令和3年2月18日(木)『心不全地域連携セミナー』を開催致しました。
2021/02/25 イベント 武田病院
「心不全地域連携セミナー」をオンライン開催
途切れることのない病診・多職種連携を推進
"増加の一途を辿る心不全"への対応を地域の医療機関が他職種で検討する「心不全地域連携セミナー」が2月18日、下京区のTKPガーデンシティ京都で開催されました(康生会武田病院、下京西部医師会、ノバルティスファーマ株式会社、大塚製薬株式会社:共催)。感染対策のため今回は、WEBを通じて聴講するオンラインセミナー形式で行われました。
冒頭挨拶で当院の武田純院長は、新型コロナウイルスの新規感染者数の推移を説明し「12月から1月はまさにパンデミックの状況でしたが、ようやく収束に向かいつつある状況ではないでしょうか。ここでワクチン接種が始まりますので、いよいよ新型コロナウイルスに止めを刺したいのが医療者の願いです」と思いを語りました。さらに、「ポストコロナでは、もう一つのパンデミックと言える『心不全パンデミック』に対応する重要性がさらに増していくと考えています」とし、4月に心不全センターを康生会武田病院に開設することを説明しました。そして聴講者に対し、「今日は、ポストコロナの新しい循環器診療を考える大きな一歩になればと思っています。WEBという少々慣れない形式ですが、聴講される多くの方々からご意見を伺いたいと思っています」と呼びかけました。
第一部では、循環器内科・内科まつばらクリニックの松原欣也院長が座長を務められ、三菱京都病院心臓内科の夜久英憲先生が「Multimorbidity時代の心不全診療を考える」と題し、基調講演を行いました。
夜久先生は、「2つ以上の主たる慢性疾患を有する状態が「Multimorbidity」であり、その筆頭がうっ血性心不全です。日本の65歳以上の高齢者の約60%がMultimorbidityとの報告があり、特に心不全患者さんは併存する疾患が多い。まさにMultimorbidity時代に突入しています」と説明しました。
この治療にあたって夜久先生は、PCI(経皮的冠動脈形成術)、TAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)、MitraClip(経皮的僧帽弁クリップ術)など低侵襲化が進んでいることを説明。そして新たな薬剤としてアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬ARNIをとりあげ、「ARNIは投与開始早期から心不全の再入院の抑制効果が認められる」とし、入院30日後における再入院抑制に優位差があることなど多様なデータを紹介しました。
第二部では、当院循環器センターの木下法之部長が座長を務め、勤務医・開業医・コメディカルの多職種によるディスカッション「心不全における病診連携を考える」を開催しました。
登壇したのは、開業医の代表として関医院内科・循環器科の関透院長、当院からは、勤務医として循環器センターの澤西高佳副部長、看護師として合原利奈循環器病棟看護師、薬剤師として糸島恵薬局主任、心臓リハビリテーションとして上西貴美子リハビリテーション科主任(健康運動指導士)、管理栄養士として鈴木花奈管理栄養士、そして座長を合わせた7名。これに松原欣也先生、夜久英憲先生、そして当院の武田純院長がコメンテーターとして加わり、積極的な討議を行いました。
とりわけポリファーマシーについては多くの議論が交わされました。松原院長は「我々が専門とし治療している心不全や生活習慣病だけでも多くの薬剤が必要となります。糖尿病もそうですが大変多くの薬剤を服薬されているケースが多い。これを開業医が専門外の領域も説明しながら整理するのは困難です。入院時以外も薬剤調整で相談に乗っていただくのはどうでしょう」と提案しました。
これに対し武田院長は、「非常に重要なご指摘です。多くの診療科が関係するので、これらを俯瞰的に調整することが必要です。患者サポートセンターでの対応時に、薬剤師がそれぞれの診療科にコンサルトすることも検討しています。また下京西部医師会には『下西連携カード』があることも見逃せません。患者さんの情報を共有しやすい環境にあり、これを推進していくことも重要と考えています」と話し、木下部長は情報共有の重要性を説明しながら、「これからも開業医の先生方のご意見を頂き改善をしながら推進していきたい」と思いを語りました。
閉会挨拶で関院長は、「基調講演では多くの新しい薬剤のお話、そしてディスカッションでは病院と開業医のタッグ、職域を超えた連携と、途切れることなく連携するための非常に良いお話だったと思います。本日ご視聴の先生方にとって貴重な情報提供になったと思います」と語り、セミナーを締めくくりました。