京都新聞朝刊 医療のページ 武田病院 心臓血管外科部長 朴 昌禧「大動脈解離」
2019/10/31 インフォメーション 武田病院グループ
※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点でのものであり、現在は変わっている可能性があります。
武田病院 心臓血管外科部長 朴 昌禧「大動脈解離」
高血圧や喫煙など主な原因に
大動脈解離とは。
大動脈の内膜に亀裂が生じて、血管の壁が2層に裂けてしまう状態のことです。血管の壁が破れて大量出血を起こしたり、脳や脊髄、腸に回る血流が途絶え虚血状態を引き起こします。胸から腹部まで裂けることが多く、解離している部分によってA型とB型の2種類に分けられます。A型は心臓近くの血管、B型は心臓から少し離れた血管が裂けている状態です。予兆はなく、突然発症します。解離が起こると、胸から背中にかけて激痛が走り、脳への血流がなくなることで意識を失うこともあります。
治療について。
A型の場合、約90%の方が発症から24時間以内に亡くなるといわれているため、早期の手術治療が必要です。血管壁の裂け目が始まる部分を人工の血管に置き換えます。ただ、心臓や頭部への血流を一時的に停止させ、低体温状態で手術を行うため、通常の手術よりも危険度は高くなりますが、近年、手術成績は改善しています。B型では手術は行わず、降圧薬を使用し、血圧の上昇を抑えて保存治療を行います。
日頃の注意は。
大動脈解離は、さまざまな要素が合わさって発症しますが、主な原因は高血圧や喫煙、ストレスなどです。普段から家庭で血圧を朝と晩に測り、自分の血圧を知っておくことが大切です。高血圧の方は医師に相談し、継続して薬を飲んでください。禁煙と減塩に努め、ウオーキングなどの適度な運動を心掛けてください。また、急激な血圧の上昇につながる冬場の入浴、トイレでの寒暖差に注意しましょう。重い荷物を持って、息をこらえるような状況を避けることも大切です。大動脈解離は40~50代の若い方でも発症する可能性があります。診断には造影剤を使用したCT検査が有効です。