令和元年10月17日(木)「病診連携講演会」が開催いたしました。
2019/10/26 インフォメーション 武田病院
●病診連携講演会
~糖尿病トピックと網膜症を考える~
患者さんの安全と将来を見据えた治療を軸に議論を交わす
武田病院グループと地域の開業医の先生が意見交換を行う「病診連携講演会 ~糖尿病トピックと網膜症を考える~」(康生会武田病院、ノバルティスファーマ株式会社共催)が10月17日、京都タワー2階のTKPガーデンシティ京都で開催されました。当日は京都市内の開業医の先生ら医療関係者約47名が参加。症例や最新知見について闊達(かったつ)な議論を交わしました。
セッション1は康生会武田病院糖尿病内科の米田紘子部長が座長となり、ノバルティスファーマメディカル本部の小磯亜里沙氏が登壇、「糖尿病早期治療強化の重要性VERIFY study」と題し講演を行いました。
小磯氏は2型糖尿病診断後早期の患者さんを対象としたビルダグリプチンとメトホルミンの併用療法の長期有効性、安全性について、メトホルミン単剤療法を比較検証したVRIFY試験について解説。この併用療法はメトホルミン単剤療法と比較し、長期にわたり良好な血糖コントロールが得られたことを説明しました。
続くセッション2は引き続き米田部長が座長を務め、康生会武田病院眼科の牧山由希子部長が登壇し、「糖尿病網膜症の診断の治療」と題する講演を行いました。
牧山部長は冒頭、糖尿病網膜症の機序を説明したうえで、「2型糖尿病の年約4%の患者さんが糖尿病網膜症を発症している」とのデータを紹介しました。また、糖尿病眼学会の動きとして「糖尿病網膜症の発症・進行の関連因子として、血糖の急速コントロール(Early worsening)、高脂血症などが糖尿病網膜症のガイドラインに盛り込まれる予定」であることを紹介しました。このほか牧山部長は、超広角眼底撮影や光干渉断層計(OCT)により糖尿病網膜症の診察が進歩していること、今後はAIによる眼底評価の動きがあることなどについて説明しました。
特別講演では、康生会武田病院の武田純院長が座長となり、京都府済生会の中村直登支部長が登壇、「明日から役立つ、糖尿病治療での合剤利用法」と題し講演しました。
中村支部長は、代表的薬剤であるメトホルミン、DPP4阻害薬、SGLT2阻害薬、SU剤について、特徴や合剤での効果を解説。また、糖尿病患者さんが長寿化しがんの罹患が増えている点について「防ぐには血糖コントール、体重コントール、適度な運動、できればメトホルミンの服用」であるとし、メトホルミンの服用で癌リスクが2~3割減ることを説明しました。これに関連し中村支部長は「我々が診ているのは血糖ではなく、その人の将来です。5年後、10年後にその人が幸せに生きているかが重要」と会場に訴えかけました。
質疑応答では、会場から「糖尿病という名がつくだけでガイドラインの縛りが急に厳しくなる。『ポリファーマシーになるのは仕方がない』との考え方をどう思われるか」との質問が出され、中村支部長は「これだけ長寿化すれば複数罹患するのが当然です。ポリファーマシーを悪とする風潮が強いですが、実はポリファーマシーにならざるを得ないのかもしれません。もちろん無駄になっている薬剤の処方は避けるべきですが、より生物学的に安全なのは複数薬の適切な組み合わせによる治療だと思います」と持論を語りました。