京都新聞朝刊 医療のページ 武田病院 外科部長 統括診療部長 猪飼 伊和夫「肝がん」
2022/01/27 メディア 武田病院グループ
※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点でのものであり、現在は変わっている可能性があります。
「肝がん」 慢性肝障害は定期検査を
武田病院 外科部長 統括診療部長
猪飼 伊和夫 氏
原因と症状は。
肝臓がんは原発性肝がんと転移性肝がんに分けられ、原発性肝がんのほとんどが肝細胞がん、いわゆる肝がんです。肝がんはB型・C型肝炎ウイルスに感染した患者さんに多く、慢性肝炎から肝硬変に進行するとさらに発生しやすくなります。そのほかにアルコール多飲による肝硬変や、最近は脂肪肝からの非アルコール性脂肪肝炎の肝がんも増えてきています。初期には自覚症状がなく、肝がんが進行すると腹水がたまったり茶褐色の尿や黄疸(おうだん)の症状が見られ、こうなるとかなり重症化しています。
診断と治療は。
自覚症状がほとんどないので検診で早期発見するしかありません。血液検査などで肝障害がみつかった場合はB型・C型慢性肝炎なら半年に一度、肝硬変なら3~4ヵ月に一度、定期的に検査を受けてください。検査では超音波(エコー)や血液検査で腫瘍マーカーの検査などを行い、異常があれば精密検査を行います。治療はがんの進行程度と肝臓の障害の程度によって選択します。ほかの臓器に転移せずがんが肝臓内に限られている場合は切除手術が適しています。肝臓に障害があり切除できない場合や、腫瘍が小さく数も少ない場合は、超音波で肝がんを見ながら針を刺して焼灼(しょうしゃく)するラジオ波焼灼療法を行います。がん細胞への血流を止めて壊死(えし)させる肝動脈塞栓療法を施行することもあります。肝臓の外へ転移が認められる場合は投薬による化学治療や免疫療法が中心になり、肝障害が著しい場合は肝移植を検討することもあります。
治療後の注意は。
肝臓がんは再発しやすいため、治療して治ったから大丈夫と思わないように。B型・C型ウイルス性肝炎など肝疾患があれば、まずそれを完治させ、その後定期的に診察を受けてください。アルコールは控え、肥満の人は減量しましょう。