2月25日「第51回医仁会武田総合病院特別講演会」が開催されました
2016/03/04 インフォメーション 医仁会武田総合病院
■第51回医仁会武田総合病院特別講演会
糖尿病、肥満症や皮膚の再生など最新先端治療を研修
京都市内の山科、伏見全域の開業医の先生方とともに最新医療情報の共有と連携を密にする第51回「医仁会武田総合病院特別講演会」(共催:伏見医師会、第一三共株式会社)が2月25日、京都市中京区の京都ホテルオークラで開かれ、開業医など医療従事者100人が糖尿病など生活習慣病や、肥満症と全身の形成外科についての最新医療技術について研修を深めました。
冒頭、森田陸司・武田総合病院院長が、「51回という長期にわたって、地域の開業医の先生方と最先端医療情報を共有する症例検討や特別講演を開催してきました。国の方針で病院の機能分化が進められております。当院は、今後も急性期病院の医療を充実するためにも、開業医の先生方やスタッフなど皆さんとさらに連携を強め、地域医療に貢献していけるよう研修会を継続してまいります」と挨拶しました。
1部では、伏見医師会渡辺内科クリニックの渡邊亨院長が座長を務められ、『2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の治療効果について』と題して、武田総合病院糖尿病センターの東信之部長が発表。東部長は、国民病と言われる糖尿病の中でも、生活習慣の欧米化が大きな原因であるBMI(Body mass index)25以上の肥満による2型糖尿病が増えている現状と、医薬品など治療技術が進んでいる点を最初に報告しました。
特に近年、新たな経口薬としてSGLT2阻害薬が日本でも臨床で使えるようになったことで、東部長は「血液中の過剰な糖を尿中に積極的に排出させることで血糖値を下げるという画期的なものです。さらに、単剤使用による低血糖リスクの低減、体重減少効果などが期待され、インスリンに依存しなくても糖毒性が改善されるという、従来の糖尿病治療薬とは異なる作用が望めるようになりました」と強調しました。
一方で、尿の糖排泄について肥満者には有益ではあるが、やせている患者さんでは問題になることも指摘。「尿糖が増えることで、尿路感染など感染症にかかりやすくなるため、排尿や泌尿器を清潔に保つこと。薬の服用による体重の減少によって、食事や運動療法がおろそかになっては治療の意味が半減するので注意が必要です」と訴えました。
2部に移り、伏見医師会黒田医院の黒田紀院長に座長を務めていただき、武田総合病院の岩田辰吾外科部長代理が『肥満症・2型糖尿病~外科治療の実際~』と題して、武田総合病院が近畿では先駆けて導入した最新の肥満症外科治療法「スリーブ手術」について、近隣開業医からの紹介症例(2型糖尿病、肥満症、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群など併発)を示しながら説明しました。
手術は腹腔鏡下で行われ、胃の一部のみを切除し胃を袖状にする方法で、脂肪などの切除もせずに、小腸にも影響を与えない低侵襲な手術操作であることを強調。症例の女性の場合、術前にはBMIが40だったのが27に、体重も30㎏以上減ったことを示しました。岩田先生は肥満症が招く疾患として、「糖尿病など生活習慣病のみならず、大腸がんや肝臓がんといった悪性腫瘍の合併が問題視され、肥満手術によってこれら疾患が80%改善すると言われています」とスリーブ手術の優位性を述べました。
特別講演は、形成外科の山脇聖子部長が座長を務め、京都大学大学院医学研究科形成外科学の鈴木茂彦教授が『キズのプライマリケアから皮膚の再生医療まで~形成外科の最近の進歩~』と題して、武田総合病院での診療時代のエピソードを交えながら講演。鈴木教授は、「特に近年の形成外科分野では体表面の外傷だけを扱うのではなく、体の深部の障害の再建治療に当たっています。外科の依頼で、腹壁ヘルニアや食道や直腸、膀胱の再建など、全ての領域の機能的、外科的回復を目指すようになっています」と強調。縫合方法でも、皮膚の表面を縫い合わせるのに体表を柔らかく包み込むように縫い合わせ、傷跡がほとんど残らない手技も披露、乳房再建、人工皮膚の開発を始めとする皮膚の再生医療などについても分かりやすく分析しました。