膠原病・リウマチQ&A
- 膠原病とはどういう病気ですか?
膠原病は一つの病気を指す言葉ではなく、原因不明の全身に炎症を起こす病気の総称です。外からの異物を排除する免疫の力が自分自身に向いてしまうために起きる病気(自己免疫疾患)と考えられています。また、関節の痛みをきたす病気を広くリウマチ性疾患と呼びますが、膠原病とリウマチ性疾患は密接な関係にあります。関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、多発性筋炎・皮膚筋炎、結節性多発動脈炎は代表的な膠原病で、他にもシェーグレン症候群、混合性結合組織病、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎、ANCA 関連血管炎、リウマチ性多発筋痛症、成人スティル病、ベーチェット病など、様々な病気が膠原病の仲間と考えられています。
- 膠原病の原因はなんですか?
真の原因は不明ですが、病気の発症メカニズムが次第に分かってきています。遺伝する病気ではありませんが、病気に関連する多くの遺伝子が見つかっています。また、感染や紫外線、性ホルモン、喫煙などの環境因子が発症に関与すると考えられ、最近では腸内細菌や歯周囲病との関連も指摘されています。これらの様々な要因により、免疫細胞が異常をきたして自分自身を攻撃する自己免疫が生じ、炎症に関わるサイトカインと呼ばれる分子の活性化により、全身の炎症が引き起こされると考えられています。
- 膠原病はどうやって治療するのですか?
多くの膠原病の治療には炎症と免疫を強力に抑えるステロイド(グルココルチコイド)を用います。ステロイドの効果が十分でない時や、副作用などでステロイドを減らしたい時には免疫抑制薬を併用します。免疫抑制薬には多くの種類があり、病気・病態によって使い分けられます。最近は病気のメカニズムに基づく新しい治療が開発されています。特に関節リウマチでは炎症を引き起こす炎症性サイトカインをピンポイントで制御する生物学的製剤やJAK 阻害薬と呼ばれる分子標的薬が開発され、非常に大きな成果を上げています。これらの分子標的療法はリウマチ以外にも適用が広がり、膠原病の治療は近年大きく進歩しています。
- リウマチとはどんな病気ですか?
関節の痛みをきたす病気を広くリウマチ性疾患と呼び、100 種類以上の病気が知られていますが、我国では単にリウマチといえば、代表的疾患で患者数も多い関節リウマチのことをさします。関節リウマチは膠原病の一つでもあり、全身の関節が腫れて痛む病気です。30~50 歳代の女性に多く見られますが、近年は高齢化しており60~80歳代で発症することも少なくありません。関節の内側を覆う滑膜と呼ばれる組織が炎症を起こして増殖し、関節の痛みと腫れが生じます。全身のどの関節にも炎症が起こりますが、中でも手首、指の付け根と第2関節によく発症し、90%以上が手や指に痛みを訴えます。滑膜の炎症はやがて関節の軟骨や骨を破壊しながら広がっていき、関節が変形して日常生活に大きな支障をきたすようになります。このようなリウマチの関節炎には、免疫を司る免疫細胞から分泌され炎症を活性化させるサイトカインとよばれる分子(TNFαやIL-6など)が大きな役割を果たしており、治療の主要なターゲットとなっています。
- リウマチはどんな症状がでますか?
病気の初期には、朝の起床時に手がこわばって動かしにくい、力を入れにくいという「朝のこわばり」を訴えることがよくあります。関節の腫れと痛みは多発性で、左右対称性に起こることも多く、数週間以上にわたって続きます。進行すると徐々に関節組織が壊れて、患部が変形していきます。関節破壊は特に発症から2年くらいで早く進むと考えられているので、早期発見と早期治療が大切です。また、関節だけでなく、眼病変(強膜炎、乾燥性角結膜炎)、肺病変(間質性肺炎、胸膜炎)、皮下結節(肘などの瘤)、血管炎、貧血などの症状を合併することがありますので、全身を精査することが大切です。
- リウマチはどうやって治療するのですか?
リウマチの治療は近年大きく進歩しています。まず、リウマチの原因となる免疫異常を抑える抗リウマチ薬を投与します。様々な薬がありますが、現在ではメトトレキサートと呼ばれる薬が治療の中心です。他の膠原病でよく使用するステロイドはリウマチではあまり使わなくなっています。その効果が十分でなければ、炎症の元になる炎症性サイトカインをピンポイントで阻害するバイオ製剤(注射)や、サイトカインの刺激を遮断して炎症を抑えるJAK阻害薬(経口薬)を用い、大きな効果が期待できます。症状が消えて健康な時と変わらない生活を送れるようになる「寛解」を目指すことが治療の目標です。寛解が達成されるまで定期的に病勢を評価してより強力な治療を導入していきます。ただし、寛解が達成されても完治するわけではないので再発を防ぐため痛みがなくなっても治療をやめないことが重要です。
- 日常生活で気を付けることは?
膠原病やリウマチの治療は免疫を抑えるので細菌やウイルスなどの感染への抵抗力が下がる可能性があります。外出時のマスク着用、うがいや手洗い励行など感染対策には特に気を付けてください。種々のワクチン接種(特にインフルエンザ、肺炎球菌、帯状疱疹、新型コロナワクチン)は強く推奨されます。ただし生ワクチンは注意が必要です。また、服用している薬の効能と副作用を理解することが大切です。注意していれば過度に恐れることはありませんが、具合が悪いと思ったら、できるだけ早くクリニックを受診してください。