第47回「医仁会武田総合病院症例検討会」を開催しました
2014/03/05 レポート 医仁会武田総合病院
■第47回医仁会武田総合病院症例検討会
地域の開業医の先生と最新医療情報共有
医療連携で地域住民の健康と予防貢献
開業医の先生との医療連携により、地域住民の皆さんの健康増進と予防に尽くすための第47回「症例検討会」(医仁会武田総合病院、社団法人伏見医師会、第一三共株式会社共催)が2月20日、京都市下京区のホテルグランヴィア京都で開かれました。
伏見区など南部地域の開業医の先生や、武田病院グループなどの医療関係者ら100人が出席、開会に当たって武田総合病院の森田陸司院長から、「最近の厚労省や中医協の動向をみてみると、当院のような急性期病院と医師会の先生方との連携については、これまで以上に緊密な医療連携を求めているように思われます。当院としては、そういった動きとは関係なく、47回つづく症例検討会が示すように絶え間ない地域医療連携を実践してきたつもりです。これからも一層の連携強化を図ってまいります」と挨拶があり、症例検討に移りました。
第1症例では、伏見医師会・西村耳鼻咽喉科医院の西村秀夫院長が座長を務められ、『副鼻腔術後に生じた三叉神経痛の1症例』とのタイトルで、武田総合病院耳鼻咽喉科の泉川雅彦部長が発表。症例は、「40歳女性、数年前から左鼻閉(鼻づまり)と後鼻漏で近医に受診。保存的治療後に当院紹介」で、所見として▽鼻中隔左側が棘状に飛び出し、下鼻甲介に突き刺さるような形になっていた▽左鼻腔がほとんど交通していない▽内視鏡によりポリープ病変があった点-などを示し、一側性副鼻腔炎と診断したことを分析しました。
左 武田総合病院 森田 陸司 院長
中 西村耳鼻咽喉科医院 西村 秀夫 先生
右 耳鼻咽喉科 泉川 雅彦 部長
泉川部長は、内視鏡下手術による治療を選択し、主病巣の左上顎洞、篩骨洞などの膿や強度の粘膜肥厚などをきれいに除去、手術を終えました。しかし、術後の外来7日目で「左鼻周辺での痛み」を訴えられ、左中鼻道に瘡蓋、膿を確認。そのため、中枢性の三叉神経病変を疑い、神経内科にも紹介、協議した結果、リボトリール(一般名クロナゼパム)を投与服用後、1週間で完快したことを報告。「内視鏡治療では初めての経験で、術中、術後のウイルス感染や、患者さんのストレス対策など、きめ細かい観察が必要と痛感しました」と強調しました。
第2症例は、宇治久世医師会・中田医院の中田哲雄院長が座長を担当され、武田総合病院神経内科の小野通夫専攻医が、『頭痛・頚部痛の鑑別~Crowned dens syndromeの4例』と題して報告。小野医師は、最初に戴冠状の軸椎歯突起症候群(CDS)は高齢者、特に女性に認められ、このうち誘因なく急性の頚部痛や頭痛が出現し、発熱や炎症を示すことで知られていることを解説。症例として、「90歳男性、12年夏に頚部痛頭痛自覚。痛みの増悪、首が回らなくなったことで当院受診」など2症例について、検査や治療の画像を提示しながら詳しく分析しました。
最後の特別講演は、『最近の脊椎脊髄外科~インストゥルメンテーション手術を中心に~』のタイトルで、大阪医科大学生体管理再建医学講座・整形外科学教室教授の根尾昌志先生が講演しました。冒頭、根尾先生は、インストゥルメンテーション手術について、「脊椎、脊髄骨折などの手術後の早期離床や社会復帰を目的として、ネジやプレート等の金属を使用して固定の補強を行う手技をいいます」と、1990年代以降の脊椎、頚部治療に際しての固定技術や手技の急速な進歩を交えてわかりやすく説明しました。
中でも、根尾先生は1999年に自身が手掛けた最初の手技、症例「29歳女性、出産直後の強い背部痛」の所見を発表。若年時代に発症したガングリオン(腫瘍類似疾患)が脊椎に転移、第4胸椎から骨盤まで固定することによって、子供の成長と共の生活を取り戻すことができた経過を述べ、会場から感動の声が聞かれました。
左 中田医院 中田 哲雄 先生
中左 神経内科 小野 通夫 専攻医
中右 整形外科 永山 宗一郎 副部長
右 大阪医科大学教授 根尾 昌志 先生
その他、肺がんから肋骨への浸潤症例での背骨の再建、強直性脊椎炎(AS)に対する人工股関節手術からの、極めて困難な背骨の再建術など、患者・家族への大きな福音になっていることも伝えました。また、極めて細い骨で構成されている頚部や、脳へのCDSについても、ナビゲーションシステム、3次元実態モデル等のコンピューター機器の開発や、手技の発達により、「大阪医大への赴任後、一般病院では困難な、より難しい病態について治療に当たっていきたいと思っています」と結びました。