京都新聞朝刊 医療のページ 十条武田リハビリテーション病院 手外科センター長 河野 茂「親指の付け根の痛み」
2024/01/26 メディア 武田病院グループ
※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点でのものであり、現在は変わっている可能性があります。
「親指の付け根の痛み」 快癒のため痛み我慢せず受診を
十条武田リハビリテーション病院 手外科センター長 河野 茂
原因は。
母指(親指)の付け根の最下部、手首のすぐ上のあたりには、馬の鞍(くら)のような形をした「CM関節」があります。親指の可動域が広く自在に動かせるのはCM関節のおかげですが、使いすぎると軟骨がすり減って骨同士がこすれ、痛みが生じます。母指CM関節症といい、母指の付け根が痛む、力を入れると痛くて物をつまめない、ビンのフタが開けにくい、重い物が持てないといった症状が表れます。生まれつき関節が緩い人もいますが、女性ホルモンの低下や、指先を使う動作が多い仕事でも発症しやすくなります。
検査と治療は。
母指に圧をかけて回し、痛みの有無を確認します。進行すると手首の上に骨の突出がみられるようになります。レントゲンで程度を診断したあと、軽症なら装具で固定して付け根を安静に保つ療法で炎症を治めます。症状が進行して生活に支障を来している場合は、手術を考慮します。従来は関節をねじで留める固定法や、骨を削って自分の腱(けん)を移植する関節形成術を行いましたが、近年は人工靭帯(じんたい)を用いたCM関節形成術が主流です。この方法は関節を固定しないため、指の動きを維持できます。術後の安静期間も従来手術に比べて約半分の2~3週間で済み、保険も適用されます。
注意することは。
関節の変形がひどくなってから手術しても、筋肉に従来のくせが残ってなめらかに動かしにくくなってしまいます。痛い部分をかばって使わないと筋肉が固くなり、やはり円滑に動かせなくなるので、快癒させるためには痛みを我慢せず、早めに受診しましょう。また、治療後のリハビリも大切なので、気長に訓練していきます。痛みで困ったり、今までのように動かせなくなったりしたら「歳だから仕方ない」とあきらめず、まずは相談してください。