令和6年11月23日「糖尿病市民公開講座」を開催いたしました。
2024/12/15 イベント 武田病院
「牛丼と牛皿定食の違いは?」など
急激な血糖値変化を避ける食習慣を学ぶ
世界糖尿病デーを記念する「糖尿病市民公開講座」が11月23日、京都市左京区の『みやこめっせ』で開催されました(主催:武田病院グループ、京都ライオンズクラブ/共済:アークレイマーケティング)。
当日は、武田純院長(康生会武田病院/京都ライオンズクラブ会長)が座長となり、糖尿病を専門とする京都府立医科大学・京都大学の教授が登壇。市民向けの分かりやすい講演を行いました。
オープニングにあたり武田院長は、NHK大河ドラマ「光る君へ」で登場する藤原道長を取り上げ、栄花物語などの記載から作成した"藤原道長のカルテ"を披露。どよめく参加者に、主訴や家族歴、病歴を説明しながら、糖尿病の特徴を分かりやすく紹介しました。
そして武田院長は高血糖によって生じる合併症について触れながら、「我々糖尿病内科の一番の目的は、糖尿病の重篤な合併症の発症を防ぐこと、そして病気が進行しないよう生活習慣の改善や治療を行うことです」と語り、そのエキスパートとして、登壇する2人の講師を紹介しました。
第1部では、京都府立医科大学の福井道明教授(大学院内分泌・代謝内科学)が、「糖尿病はなぜ怖い? 様々な合併症について、早期の発見と治療の大切さ」と題し、講演しました。
福井教授は、「血液検査でのeGFR(推算糸球濾過量)と尿中のアルブミン(尿たんぱく)はとても重要です。これが異常値だったら主治医に食らいつき、しっかりと指導を受けてください」とし、腎機能について解説しました。
さらに福井教授はHbA1cについて、「採血時から1~2ヵ月間の平均血糖コントロールを反映するのがHbA1cです。これは平均値であり、変動が大きいものはよくありません。実は、血糖がずっと高い状態より、上がったり下がったりする方が血管の内皮細胞が障害されやすい。脳梗塞のリスクが高まります。HbA1cだけを見ていてはダメで、食後に250とか350に上がっていないか、空腹時に50とか60になっていないか、これが大事なのです」と血糖値の大きな変動に注意するよう語りました。
講演のインターバルは医仁会武田総合病院の今井優健康運動指導士による運動タイムです。テーマは「適度な運動を日々の生活に取り込む」こと。今井健康運動指導士は、快活なトークで会場を笑いに包み、参加者は頭も使いながら運動メニューを椅子に座ったまま楽しそうにこなしました。
第2部では、京都大学大学院の矢部大介教授(大学院医学研究科糖尿病・内分泌・栄養内科学)が、「病気の発症と進行予防のために、上手な生活改善」と題し講演しました。
矢部教授は冒頭、「当初、糖尿病が増加した昭和40~50年代の高度成長期の頃のイメージが社会に定着している」と指摘。「平均死亡時年齢も死因にも大きな差がないのに、就職や生命保険の加入など、糖尿病のある人の不利益につながっている」と問題提起しました。そしてこのことは日本糖尿病学会をはじめとする世界的な活動として、「糖尿病に対する正しい知識を皆で共有し、謂れのない差別を払拭していこう活動が続いています」と優しく会場に語りかけました。
また、矢部教授はサルコペニア(加齢による筋肉量減少・筋力低下)に言及し、「食後血糖値の上昇を抑える"ベジファースト"をするあまり、お腹が一杯になって、肝心のたんぱく質が食べられなくなるのも問題です」と注意喚起しました。さらに、「"三角食べ"も血糖値があがります。最初の5分間、おかずを先に食べる食事スタイルを推奨しています」と、その効果をグラフで示し、牛丼と牛皿定食による血糖値上昇の違いを取り上げて会場の笑いを誘い、「食べる順番を考えられるメニューにしてもらえると良い」と日常で出来る取り組みを紹介しました。
会場後方では「血糖測定コーナー」や医師による「健康相談コーナー」も設けられ、多くの参加者で賑わい、糖尿病への理解を深めました。