京都新聞朝刊 医療のページ 十条武田リハビリテーション病院 院長 河野 茂「手根管症候群」
2024/07/25 メディア 武田病院グループ
※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点でのものであり、現在は変わっている可能性があります。
「手根管症候群」 小指除く指に痛みやしびれ
十条武田リハビリテーション病院 院長 河野 茂
手根管(しゅこんかん)症候群とは。
手のひらの付け根近くには手根管というトンネル状の構造があり、その中を腱(けん)と神経が通っています。この手根管の屋根にあたるじん帯が厚くなると、トンネル内が狭くなり神経が圧迫され、指に痛みやしびれが生じます。症状は小指以外の4指に表れ、薬指は中指に近い片側だけがしびれます。進行すると親指の付け根の筋肉がやせて平らになり、親指と人差し指で物をつまむ動作がしにくくなります。特徴的な症状として、夜間や早朝に痛むことが多く、手首を振ると楽になります。大半は原因不明ですが、圧倒的に女性が多く、特に閉経後に増加します。手をよく使う仕事や、けんしょう炎、骨折、妊娠などが原因になることもあります。また、糖尿病やリウマチ、人工透析をしている人にもみられます。
診断、治療方法は。
自覚症状でほぼ特定でき、手首をたたいたり曲げたりして症状を確認します。神経伝導検査といって、神経の流れの速さを測る検査を行うと、症状の程度がわかります。一時的な女性ホルモンの変化が原因なら、自然に良くなることもありますが、それ以外の人には軽症なら血流を良くする薬や炎症を抑える薬などを処方します。女性ホルモンを整えるサプリメントを勧めることもあります。検査結果や、生活への影響の程度によっては手術を検討します。
手術について。
現在は内視鏡手術が可能で、手術時間は15分程度で済みます。手首と手のひらに穴をあけ、内視鏡で映像を見ながら硬くなったじん帯を切ります。術後は安静のため1週間ほど固定し、抜糸後は普通に生活できます。症状が進行してからでは、治療してもしびれや筋肉のやせが回復しにくいこともあるので、親指・人差し指・中指のしびれや痛みが続くなら受診しましょう。