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下京消防署・康生会武田病院「救急医療懇談会」を開催

2024/10/04 レポート 武田病院

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対応の所要時間短縮に向け、率直な意見交換を実施


 救急隊と病院の両者が実際の搬送例をもとに救急対応の改善を目指す「救急医療懇談会」が9月13日、 康生会武田病院外来棟3階の会議室で開催されました。当日は下京消防署4名、南消防署3名、東山消防署2名、伏見消防署醍醐消防分署1名、康生会武田病院23名が参加。それぞれの視点から課題点をぶつけ、対応を模索する率直な意見交換の場となりました。

 冒頭挨拶で下京消防署の濱亮太郎第一部担当課長は、「昨年、京都市の出動件数は過去最多の10万3057件となり、今年はさらに増加傾向にあります。日々救急対応に精一杯で、一つひとつの症例を掘り下げ振り返ることが難しい状況ですので、今日は貴重な機会と言えます。国を挙げて、脳卒中循環器対策が進められているなか、PSC・コア施設である康生会武田病院様から治療の実態を詳しくお聞きし、また相互理解を深めることで、今後のより良い救急活動につなげていけるものと祈念しております」と述べました。

 康生会武田病院の武田純院長は、「下京区は宿泊施設数が全国でもトップレベルに多く、急な医療を必要とする方が非常に多い。当院も修学旅行生への対応について行政から要請されています。また、増加する外国人観光客についても、言語の関係で対応施設が限られます。そのうえこの4月、京都府での救命救急病院の新たな指定以降、市内の救急バランスが大きく崩れてしまったとの声をあちこちから聞いています」と救急医療を取り巻く状況を説明しました。

 そして「救急医療を要する方々、市民に不都合が起こらないことが一番大切です。我々の担う地域の救急医療を健全なかたちで育成していくためには、皆様方救急隊との密接なコミュニケーションが非常に重要です。本日は忌憚のない意見が飛び交う会となるよう、宜しくお願い致します」と語りました。

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    下京消防署 濱亮太郎第一部担当課長

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    康生会武田病院 院長 武田純



 続いて、下京消防署の雀部正明第一部担当係長が「京都市(下京区)の最近の救急統計・救急医療の現状について」と題し講演しました。
 雀部係長は、「本年の京都市全体での出動件数は8月末現在で7万0082件と前年比1710件増(2.5%増)で、初めて10万件超となった昨年同様、今年も必ず10万件を超えるものと予測しています。また、この10月から下京消防署に下京日勤機動救急隊が増隊されます」と状況を説明しました。
 また雀部係長は、マイナンバーカードを活用し、傷病者の救急搬送先を円滑に決定する実証実験(総務省消防庁:救急業務の迅速化・円滑化に関する実証)を、同署でも9月から全例で行っていることを紹介。具体的な対応内容を説明しました

 その後、武田病院脳卒中センターの鎌田貴彦医長が「脳卒中について」と題し講演しました。
 鎌田医長は脳卒中について、「脳梗塞であっても脳出血であっても、どの部分がダメージを受けるかによって症状が決まります」とし、脳と脳幹の解剖図を示しながら、それぞれの血管の支配領域について解説。「我々は、どのあたりに異常がありそうかを想像しながら、救急隊や患者さんから症状等お話を伺っています」と語り、様々な事例を示しました。

 質疑応答では、血圧上昇による再破裂の危険があるなか、搬送に求められる安静さについての質問が出されると、鎌田医長は「一番の懸念はやはり血圧です。刺激で血圧があがると破れやすくなります。ただ、搬送速度が求められるなか、実際の揺れや衝撃がどこまで影響するかの基準については難しい」と課題であることを語りました。

下京消防署からは武田病院に搬送された、急性期脳梗塞、外傷性くも膜下出血、ペースメーカー埋込患者の不整脈症例の3例を発表。それぞれのケースについて、初期観察をする上での注意点や判断材料、なぜ発症するのかなどを救急隊員が質問すると、不整脈治療センターの垣田謙センター長、脳卒中センターの塩見晃司医師らが丁寧に説明を行いました。

 最後にフリーでの意見交換が行われ、救急隊からは矢継ぎ早に質問が出されました。大きな論点となったのは窓口対応の時間短縮です。武田病院側からは、「気兼ねなくお電話頂ければ」と診療科医師に直接つながるホットラインの有用性を説明しました。

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意見交換会の様子



これに対し下京消防署の濱課長は、「他の病院様でも同様のケースがあるのですが、診療科ごとに電話先が増えていくと我々の方が混乱してしまいます。できれば窓口は一本にしいただき、そこからスピーディーに専門の先生方につないでいただけるような仕組みがあればありがたい」と率直な要望を話しました。

 武田病院側は、夜間体制をはじめとする課題点についても説明しながら、救急隊への対応体制を再整備することを説明しました。

 閉会にあたり、脳卒中センターの滝和郎センター長は、議論の中心となった対応時の所要時間について「早急にこれを詰められるよう努力したいと思っております」と決意を表明。そして、救急隊の日頃の活動や市民への啓発活動に触れ敬意を表しながら「これからの京都の救急医療の向上を目指し、さらに切磋琢磨していきたいと思います」と締めくくりました。