第52回医仁会武田総合病院「特別講演会」~開業医の先生らと最新の医療研修~~
2016/09/21 インフォメーション 医仁会武田総合病院
京都東南部の開業医などと最新の医療についての情報を共有する第52回医仁会武田総合病院「特別講演会」(共催:医仁会武田総合病院、伏見医師会、第一三共株式会社)が9月15日、京都市下京区のホテルグランヴィア京都で開かれ、100人の医療従事者が熱心な討議を重ねました。
討議に先立って森田陸司院長から、「この特別講演会も25年目を迎えられたのも、地域の医師会の先生の熱いご支援をいただいた結果です。今、国の方針で機能分化が求められていますが、当院では従来通り7対1の看護体制を守り、急性期医療を主として進めて参ります。また、新たに包括病床も70床増設するなど充実を図れるのも開業医の皆さまのご支援があるからです」と挨拶、研修発表に移りました。
座長として宇治久世医師会じんのクリニックの神野君夫院長に努めていただき、武田総合病院救急医療センターの杉江亮神経救急部長から『院外心肺停止を来したくも膜下出血のCT所見と破裂動脈瘤の推定』と題して発表。杉江部長は、自身が関わった過去10年間の治療に至った75症例から、心肺停止(CPA)の状態から回復に至った経過などについて分かりやすく分析しました。
杉江部長は、「10年間に総計で2535人の患者さんが搬送されてきましたが、CTでくも膜下出血と診断されたのは2.9%でした。ただ救急搬送での蘇生率は高く、3分の2に上ります。特に脳のCPA患者は蘇生率が高いというのが私の所見だし、窒息CPA患者についても呼吸をスムーズに改善することで蘇生することも明らかですが、予後が悪いのは不整脈を伴うケースが多いと考えます」と強調しました。
第2講座では伏見医師会松本クリニックの松本恒司院長を座長に、『当院における直接経口胆道鏡(DPOCS)の経験と成績』と題して、武田総合病院消化器内科の玉置大医長が講演。松本医長は背景として、「経口胆道鏡が一般的に知られている手技として、親スコープのチャンネル内に細くて長い胆管用の子スコープを挿入する(デュアルオペレータータイプ)が用いられていますが、2人の術者や2台の光源が必要な点などから実施施設は限られています」と述べ、松本医長が担当した術者が1人で済み、治療費も低い直接経口胆道鏡(DPOCS)の2013年4月以降の20症例について、動画を示しながら分析しました。
特別講演は武田総合病院小児科の岸田憲二部長が座長を務め、京都大学大学院医学研究科発達小児科学の平家俊男教授が、『不明熱の鑑別診断としての自己炎症疾患について』を発表。平家教授は自己炎症性疾患の概念としては1999年に初めて提唱された新しい病態で、周期性発熱を主症状とする遺伝性で、主として自己免疫系の疾患であることを冒頭に述べました。また、平家教授は、「臨床的な症状としては発熱、皮膚症状の発疹、関節障害の他、腹痛、眼の症状、場合によってはQOL(生活の質)の悪い髄膜炎などで、多くは遺伝性の疾患が見られるのが特徴です」と分析しました。
日本では100万人に1人が発症し、認知の低い疾患だが、平家教授の研究グループでは各疾患に対して欧米の医薬品を使用して劇的な効果を示しているほか、日本では未発売の「アナキンラ(IL‐1阻害薬)」の臨床実験を実施、効果が高いことを証明するとともに使用を国に働きかけており、「この薬の使用が遅れれば遅れるほど患者救済もままならないのが現状です」と訴えました。また、平家教授は包括的な取り組みも始め、次世代シークエンサーを用いた検査の簡素化などともに、iPS細胞作製による患者検体のバンク化を行っていることも報告しました。
「くも膜下出血患者の社会復帰について」「一般外来でのCTの利用度は低く、工夫が必要では」「胆石が見つかった直後の手技について」「小児だけの発症なのか」「遺伝異常があるのに発症しないのはなぜか」といった質問が会場から寄せられ、平家教授らから詳しい回答がありました。