WT-1樹状細胞ペプチドワクチン療法を受けるタイミングについて
2024/11/21 トピックス たけだ膠原病リウマチクリニック
切除不能癌あるいは術後再発癌患者さんでWT-1 樹状細胞ペプチドワクチン療法(以下 DCワクチン療法)を希望して当院を受診される患者さんの受診時期について考えてみました。
まず、何種類かの化学療法を受けて、その結果が芳しくないが、現在も化学療法を受けておられる患者さんが一番多い印象があります。この場合は、まだDCワクチン療法が奏功する場合もかなりあるように思います。次に、あらゆる化学療法を行い終えて、「もう治療法がない」と主治医の先生から言われて、それでも全身状態があまり悪くない患者さんが多いと感じます。この場合、長期間の抗がん剤治療により患者さん自身の体内の免疫の状態がかなり悪くなっていますので、この時期からDCワクチンを受けられても上手くいかない場合が多いと思います(場合によっては、間に合うケースもあります)。また、時々ですが、癌と診断を受けて化学療法を開始する直前に受診される場合があります。この場合は、1回目の化学療法は予定通り受けていただき、2回目の化学療法の直前(抗がん剤による免疫抑制から最も回復している時期)に、成分採血を行い患者さんの免疫細胞(樹状細胞の前駆細胞)を回収して、フラスコ内で培養して樹状細胞に分化させます。14日かけて樹状細胞に分化させ、WT-1 癌抗原を認識させます。(14日後よりDCワクチン療法開始可能)さらには、癌と診断された時点で、まず当院に来られて成分採血を済ませてWT-1 樹状細胞ペプチドワクチンを作成に取り掛かってから、主治医のところで化学療法の種類と開始時期を決められる患者さんもおられます。
一番DCワクチン療法の治療効果が期待できるのは、最後のケースで化学療法をする前にDCワクチンの作製に取り掛かり、その後化学療法を始めるケースだと思います。抗がん剤によるダメージを受けていない免疫細胞を使うことができることと、早期からDCワクチン療法と化学療法を併用することで、癌免疫を高めながら抗がん剤を使用することになるので相乗効果が期待できます。一番治療効果が期待できないのは、あらゆる抗がん剤を使い切って「もう後がない」という段階でDCワクチン療法を行う場合です。患者さんの免疫状態が抗がん剤によりかなり悪くなっていると考えられることと、その時期では癌の進行がかなり進んでいると考えられるからです。すなわち、いずれ自由診療の免疫療法を受けることも考えておられる場合は少しでも化学療法を開始される前から、あるいは化学療法施行早期からのDCワクチン療法の導入をお考えください。以上は、DCワクチン療法の一般的な考え方と実際に私が長年癌免疫療法を行ってきた実感から述べておりますが、私たちが大阪大学杉山治夫教授を会長として設立している「WT1樹状細胞療法研究会」の会員の一人でおられる、東京慈恵会医科大学の小井戸薫雄先生らが以下のような臨床試験を実施されました。すなわち、切除不能膵癌に対するゲムシタビン+ナブパクリタキセルとWT-1 樹状細胞ペプチドワクチン療法(ワクチン作製に時間を要するためDCワクチンは、化学療法の2クール目から併用)を考案・実施され、高い治癒率(70.0%)と病勢制御率(100%)であったことを2024年10月8日にJournal for ImmunoTherapy of Cancer誌オンライン版に発表されました。この結果は、DCワクチン療法の一般的な考え方と実際に私が長年治療を行ってきた実感をまさしく臨床試験で証明するものです。
2024年10月29日に東京慈恵会医科大学が報道発表されていますので、以下に添付させていただきます。
【慈恵大学】プレスリリース_世界初、切除不能膵癌に対するWilms腫瘍WT1樹状細胞ワクチンを併用した化学療法を考案・実施.pdf