京都新聞朝刊 医療のページ 宇治武田病院 院長 金 郁喆「イリザロフ法」
2024/09/26 メディア 武田病院グループ
※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点でのものであり、現在は変わっている可能性があります。
「イリザロフ法」 修復力利用し骨を再生
宇治武田病院 院長 金 郁喆
イリザロフ法とは。
ロシアのイリザロフ博士が発見した治療法で、骨折を自ら修復しようとする力を利用し骨を延長する再生医療です。手術で骨折させて特殊な器具をつけることで、骨髄の中の細胞の働きによって少しずつ骨が伸び、周りの神経や筋肉、血管も同様に再生していくのです。この作用を利用して骨の変形や長さを調整したり、骨の異常な部分を取り除いて、その骨欠損部を自分の骨で修復して補うことも可能です。
変形の度合いや部位によって異なりますが、だいたい1日1ミリメートルのペースで骨が伸長します。しっかりとした骨に成熟するまでは時間がかかり、それも含めた治療期間は延長期間の約3倍を要します。ただ、手術後は1カ月ほどで退院でき、器具をつけていても普通に生活できます。器具はピンで固定するため、ピンを刺した部分からの感染を防ぐために、毎日自分で消毒して清潔を保つ必要があります。
対象となるのは。
生まれつき脚が短い、または曲がっている、左右の脚の長さが違う人、骨折などでひどく変形してしまった人、腫瘍や骨髄炎で骨を切除した人などが対象です。140センチ以下の低身長には公的保険が適用されます。早い段階から両脚を延長することで、平均身長に近づけることができます。
治療の効果は。
何歳でも治療できますが、20歳以下なら骨が早く成熟するのでより効果が表れやすいでしょう。最大で脚を28センチ伸ばしたという例もあります。子どもの時に治療を受けて、大きくなってから普通に歩いたりスポーツをしている人もいます。治療には長期間を要しますが、結果として自分の脚で歩いて長く働けるようになることは、社会にとっても良い効果をもたらすでしょう。