医療従事者は、様々な場面で意思決定への支援が求められますが、特に入退院支援看護師は患者さんやご家族の「真の思い」をくみ取り、支援していく必要があります。肺炎で入退院を繰り返していたある患者さんは、褥瘡が悪化し 入院となりました。これまでこの患者さんは奥さんと二人暮らしを続けておられたのですが、入院環境に適応するのが難しく、不穏状態となりました。奥さんは毎日、長時間面会され、いつも「良くなったら家に連れて帰ります」と話をされていました。しかし長男さんは「家は難しい。母が倒れてしまいます」と療養型病院への転院を希望されました。 ご家族間での意思の相違にどう対応すべきか。私たちは長男さんにもカンファレンスに参加していただくようお願いをしました。そこでご家族に思いを話し合っていただき、医療者とケアマネジャーがそれぞれアドバイスを行いました。
結果、療養型病院を選択することになりました。ところが転院したところ、患者さんは環境に馴染めず、2日で当院に再転院することになったのです。
再びご家族と話し合いの場を持ち、思いを再確認したところ奥さんが「夫は帰りたいと言っています。家に連れて帰ります」と思いを強く語り、この希望に沿うようケアマネジャーや在宅サービスの調整を図ることになりました。こうして患者さんは笑顔で退院され、ご帰宅された第一声が「やっと帰れた」だったそうです。
患者さんの不穏状態は「家に帰りたい一心から」なのだと、退院支援のあり方を考えさせられる事例となりました。