本日は、2年間の研修を修了された提島先生に当院での研修生活についてインタビューをお伺いしたいと思います。
——まず、先生が当院で初期研修をしようと思った理由は何ですか。
見学に来た時に研修医の先生方がとても仲がよさそうで、指導熱心だったことです。指導医の先生もお話しやすく、科の垣根関係なく、教育熱心で純粋にここで学びたいと思いました。また研修医の先生方が救急の場で、初期対応から病棟に上げるまでの一連の中心にいて、ここで研修すれば力がつくと思いました。
——ありがとうございます。当院には何回、見学に来られたのですか。
1回のみです。
——そうですね。1回ではありましたが大変熱心に見学をしてくださったので、先生が見学に来た日のことを私は本当にまるで昨日のことのようによく覚えています。時が過ぎるのは早いですね。総合診療科の見学はどうでしたか。
総診はカンファレンスで研修医が患者さんのプレゼンを全部一人でしていて、すごいと思いました。自分もそのような研修医になれるのかと期待しました。また、担当医制ではあるものの、入院から退院まで、その他の業務も全てこなされており、幅広いマネージメント力も鍛えられるなといった印象でした。また上級医のサポートがしっかりされており、教育体制がしっかりしていました。
——担当患者のプレゼンは総合診療科の研修でも大変重要な部分なので、カンファレンスでは研修医の先生に何度も質問していますね。最初はしどろもどろの先生方が、回数をこなすうちに上手にできるようになりますから、学生さんの目からすると驚かれると思います。プレゼンはノウハウ的な技術面もありますが、上手なプレゼンは患者の問題点や臨床経過と対策がしっかり頭の中でまとまっていないとできません。
わかりやすく言うと、上手なプレゼンができる医師は、しっかりと患者の問題点と解決法を筋道立てて解決に結びつけていくことができますが、上手にプレゼンできない医師は頭の中で患者に対して何を行うべきかまとまっておらず、次々と生じる問題点に対して対応が遅れてしまい、適切な診療ができないと思います。
(#)日々変わりうる様々な問題点ごとに、(S)絶えず患者さんの訴えを聞いて、(O)身体所見や検査所見を評価して、(A)原因や対処法を考察して、(P)実践していくスキルを磨くために、上手なプレゼンの技術は臨床の現場では非常に重要なことです。
ところで提島先生は、小児科を専門として選ばれたのですがなぜですか?
全身管理、また幅広い分野を生涯学びたいからというのと、純粋に子供つまり“将来”を救いたいと思っているからです。これにつきますね。
実際に研修していて、循環器科にぶれたり、脳外科にぶれたりしていましたが、初志貫徹でした。
——なるほど。“将来”を救っていくって、夢がありますね。先生らしいとおもいます。それに先生は楽しくて話しやすい性格なので、きっと子供さんからもモテると思いますよ。
2年間の当院での臨床研修の経験で、将来の夢に役に立ちそうなことはありましたか。
小児科を先行するのに、内科が強い病院は?と疑問に思う方もいるかもしれませんが、私自身、1人の医師として子供だけではなく、大人も診れる医師になりたいと思ってました。また、当院で学んだ知識は小児科の分野でも必ず活かせることができると思っております。役に立つというよりは医師としての基盤を作っていただいたという印象です。
——そうですね。小児科は何でも診ないといけない大人の総合診療科みたいなものですし、内科的な考え方は何科になろうとも臨床医学の基盤みたいなもので共通していますね。
特に一番忙しかった総合診療科での研修中は、どのような生活でしたか。
1年目は1~2月に総診を回りましたが、最初は抗生剤の名前もわからず、輸液も何をオーダーしていいかわからず、当たり前のことができなかったので大変でしたが、土井先生をはじめとしてみなさんに丁寧に教えていただいたので、できるようになったかと思います。
——土井部長は、一人一人の研修医のそばで熱心に時間を取って指導してくださいますからね。研修医の先生方の信頼は絶大ですね。
2年目で総合診療科を回ってできるようになったと思うことはありますか。
基本的なことはできるようになりましたし、カンファレンスでは上級医の先生方と自分の意見を持ちながら、1年目の時と比べればディスカッションができるようになったと思っております。
——2年目になると指導医とのディスカッションも的確でしたし、1年目の先生にもしっかりと指導してくれましたね。立派に成長されました。
総診の時も休日は休めていましたか。
患者さんに会いに基本的には病院には行っておりましたが、昼頃には帰り、プライベートも充実してました。おかげさまで、結婚もできましたし(笑)。重症患者を持つと病院にいる時間は増えますが、その1分1分が自分の財産だったと考えています。上級医の先生も一緒に病院にいたので頼もしかったです。
——本当におめでとうございます。当院では、研修中に結婚される研修医の先生が多いですね。新婚旅行のお土産もありがとうございました(笑)。専攻医で結婚される方が多いですし、特に女医さんが結婚・出産されることがとても多いですよね。それだけワークライフバンスがしっかりしていると思います。
2年間の研修中に、先生が特に記憶に残っている症例はありますか。
2年目救急当直中に頻呼吸・不穏を主訴に受診された患者がいて、その方はDKAでした。一瞬診断に迷いましたが、初期対応や検査を進めていくと診断にたどり着きました。研修医1年目と対応していましたが、2人とも初めてみた症例でしたが、毎週開催している救急症例検討会に救われたと口を揃えました。その後のICU管理も上級医の先生と血液ガスを一晩中チェックしながら、バイタルや血糖管理などこまめに調整し、大変勉強になりましたし、自信にもなりました。
それ以外にも敗血症や重度のCO2ナルコーシスなど人工呼吸器管理を含め記憶に残ります。そういった基礎は日頃の一般病棟での患者さんがいてのことだなぁと研修が終わるにあたり、気づきました。重症患者が記憶には残りますが、日々の患者さんも十人十色で面白いですね。
——DKAやHHSでICUに入るような症例は年間平均5~6人くらいはいるような気がしますが、先生方には初めてだったんですね。救急症例検討会では、毎週、いろんな症例の鑑別と治療法を勉強していますからね。自分では経験したことがない、他の研修医の先生が見た症例でも詳しく学ぶことができますので、力になりますよね。病院内の面白い症例はみんなここに集まってきますし、年間50回程度、2年間で100回くらい開催していますから、経験を積むうえで大変有用だと思っています。
それに、発表者は毎回学会発表のようにスライドを作るので、年間8回程度だとおもいますが、学会発表の練習にもなりますよね。私が2009年に当院に赴任してからずっと開催していますが、年々レベルが上がってきていますよ。
ところで、提島先生はICU症例はどれくらい持ちましたか?
20例くらいは持ちましたね。心臓血管外科なども回りました。
——それはかなりの数ですね。心臓血管外科は術後はICU管理がかなり続くでしょうからね。勉強になっていると思います。ところで、先生は学会発表などはされましたか。
神経内科の上級医と一緒に内科地方会で発表しました。Tolsa-Hunt症候群の一例で自分も勉強になりました。また、神経内科では予演会が学会発表の2ヶ月前の週2回合計10回弱あり、しこたま叩いてくれました。そのおかげで、綺麗なスライドの作り方、発表の仕方、言葉のいい回し、質疑応答への対応など、勉強になりました。
本番は、全く緊張せず、質疑応答も問題なかったです。最後の予演会が一番緊張しました(笑)。
——それはいい経験が出来ましたね。当院では学会発表奨励制度があって、一回の学会発表で5万円の奨励金が出ますよね(笑)。1年目の時から学会発表を経験される先生も何人もおられますし、最低1回の学会発表は研修修了の要件となっていますが、発表は専攻医、専門医となる上でも大事ですからね。
いろいろあったと思いますが、先生にとって当院で学んだ2年間の研修はどうでしたか。
一番はすごく楽しく2年間過ごせたというのがあります。また幅広く取り組ませていただける研修で、症例の数も豊富でしたので、自分の長所・短所が分かり、医師として良いスタートが切れたと考えています。
——当院の研修の最大の特徴は、研修医の先生方が本当に生き生きと研修をしていらっしゃることだと思いますよ。研修医の先生方の仲が、本当に良いところがいいですね。当院の研修医の先生方、そして指導医の先生方も距離がとても近くて、なんでも言い合えるようないいチームワークがありますよね。若手の医師も、部長級の医師も、研修修了式に何人も集まって研修医の先生方の修了を応援してくださる。そんな暖かい環境で研修ができるのが当院の最大の魅力だと思っています。
最後になりますが、これから病院見学・就職活動を考えている学生さんらに、研修病院選びのポイントについて何かアドバイスはありますか。
症例数や救急搬送数、また有名病院・医師などに目が行きがちだと思います。実際僕自身もそうでした。そういった部分も大事かもしれませんが、研修生活を終え、重要だと思ったことは、ある程度の責任感を持たせてもらいながら、日々の研修を歩める病院が良いと思います。
責任感がなければ、上級医が引いたレールでの診療になりますし、責任感がありすぎると精神的にも体力的にもつらくなり研修としては無意味なものになると思います。そこの見分け方は難しいと思いますが、考える研修先の研修医がどのような研修を歩んでいるかが大事かなと思います。
また、自分自身の一つ上の学年の雰囲気が良ければ、研修も充実するかなと思います。皆さん、色々迷ってください!
——ありがとうございました。