2018/10/02
9月27日「第56回 医仁会武田総合病院 特別講演会」を開催しました
■第56回 医仁会武田総合病院 特別講演会
iPS細胞を活用した呼吸器治療など最新知見に触れる
呼吸器疾患と骨粗鬆症の関連など最新の知見と、様々な症例・治療法について情報共有する第56回「特別講演会」(共催:医仁会武田総合病院、伏見医師会、第一三共株式会社)が9月27日、京都市中京区の京都ホテルオークラで開かれました。当日は、南部地域の開業医や医療従事者ら123人が出席し、熱心に意見交換を行いました。
冒頭挨拶に立った医仁会武田総合病院の森田陸司院長は、「この特別講演会は、27年余り前にスタートしたもので、今回で56回目を迎えます。長期間、続けてこられたのは医師会の先生方の暖かいご支援あってのものと厚く御礼申し上げます」と謝意を表しました。さらに、「今、当院は顔の見える連携をめざし日々努力を続けており、直接先生方にお目にかかれる大切な機会と考えています。是非、当院の医療の在り方について忌憚のないご意見を頂きたい。最後までご活発な討論をお願いします」と笑顔で語りました。
日本人に稀な「巨細胞性動脈炎」の症例検討
側頭部動脈エコーによる診断とステロイド治療が効果的
演題発表では、伏見医師会(金久医院)の淺野直子院長が座長を務められ、「左側頭部痛を主訴に受診した巨細胞性動脈炎の一例」と題し、医仁会武田総合病院総合診療科の倉石佳奈研修医が発表しました。
倉石研修医は左側頭部痛を主訴に来院した76歳女性について、頭部CT、レントゲン、心エコーでは異常所見がなかったものの、3週間以上頭痛が続き、抗生剤が無効の発熱、血沈の高値が認められるなど膠原病の存在を示唆する所見であることから「巨細胞性動脈炎」の可能性を疑ったことを説明しました。巨細胞性動脈炎は本邦では大変珍しい症例です。
側頭部動脈エコーを行なったところ、両側側頭動脈で壁肥厚が認められ、その後、頭部CT、PET-CT、生検を経て診断を確定しました。ステロイド治療を実施したところ、大変良好で、投与32日目に消失が確認されたことを倉石研修医は丁寧に説明しました。
手術前にできるだけ詳細な診断が必要
患者さんが主体的に治療を選択する医療を
続いて、伏見医師会(石原クリニック)の石原広章院長が座長を務められ、「巨大な卵巣腫瘍を合併した子宮体癌の2例」と題し、医仁会武田総合病院産婦人科の伴千秋部長が発表しました。
伴部長は冒頭、確定診断は術後の病理診断によるものと標準治療を挙げたうえで、「切ってみないことには詳しく分からないという説明では、患者さんが治療法を判断する助けにならない」と指摘。「患者さんが、病状、治療法、予後を理解したうえで主体的に治療を選択するのが理想。そのためには、手術前に出来るだけ詳しい診断が明らかになることが望ましい」と語りました。
講演で伴部長は、2つの事例をとりあげ、それぞれ理学所見、肉眼所見(画像診断)、血液検査などによる診断について詳しく解説しました。
COPD患者の約35%が骨粗鬆症
重症ほどリスクが高く胸椎骨折が多い
特別講演では、医仁会武田総合病院呼吸器内科の前川晃一副部長が座長を務め、「肺の機能から理解する多様な呼吸器疾患~COPDと骨粗鬆症を例として~」との演題で、京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学の平井豊博教授が講演しました。
平井教授は、肺胞の構造やガス交換など基礎的な説明をしたうえでCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の症例を紹介。COPDが全身に影響を与え、中でも骨粗鬆症と密接な関係があることを解説し「COPD患者の約35%が骨粗鬆症であり、重症ほどリスクが高く、胸椎骨折が多い」ことを紹介しました。
また平井教授は、iPS細胞を用いた研究にも取り組んでいることを明らかにし、「肺胞は非常に複雑であり細胞を再生させるのはまだまだ先の話。しかしながら、iPS細胞を気道上皮細胞へと分化誘導し、薬剤を評価したり、新しいバイオマーカーを開発する研究が進んでいる」と最新の知見を語りました。
伏見医師会と武田総合病院が良い関係を続け
これからも"手の温もりを感じる医療"を地域に
また、特別講演会終了後は懇親会会場へ席を移し、参加者は互いに交流を深めました。
懇親会では、武田病院グループの武田道子副理事長が挨拶。参加者、座長、演者の先生方に感謝を表し、「地元の皆さん方が健康に暮らしていただくお手伝いをすることが私たちの最終目的です。そのためには、思いやり、いたわりの心、そして"手の温もりを感じる医療"をしていかなければならないと考えております。今後とも地域の先生方から信頼され、また地域の皆さんから選んでいただけるような病院施設を目指します」と武田病院グループの在り方を強調しました。
続いて伏見医師会の辻光会長が「7月から伏見医師会の会長をさせていただいております。私も患者さんを紹介させて頂いておりますが、武田総合病院は伏見医師会にとって非常に大事な病院だと認識しています。先程、副理事長が言われた、"温もりを感じる医療"を、多くの先生方が目指されているのを感じ、喜んでいます。これからも伏見医師会と武田総合病院が良い関係でいることを願います」と語り、乾杯を唱和しました。