本日は滋賀医科大学のたすき掛けとして当院で1年間研修された上松先生にお越しいただきました。
——上松先生、先生が当院のたすき掛け研修を選んだ理由は何ですか。
まず、大学での研修とはタイプの違う病院で研修をしたいと思っていました。医仁会武田総合病院に見学に来た際に、研修医が主体的に診療にあたっている姿を見て、私もこんな風に自分の頭で考えて動ける研修医になりたいと思ったので当院を選びました。
——上松先生は当院には何回、見学に来られたのですか。
6年目の春に見学に来ました。そこで、今の2年目の先生と一緒にご飯を食べに来ました。研修医の雰囲気や仲もとてもよく、切磋琢磨されている姿を見て、当院をたすき掛けの研修先として選びました。
——先生の将来の専門領域は何ですか。
今は腎臓内科を考えています。研修を通して体液循環管理に興味を持ったこと、特に集中治療においての体液管理に悩むことが多かったので、その領域に興味も出てより深く勉強したいと思い、腎臓内科を第一候補に考えています。
——集中治療で体液管理を学んだ症例とはどんな方ですか。
総合診療科で、ペットの犬にかまれてCapnocytophaga canimorsusによる敗血症性ショックをきたした症例の診療にあたったのですが、ショックによる急性腎不全でCHDF(持続血液ろ過透析)を使っていました。その時にショックからなかなか離脱できずにノルアドレナリンと同時に急速大量補液を継続しましたが、なかなか血圧も改善しないためにCHDFによる除水が進まずに体液過剰に陥ってしまいました。
血圧が低いときにCHDFすら回すのがきつい状況になっていましたが、当院の臨床工学技師さんにもいろいろと相談に乗ってもらって体液管理をしていくうちに、体液管理の重要性を実感して、非常に興味を持つことができました。そのため、将来は腎臓内科に進みたいと考えるようになりました。
その症例を診ているときに、ありとあらゆる科にコンサルトをしていましたが、親身に相談に乗っていただける先生方多く、この病院の垣根の低さや、病院全体で研修医を育てようとしている雰囲気を感じることができ、大変勉強になりました。
——先生は他には、特に記憶に残っている症例はありましたか。
もう一例は内科学会近畿地方会で演題発表をした症例ですが、自宅で虫に刺されて右大腿部に15cmほどの発赤と発熱を主訴に、当院に来院された方を経験しました。時期は9月末でしたので、最初はツツガムシやマダニ感染症を疑っており、特に汎血球減少を伴っていたので、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)を疑ってPCR検査も出したのですが、結果としてはいずれも陰性でした。そうこうしているうちに末梢血から芽球が出てきたため白血病ではないかということになり、骨髄生検で確定診断にいたりました。
文献などを調べてみると、血液悪性疾患にり患している症例が、虫刺されにより皮膚過剰反応をきたす報告例あることに気づき、学会発表をいたしました。今回は芽球が出てきたから診断に至ることができたようになったのですが、いろいろな知識をもって鑑別診断を考えることが面白いと思うようになりました。
——大変だったとおもいますが、忙しさはどうでしたか。
科にもよりますが、忙しくない科は18時頃に帰宅して、コロナの時期だったのでおうち時間を楽しんでいましたが(笑)、総合診療科のような忙しい科では毎日血圧が落ち着かなくて、次の一手をどうしようかと毎日相談したり、自分で考えたりして、日が変わるまで働いていることもありました。その時が一番、自分が勉強というモチベーションを感じた時期でもあったので、大変でもあったのですが、その症例を経験できてよかったなと思っています。
——土日はゆっくりできましたか。
土曜日は患者さんを診に来たりしていましたが、土曜日の午後や日曜日は自分の時間にしっかりあてて、自炊を頑張ろうと思ったりして、平日分の作り置きとかをめっちゃしていました。
——すごいですね。睡眠時間はどのくらいでしたか。
もともと割と夜型なので、24時~1時ごろに寝て、朝は8時から8時半に来れるように6時間半くらいは寝ていました。寮が近くて通勤時間がすごく短くて住めるのがありがたかったです。
——女医として、勤務のしんどさはいかがでしたか。
私はもともと体育会系ではなく、それほど体力に自信がある方ではなかったのですが、当直は寝れるときには6時間眠れて、眠れないと1時間程度でしんどいこともありましたが、基本上級医の先生は仕事が終わったら帰ってっと言ってくれましたので、体力に自信のない女医さんでもやっていける環境にあったと思います。
——1年間で手技はどの程度できましたか。
CVは14~15件程度はいれていると思います。当直帯の時も、上の先生についてもらって入れることも多かったですし、その点は市中に出てきて一番良かった点かなと思っています。挿管は麻酔科での研修中は1日3件位させていただいたのは大きかったですし、麻酔科を回った後は当直中にCPAが来た時に挿管もうまくいくことができました。研修医に手技をいっぱいやらせてあげようという環境があるのがすごくありがたかったです。
——研修について、1年間を振り返ってどうでしたか。
初めて市中病院で研修を始めて、やっぱり病気だけでなく患者さんの背景を考えたり、患者さんが何を求めているのかということを身近で感じることが多かったので、症例数が多かった分、いろんな患者さんに接することができたのが良かったと思います。内科に将来進もうと思っているので、尿路感染症や肺炎など、どこの科に進んでも出会う症例をたくさんみれたので、そこも3年目以降につながる経験になったかと思いました。
——これから病院見学・就職活動を考えている学生さん、特に、たすき掛けのプログラムを考えている学生さんらに、当院でのたすき掛け研修について何かアドバイスはありますか。
1年間という半分の期間の研修ですが、内科系、外科系、救急・小児科・産婦人科をバランスよくすべて回ることができるので、市中に出て診てみたいなと思う症例を一通り見ることができたのが、まずよかったと思います。
どうしても自分の専門外になる診療科については、稀な症例を経験するよりも、頻度の高い症例を診ることが大事だと思うので、医仁会武田総合病院での研修ではそのような症例をいっぱい見れたのが良かったと思います。
それから、研修医の仲が良いのもあって、自分が救急で入院させた症例について主治医の先生方から初期対応のフィードバックを頂いたり、各診療科でどうなっているのかということをアドバイスを頂いたりできたので、より多くの症例を間接的にでも多く診れたのも当院に来てよかったと思いました。
繰り返しにはなりますが、初期研修の間は、その時しか見れない自分の専門外のことを勉強する期間だと思うのでコモンディジーズを多く診れる市中の病院で経験しておくことが大事だと思いました。特に医仁会武田総合病院の総合診療科や救急では、研修医のアセスメントを上級医がしっかり聞いてくれる環境にあると思うので、自分でしっかり考えて勉強するというモチベーションをいつも感じながら勉強することができたことが良かったです。
これから大学に戻っても上の先生の方針について学ぶだけでなく、自分でしっかり方針を考えられるようにしていきたいと思うようになりました。
——本日は大変有難うございました。先生の今後のご活躍を心より期待しておりますね。