令和4年2月3日(木)「心不全地域連携セミナー」をオンライン開催しました
2022/03/01 イベント 武田病院
多様なアプローチでQOLと生命予後の改善をめざす。
心不全への対応を地域の医療機関が多様な視点から検討する「心不全地域連携セミナー」が2月3日に開催されました(康生会武田病院、下京西部医師会、ノバルティスファーマ株式会社、大塚製薬株式会社:共催)。
セミナーは3部構成で、再拡大する新型コロナウイルスの感染対策のためオンライン形式で行われました。
冒頭挨拶で康生会武田病院の木下法之循環器センター長・心不全センター長は、「平日夜のお忙しいところ、また新型コロナウイルスの再拡大で大変なところ、大変多くの先生方にご参加頂きありがとうございます」と謝意を表し、セミナー主旨と構成を説明しました。そして、「本日は長時間となりますが、どうぞ宜しくお願いします」と語りました。
セッション1(メディカルスタッフ)では、康生会武田病院循環器内科病棟の高井香師長が座長となり、医仁会武田総合病院の小笹孝史慢性心不全看護認定看護師が登壇し、「心不全療養指導士への期待~心不全チーム医療の新たなキープレイヤー~」と題し講演しました。
小笹認定看護師は、心不全患者さんが退院後1年以内の再入院率が26%であること、1年後の死亡率が23%であること、患者さん・ご家族がこうした予後の悪い疾患であることをなかなか認識できていない現状を説明したうえで、「再入院は塩分・水分制御の不徹底、治療薬服薬の不徹底など、患者さんによる要因も多い」と課題を指摘しました。また「介入にあたっては多数のコメディカルが中心になります」と語りました。
また、こうした心不全の包括的な療養指導を行うプロフェッショナルとして、心不全療養指導士が制度化され2021年4月にスタートしたことをあげ、「心不全療養指導士は医師や他の医療専門職と円滑に連携し、チーム医療を推進することをめざしています。今後、心不全療養指導士が地域連携のHUB(ハブ)としての役割を発揮することを期待しています」とし、『心不全看護外来』など同院での取り組みを紹介しました。
セッション2(心不全Topics)では、循環器内科・内科まつばらクリニックの松原欣也院長が座長を務められ、康生会武田病院の木下法之循環器センター長・心不全センター長が「当院の心不全センター開設1年の取り組み」と題し講演しました。
木下センター長は冒頭、心不全が増加している状況や、心不全が再発を繰り返してしまう多様な要因を説明。この対応に複数の部門で構成される心不全センターを立ち上げ、看護部、栄養科、リハビリテーション科、臨床工学科、患者サポートセンターそれぞれの具体的な活動を紹介しました。
また木下センター長は、「心不全(HFrEF)治療には、実は急性期管理と慢性期管理の2つがあります。入院時は、症状をとる、低心拍出を解除するといった『患者さんの目に見える治療』を行います。次には生命予後を良くするため、ファンタスティック4と呼ばれる4種の薬剤治療を行うのですが、この治療は症状改善を感じにくいため、患者さんにとっては『目に見えない治療』となります。ここに心不全の再増悪を防ぐ可能性があり、うまくシフトしていくことが重要です」と語りました。
またファンタスティック4について木下センター長は、80歳男性の症例(前壁中隔の壁運動低下、左室駆出率39%、僧帽弁閉鎖不全症Ⅱ度)を紹介。「もともとARBを投与している患者さんでしたので入院6日目からARNIに変え、SGLT2阻害薬も6日目から投与しました。βブロッカーは入院当日からです。BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)は当初、2453もあったのですが、治療後12日間で576まで低下しました」と説明しました。
今後について木下センター長は、「京都心不全ネットワークの導入を広げていきたいと思っています。現在、入院患者さんを中心に行っていますが、心不全治療・管理指導を継続するためこれを外来にも広げ、グループ施設である康生会クリニック、十条武田リハビリテーション病院、そして開業医の先生方と連携をとり、治療に取り組んでいきたい」と聴講者に呼びかけました。
セッション3(不整脈Topics)は、くろやなぎ医院の畔柳彰院長が座長を務められ、康生会武田病院の垣田謙不整脈センター長が「最新不整脈治療の実際」と題し講演しました。
垣田センター長は、心不全と不整脈の関係について、「不整脈疾患は心不全の一因であるが、心不全増悪により不整脈が発生する場合もあり、悪循環を助長することが多く常にそのサイクルが動いています。不整脈治療においては、やはり早期介入が重要。不整脈疾患のほぼ全てが心不全の原因となります」と説明しました。
垣田センター長は、とくに心房細動について「アブレーション治療による非薬物的早期介入が望ましく、既に左室駆出率が低下している症例においても洞調律維持を獲得することで予後改善が期待できます」とし、内視鏡下心臓レーザーアブレーションシステム、リードレスペースメーカーや心機能低下症例に対するペースメーカーなど新たな取り組みを紹介し、治療選択の幅が広がっていることを説明しました。
閉会挨拶で十条武田リハビリテーション病院の高橋衛循環器内科センター長は、「先生方の講演をお聞きし、やはり少しでも再入院を減らし、少しでも寿命を長くするには、連携が極めて重要だと感じました。それは患者さんを中心とした、多職種の連携、病診連携・病病連携であり、本当に多様な介入方法があります。介入することで、QOLの向上はもちろん生命予後を改善していくのが私たちの仕事なのだとあらためて考えさせられました。講演された先生方、座長を務められた先生方、そして長時間にわたりご聴講頂いた先生方に心から御礼を申し上げます」とセミナーを締めくくりました。