第48回 医仁会武田総合病院特別講演会を開催しました
2014/09/29 レポート 医仁会武田総合病院
~婦人科がんなど重症性疾患の治療と予防~
開業医の先生とグループ病院医師が最新医療研修
京都市東南部地域の開業医の先生方と、武田病院グループの専門医ががんなど重症疾患の最新治療について情報共有に努める、第48回「医仁会武田総合病院特別講演会」(医仁会武田総合病院、伏見医師会、第一三共株式会社共催)が9月25日、京都市下京区のホテルグランヴィア京都で開かれ、地域の医院など36人を含めて90人が熱心に質疑を交わしました。
会に先立って武田総合病院の森田陸司院長が、従来の「症例検討会」から、医療界トップの研究者や医師の研究発表に重点を置き、「特別講演会」と改めたことを報告、「この会の目的は、武田総合病院の医師が開業医の先生と直接、面談して医療連携を深めることです。常々、病院の業務は開業医の先生を中心に、地域の支えがあって初めて存在の意義があるものと考えています。そのために、地域医療連携のあり方を根本的に見直すため『タスクホース』を構築しました。当院やグループの医療とは、連携の問題についてご意見を寄せていただければ幸いです」と挨拶しました。
最初の症例発表として伏見医師会の山内宏哲先生(やまうちクリニック院長)が座長を務められ、『耐寒能の低下を主訴としたACTH分泌不全症の一例』のテーマで、武田総合病院総合診療科の三浦賢仁研修医が発表。三浦研修医は、症例1「44歳女性。寒気などの主訴によって近医で受診、ACTH及びコルチゾールの低下、MRIの所見によって武田病院へ紹介された」ケースについて、再度にわたるコルチゾール250μグラム点滴負荷試験などの検査の結果、ACTH分泌不全症でリンパ球性下垂体炎の疑い、続発性副腎機能低下症と診断に至った点を述べました。
三浦研修医は治療に際し、「特別な理由がない場合はヒドロコルチゾンを経口投与する。投与回数は1日1〜2回を投与することで、主訴の寒気などがなくなり半袖で日常を過ごされるまでになりました」と、治癒したことを強調しました。
2例目は宇治久世医師会の神野君夫先生(神野医院院長)に座長をしていただき、泌尿器科の久保田聖史専攻医が、『死に至った腎盂腎炎の2例~当科の現在の救命治療法と難治症例』について発表しました。久保田専攻医は最初に、近医から紹介の患者さんはいずれも急性複雑性腎盂腎炎で、できるだけ迅速にドレナージを行い、救命治療を行う方針である点を強調。久保田専攻医は腎盂腎炎の感染ルートとして、「肺炎(約50%)、腹部感染症(約24%)で尿路感染が3番目だが、敗血症、重症敗血症から循環不全になって死亡に至るケースが20%から42%と高いので注意が必要です」と訴えました。
久保田専攻医は、治療成功例との比較を交えながら、死亡に至った症例「72歳男性、冠動脈バイパス手術後、慢性腎不全、透析中で、ドパミン投与後も急激な血圧低下によって近医から紹介」について、閉塞性腎盂腎炎の診断から治療経過を述べ、「敗血症の病態は、時間が経つにつれて臓器不全と循環不全が進行してしまうため、全ての治療法を導入しても救命は難しく、できる限り早い段階での適切な治療が求められます」と強調しました。
特別講演は、京都大学大学院医学研究科婦人科学産科学講師の馬場長先生が、『妊孕能(にんようのう)温存の婦人科がん治療について』のテーマで、晩婚化が進むなかで、子宮筋腫や子宮頚がんの発病・治療後の妊娠への希望者が多い点などについて、近年の火急の問題とし、京都大学での最新治療法について発表しました。馬場先生は、子宮頚がんの発症年齢として、中高齢は減少し、若年者に急増しているデータを示しながら、「女性のがん患者は様々な喪失感と向き合っておられます。しかも治療によって子宮が失われることや、家族との生活への思いも強い。しかし、手術の基本は子宮やリンパ節も全て取り除くことにあり、それらへの配慮と治療選択が大切になるのです」と強調。1期、2期の子宮頚がんでの妊孕能温存手術に際して、転移のリスクをどう防いでいくかなどについて、手技の画像を示しながら分析、最新のロボット(ダビンチシステム)による治療法の優位性と欠点についても言及しました。質疑応答では▽妊娠中の抗がん剤の使用の胎児への影響▽難治性の子宮体がんへの薬剤▽出血への対応とバルーンの使用について-といった専門的な質問が寄せられ、馬場先生は自身の研究を踏まえて応えていました。