さんの状態によって変わりますので、担当医が状態に合わせて詳しく説明を行い、患者さんに安全な安心した治療提供を行っています。
- Q. そもそも「免疫」とは何ですか?
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A. 免疫とは「疫(えき)から免れる(まぬがれる)」、すなわち「伝染病」などからのがれるということを意味する言葉です。たとえば、一度「はしか」などの伝染病にかかったほとんどの人はその伝染病にかからなくなります。これを「免疫ができた」と言います。この免疫システムは、体内に侵入した細菌やウイルスなどを異物(自分以外のもの)として攻撃することで、自分の身体を正常に保つという大切な働きをします。
次に外来から侵襲してきた異物(細菌やウイルス)から、私たちの体内で発生した異物(がん)について考えてみましょう。
私達の体内では、がん細胞が毎日発生しており、「免疫監視機構」が、見つけ次第にがん細胞を殺すことで、がんの増殖を抑えている、と考えられています。バーネット卿仮説と呼ばれます。免疫監視機構は、がん細胞を攻撃しますが、がん細胞もまた、目の上の瘤である免疫監視機構を眠らせようとします。そのため、免疫の勢いが強いと、がんは増殖することなく抑え込まれたままで、大きな腫瘍になることはありません。ところが、一旦、がんの勢いが免疫の抑止力を上回ってしまうと、がんは、強力に、免疫を眠らせ、更に勢いを得てしまいます。免疫力と、がんの勢い、どちらにバランスが傾くかによって、明暗が分かれてしまいます。がん患者さんの体内は、強い免疫抑制状態にあり、免疫力ががんの勢いに押された状態になっています。がんをいくら叩いたつもりでも、免疫力が低下した状態で治療を終えると、がんは猛烈に増殖します。がん治療は、免疫監視機構を再建させた状態で終わる必要があります。
また、がんにならないためには、日頃から、免疫力を高めておく必要があります。免疫力が強いと、風邪やインフルエンザ、生活習慣病、がんなどを予防することにつながります。この免疫力を高めるには、運動、睡眠、ストレスをためないなど生活のしかたが重要で、とりわけ食生活の改善とストレスをためないことが鍵を握ります。そのためには、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか? よく言われていることですが、以下に述べておきます。
1、 喫煙をひかえる。
2、 飲酒は適度の量を心がける。
3、 質の良い睡眠をとる。
4、 ムリのない適度な運動をする。
5、 笑う。
6、 充分な休養などでストレスをためない。
7、 体温を下げない。
8、 薬・抗生物質を乱用しない。
9、 バランスの良い食事を心がける。
- Q. 再発予防にも効きますか?
- A. 再発のリスクの大きさにもよりますが、免疫療法が最も得意とするところは、再発予防です。ただ、手術前の検査や手術時の病理検査で再発のリスクの大きさがある程度わかりますので、再発のリスクが高い場合は、術後補助化学療法を受けることをお勧めします。この化学療法に免疫療法は併用できます。また、ハイパーサーミアを併用することも有効です。
- Q. がん治療を受けるための準備(必要書類)について教えてください。
- A. 私たちの免疫療法についての説明をよく御理解していただき、医療費(自由診療)についても御理解していただいた上で、治療同意書に署名していただく必要があります。
- Q. 紹介状は必要ですか?
- A. 患者さんの癌そのものの情報や、これまでの治療内容などの情報提供(診療情報提供書)が必ず必要です。これは患者さんの癌および癌治療の歴史を知る必要があるからです。情報量は少しでも多い方が、治療がうまく行きます。
- Q. 免疫細胞療法を受けるにはどうしたらよいのですか?
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A. 当院での面談受診を電話予約していただき、予約時間に御来院ください(完全予約制です)。
- Q. どのような種類のがん患者でも、免疫治療を受けることができますか?
- A. がんの種類にはこだわりません。
- Q. 温熱療法ができない人は?
- A. ペースメーカーの埋め込み術をされている方、食道ステントを入れておられる方、高齢者(人に寄りますが、85歳くらいまで)消化管ステントを入れておられる方、(胆道ステントは問題ありません)、多量の腹水のある方、脳梗塞の既往のある方など。
- Q. 末期がんですが、治療を受けることは可能でしょうか?
- A. 徒歩で当院に来られる状態の方は、治療を受けることが可能です。またお受けいただいたなりの効果があると考えます。しかし、徒歩で来院できないような全身状態の悪い方は、あまり治療効果が期待できません。
- Q. 家族が癌で手術を受けましたが、本人には癌だと知らせていません。
「免疫療法」を受けることは可能でしょうか? - A. 可能ですが、おそらく通院途中に御本人は「自分が癌である」と気がつかれると思います。それはそれで良いのではないでしょうか?(私見)
- Q. 癌が進行しすぎていて手術できないといわれました。どうしたらよいでしょう?
- A. まず、主治医とよく相談し、化学治療や放射線治療など標準的な治療をうけることをおすすめします。そのうえで、免疫治療やハイパーサーミアを併用される場合、主治医了承のもとで当院での治療については、ご相談させていただきます。
- Q. がんと診断され治療方針について意見を伺いたいのですが?
- A. 様々な治療法がありますが、その中の一つとして、免疫療法をお考えの方に関しては、適切な治療方針をお示しすることが可能です。私たちは、それだけ、癌治療には経験豊富です。
- Q. 主治医には、抗がん剤での治療を勧められましたが、副作用が心配で、抗がん剤は使いたくありません。免疫療法だけで治療することは可能でしょうか?
- A. 免疫療法のみを行うことは可能です。癌に対する治療を何にするかは、患者さんが最終的に選択できます。ただし、免疫治療だけで万人に一定以上の抗腫瘍効果を期待するのは難しいところです。癌そのものの勢いを抑えることは簡単にはできません。抗癌剤は、副作用を上回る抗腫瘍効果が期待できる可能性があるので推奨されています。まずは、主治医とよく相談して、抗癌剤の効果、副作用について十分に理解してください。
- Q. がんと言われて以来、いくつかの病院でセカンドオピニオンを受けました。先生によって違うことを言われました。また知人からもいろいろと言われ、どうしたらよいかわからなくなっています。
- A. 免疫療法を考えられておられる方は、当院に御来院ください。的確なアドバイスをさせていただきます。
- Q. 医療相談にかかる費用を教えてください
- A. 初診料、面談料など金額が異なります。免疫細胞療法・免疫療法の費用 をご参照のうえご不明なことがございましたらお気軽にお問い合わせください。
- Q. 免疫療法の費用はいくらぐらいですか?
- A. 免疫療法の種別により金額が異なります。免疫細胞療法・免疫療法の費用 をご参照ください。標準的な料金を記載しております。
- Q. 保険外診療は健康保険制度が使えないのですか?
- A. 免疫療法など保険外診療については健康保険は使用できません。ただし、ハイパーサーミアについては保険診療が認められており健康保険が使用できます。詳しくは受付窓口までお問い合わせください。
- Q. 支払いにクレジットカードは使えますか?
- A. 使用できます。
- Q. 医療費控除は受けられますか?
- A. 確定申告をすることにより医療費控除の適用を受けることができます。最寄りの税務署等にご確認ください。
- Q. 現在行っている治療との併用は可能ですか?
- A. 基本的には、免疫療法もハイパーサーミアも可能です。現在おこなっている治療に準じて治療スケジュールをたてていきます。
- Q. 放射線治療と併用しても大丈夫ですか?
- A. 放射線治療と免疫療法、およびハイパーサーミアは、よい併用療法です。
- Q. 温熱療法と併用しても大丈夫ですか?
- A. 可能です。ハイパーサーミア(温熱療法)は、免疫療法の効果を増強すること、抗がん剤の抗がん作用を増強すること、放射線の治療効果を増強させることは、よく知られています。
- Q. 現在他の病院で行っているがん治療を中止する必要がありますか?
- A. 必要ありません。今受けられている治療を続行しながら、併用効果のある免疫療法を提示させていただきます。
- Q. 入院治療は受けられますか?
- A. 治療はすべて外来通院です。入院対応はできません。
- Q. 入院施設はありますか?
- A. 当診療所には入院施設はありません。他院に入院されている場合は、必ずその入院されている病院の許可を得て、当院へ通院してください。
- Q. セカンドオピニオンを行っていますか?
- A. 行っていません。基本的には、免疫療法やハイパーサーミアの治療を考えておられる方に御来院していただいております。
- Q. そちらの治療を受ければ、抗がん剤の副作用が軽減されますか?
- A. 必ずしもそうではありません。免疫療法は、あくまでもがん治療のひとつです。
- Q. がんの免疫療法の評価について
- A. 当院では治療前後に腫瘍マーカー等の採血を行います。また、主治医の元で撮影された画像検査(CTやMRI等)を含めて、総合的に免疫療法の効果について判断していきます。