京都新聞朝刊 医療のページ 宇治武田病院 院長 金 郁喆 「小児整形」
2020/07/30 メディア 武田病院グループ
※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点でのものであり、現在は変わっている可能性があります。
宇治武田病院 院長 金 郁喆 「小児整形」
小さな異変、大人は反応を
小児整形について。
先天性疾患や外傷による機能障害、中高生に多いスポーツ障害が対象です。適切に診断し治療を行えば完治するものもありますが、放置すると成長につれて悪化していきます。体も心も発展途上にある子どもだからこそ、早期の段階でしっかりと治療することが大切です。
主な疾患は。
先天性三大疾患として、股関節脱臼(発育性股関節形成不全)、筋肉にできたしこりが引きつり、首が斜めになる筋性斜頸(しゃけい)、足が内側に変形する内反足があります。小学生から中学生の男児に多く見逃されやすいのは、骨頭が壊死(えし)をすることで股関節に痛みを生じるペルテス病、急速な成長や体重増加によって股関節の骨頭が滑るすべり症です。他にも、スポーツによる肘、肩、膝、腰の障害や交通事故による捻挫、成長障害を来す骨折などがあります。
治療について。
股関節脱臼は検診で発見できるので、4カ月検診を必ず受けてください。筋性斜頸は3歳までに手術をすれば、顔を真っすぐにでき首を動かせるようになります。X脚やO脚は12歳ごろであれば簡単な手術で矯正できますが、成長後は骨切り術が必要です。どの疾患も成長に応じて再発する場合があるので、治療後も再度検診を受けるようにしてください。また、内股で転倒の多い子は靴に特殊な中敷きを装着すると転倒を予防することができます。イリザロフ法は自分の骨を徐々に延長して変形や長さを調節する手術法で、筋、神経、皮膚もすべて延長できます。年齢を問わず、交通事故やスポーツによる成長障害などに適用でき、学校や仕事に行きながら治療が可能です。子どもは痛みや症状をうまく伝えられません。周囲の大人は正常な歩行ができない跛行(はこう)などの小さな異変であっても敏感に反応してください。