京都新聞朝刊 医療のページ 武田総合病院 泌尿器科部長 寒野 徹「泌尿器疾患のダヴィンチ手術」
2022/08/10 メディア 武田病院グループ
※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点でのものであり、現在は変わっている可能性があります。
「泌尿器疾患のダヴィンチ手術」 体へ負担軽く高齢でも可能
武田総合病院 泌尿器科部長 寒野 徹
ダヴィンチ手術の特徴は。
「ダヴィンチ」とは医療用ロボットで、腹腔鏡(ふくくうきょう)手術をロボットの支援によって行います。ロボットのアームに内視鏡やメス・鉗子(かんし)などを取り付け、医師はモニターで患部の立体画像を確認しながら遠隔操作で手術します。通常の腹腔鏡手術では骨盤の奥にある泌尿器の縫合などは難しかったのですが、ダヴィンチ手術なら医師の手の動きがそのまま伝わるので細かい操作が可能になり、臓器の再建手術なども容易になりました。
適応する疾患は。
泌尿器科は体の奥にある臓器を治療するので、遠隔操作で細かい作業ができるダヴィンチは大変適しています。そのため他科より普及しており、導入している病院では泌尿器系がん治療の標準になっています。最も多いのが前立腺がんで、腫瘍が小さい初期の腎がん、ぼうこうがんの順です。いずれも保険適用になります。ぼうこうを全摘する場合は尿路再建も同時に必要となりますが、そのダヴィンチ手術も保険が適用されます。
手術と術後について。
体に数ヵ所の穴を開けて行うので、開腹手術より傷が小さく済みます。腸の癒着が防止できて腸閉塞になりにくく、合併症も防げます。痛みや出血量も少なく、体への負担が軽くなるので、回復が早くなります。術後、1日で離床して歩けるほどです。開腹手術は体への負担が大きいため、高齢者には難しかったのですが、ダヴィンチ手術は高齢でも必要に応じて施術できるようになっています。短所を挙げるとすれば、遠隔操作のため触覚がないことです。膀胱全摘手術の場合は腸を用いて膀胱を再建するのですが、腸は大変軟らかいので、加減を誤ると破ってしまう恐れがあります。しかしこの問題も、医師の技術が上がって克服できるようになりました。