京都新聞朝刊 医療のページ 武田病院 脳卒中センター部長 定政 信猛「くも膜下出血」
2025/02/27 メディア 武田病院グループ
※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点でのものであり、現在は変わっている可能性があります。
「くも膜下出血」 未破裂の瘤、事前治療可能
武田病院 脳卒中センター部長 定政 信猛
くも膜下出血とは。
脳卒中の一つで、脳の血管が裂けて脳の表面にあるくも膜下腔(くう)に出血する疾患です。今までにない激しい頭痛、嘔吐(おうと)や意識障害の症状が突然起き、3分の1が亡くなり、救命できても3分の1はまひなどの後遺症が残る怖い病気です。頭を強くぶつけるといった外傷性もありますが、原因の多くは脳動脈瘤(りゅう)(血管にできるふくらみ)の破裂です。生まれつきの脳動静脈奇形や、難病のもやもや病なども原因になります。
以前は中年女性に多いと言われていましたが、最近は高齢化に伴い60代、70代での発症が増えています。比較的若い方の発症も珍しくなく、働き盛り世代の急死の一因になっています。
治療法は。
すぐに病院へ搬送して緊急に治療しないと、非常に危険です。一時的に出血が止まっても再破裂すると死亡率が急激に高まり、早期手術が治療の成否を左右します。
CT(コンピューター断層撮影)などで診断して出血源を確定し、最近は主に動脈からカテーテルを入れて破裂した瘤の中に細く柔らかい針金を詰める血管内手術(コイル塞栓(そくせん)術)で止血します。出血部位によっては開頭して瘤を金属で挟み込むクリッピング術で対応します。
予防法は。
脳動脈瘤ができる原因は詳しく解明されておらず、瘤があってもほとんど自覚症状はありません。日頃から血圧のコントロールや危険因子である禁煙、過度の飲酒を控えることが重要です。ただ未破裂の瘤を見つけて事前に治療することは可能であり、脳ドックは有効です。特に高血圧や頭痛のある方は受診をお勧めします。家族・親族にくも膜下出血や脳動脈瘤の既往歴がある場合も発症率が高いと言われ、無症状でも要注意です。