京都新聞朝刊 医療のページ 武田総合病院 内分泌センター長 成瀬 光栄「原発性アルドステロン症」
2022/06/30 メディア 武田病院グループ
※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点でのものであり、現在は変わっている可能性があります。
「原発性アルドステロン症」 高血圧、カリウム低下特徴
武田総合病院 内分泌センター長 成瀬 光栄
原発性アルドステロン症とは。
高血圧症の原因となる代表的な病気で、副腎という臓器の異常がスタート地点となり、アルドステロンというホルモンを血液中に過剰に分泌する結果、高血圧と血液中のカリウムの低下(低カリウム血症)が特徴です。高血圧患者の2割ほどを占め、脳卒中、心不全などの合併を認めるため、大変重要な病気です。副腎の片方が病気の場合(通常良性の腫瘍)と両方の副腎が病気の場合の2通りがあります。
症状や診断は。
カリウムが不足すると、手のしびれや力が入りにくいなどの症状が出ますが、程度が軽い、あるいは正常のこともありその場合は無症状です。このため、一般的な高血圧と区別がつかず、降圧薬を飲み続ける人も少なくありません。しかし、この病気はきちんとした診断と特異的な治療が必要で、診断の第一歩は、血液検査によるスクリーニング(ふるい分け)で、アルドステロンとレニンを測定し、ホルモンバランスの崩れを発見します。50歳以下、通常の治療で血圧が下がりにくい、高血圧が中等度以上、カリウムが低め、睡眠時無呼吸症候群(SAS)や脳卒中の合併などでは特に注意して検査をします。
治療方法は。
高血圧だけでなく、アルドステロンに対する特異的治療が必要です。片方の副腎の病気では、内視鏡手術が第一選択で、術後、多くの人で高血圧、アルドステロン過剰が治癒します。両方の副腎が病気の場合は、アルデステロンの作用をブロックするアルデステロン拮抗(きっこう)薬による特異的治療をします。ポイントは早期発見すること。発見が遅いと、動脈硬化が進行し、治療しても治りにくくなることがあります。健康診断で血圧が再検査・要精査・要治療になった場合などは、きちんと2次健診に行くことが重要です。