2019/12/23
「第9回京滋骨を守る会講演会」を開催しました
骨粗鬆症検診 京滋の受診率の低さに警鐘
参加者に骨を守るための行動を呼びかける
第9回「京滋骨を守る会講演会」(主催:認定NPO法人京滋骨を守る会、後援:公益財団法人骨粗鬆症財団)が12月15日、京都市上京区のKBSホールで開催されました。例年を大幅に上回る380人もの来場者が集まり、骨の病気やその予防につながる運動、食事など生活習慣の改善法、骨粗鬆症検診の重要性などを学びました。
冒頭挨拶に立った医仁会武田総合病院の森田陸司名誉院長(京滋骨を守る会理事長、骨粗鬆症財団監事)は、「骨粗鬆症の患者さんは全国に約1300万人いると推計されていますが、大多数の方は全く治療を受けておらず、治療されるのは僅か20%に過ぎません。しかもその半数が途中で治療を辞めてしまう『治療のギャップ』が世界的な問題となっています」と深刻さを強調しました。
続いて森田名誉院長は骨折予防には正しい知識の理解が重要であるとし、「食事習慣、運動習慣などのライフスタイルの改善が欠かせません。こうした改善は骨折予防だけでなく、全身の筋肉が減少するサルコペニアや全身が衰弱するフレイルを防止します。さらには認知症、うつ、がん、脳血管障害のリスクを下げる効果があり、自立した健康寿命を伸ばすことが可能となります」と説明。これに沿った演目であるとして講演会の意義を語りました。
講演1は、京滋骨を守る会の田中清事務局長(神戸学院大学栄養学部教授)が登壇し、「骨の栄養と骨粗鬆症~ビタミンDを中心に~」と題する講演を行いました。田中事務局長は骨の構造の説明をしながら「骨が壊せなくなる病気で骨の量が増えるとどうなると思いますか?」と会場に問いかけました。そこから続く「実は骨折しやすくなるのです」との予想外の言葉に、会場は大きくどよめきました。「骨はつくって壊しを繰り返さないと質が悪くなります。修理するから何十年も長持ちするのです」との田中事務局長の言葉に参加者は引き込まれ、骨の機能を維持するために必要なビタミンDの説明などに大きく頷きつつ、熱心にメモをとる姿が見られました。
講演後はインターバルとして、武田病院グループ・康生会クリニック健康運動指導士の今井優科長が健康体操を実演。会場の座席を利用した片脚立ち体幹運動などの様々な健康運動を披露。軽快なジョークを交えながら会場の参加者全員で健康運動を楽しく実践しました。
講演2では、金沢骨を守る会の三浦雅一代表(北陸大学理事・薬学部教授/北陸大学健康長寿総合グループグループ長)が登壇し、「どうしたら骨粗鬆症治療薬は続けられる~決して怖くない、くすり継続の重要性~」と題し、講演を行いました。
三浦代表は「日本では3分に1件のペースで大腿部頸部骨折が発生し、この大腿部頸部骨折の36%の方が元通りに歩けなくなっています」と国内の状況を紹介。そのうえで「骨粗鬆症検診の受診率は全国平均が5.4%であるのに、滋賀県は2.9%、京都府はわずか1.1%です。100人に1人しか受けていない。これは大問題ですよ」とショッキングな数値を披露しました。さらに三浦代表は、この受診率が石川県では12.5%、金沢市においては27.3%であるとし、「今日参加の皆さんは、もっと増やさなきゃだめなんだと周囲の方にどんどん言って欲しい」と努力で現状を変えていくことを強く呼びかけました。
最後は、登壇した講師や医師、栄養の専門家らが登壇し、寄せられた質問に回答する「質疑応答」が行われました。今回は治療薬や治療後の療養についての質問が多く寄せられたのが特徴的です。登壇者は一つひとつの質問に対し、「骨密度値に触れられていますが、圧迫骨折で骨が変形するとこの値が不正確になります。他の部位で図る手法もありますが、まずは相談できる医師に何でも尋ねることが重要です」と親身なアドバイスで応え、会場は暖かいムードに包まれました。