1 令和6年9月 長い酷暑を経て、ようやく爽やかな秋を迎えるようになりました。 我々、医療・介護を取り巻く環境はなかなか厳しいものがありますが、目の前の患者さん・利用者さん、地域の方、そして同僚に対しては爽やかさを心掛け、気持ちのよい雰囲気でお互いに接することができるよう努めていただければと思います。 先だって3病院団体(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会)が、病院経営定期調査の中間報告(速報値)を行いました。医業損益の前年同月比較(2023年6月/2024年6月)は減収・減益、稼働100床当たり医療利益の赤字幅は241万円の拡大。2022年度/2023年度では、稼働100床あたりの平均経常利益はマイナス3,412万円となるなど、病院の経営状況の急速な悪化が数値として現れています。団体では、「このままでは地域医療に少なからず影響が出る恐れが高い」と特例措置等の緊急要望を国に行っています。 当グループもこうした厳しさを日々実感しており、多くの経営課題に立ち向かっていかなければなりません。その一つが救急医療体制です。京都市における救急搬送件数は、過去最高を記録した昨年を上回る状況です。このように救急医療の需要が増大しているなか、今年4月、公的病院が新規に救急医療センターに指定されてからは、民間病院への搬送件数の減少が見られます。当グループをはじめ2次救急への対応力増強を図ってきた施設は、経営的に厳しい状況に立たされていると言えるでしょう。病床機能や外来機能だけでなく、救急医療の分野も機能分化することで効率的・効果的に医療資源を提供することが本来のかたちであり、中長期的に安心・安全なセーフティネットを維持することにつながるものと思います。 また、観光客への医療対応も重要な課題です。2023年は7518万人(観光入込客数)とコロナ禍前を上回る数値となっており、2024年も増加を続けています。交通をはじめ地域の生活に障害が発生し、医療セーフティネットにも大きな負荷がかかるオーバーツーリズムであることがかねてより指摘されています。当グループでは、まず地域の医療ニーズにしっかりと応え、そのうえで通訳を必要とする外国人観光客への医療対応や、修学旅行生への医療対応を行うなど、役割を発揮していく考えです。 課題は多くありますが、基本となる5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)・5事業(救急医療、災害医療、周産期医療、小児医療、へき地医療)、そして在宅医療とコロナ等新興感染症への対応を充実させていかなければなりません。これ以外にも様々な医療ニーズに対応できるよう、領域ごとに独自の取り組みを行っていく必要があります。 これらを数値としてまとめたのが「武田病院グループ年報」であり、視覚的に分かりやすくなるよう工夫を凝らしています。当グループの取り組みにご理解をいただき、引き続きご指導・ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。巻 頭 言武田病院グループ 理事長
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