今日は、岡山大学出身研修医2年目の松本彩先生にお越しいただきました。
——先生が当院を知った時期やきっかけ、また、見学に来られたのは何年生のときでしたか?
病院を知ったきっかけは、見学に来た同級生から勧められたからです。見学に行った時期は5年生の10月頃だと思います。
——ありがとうございます。当院を研修先病院に選んだ理由は何でしたか。
見学での印象が良かったからです。他の病院と比べて圧倒的に研修医が生き生きとしていて見学が楽しかったです。例えば、研修医室に来ていろいろな研修医の先生とお話をする機会がありましたが、常に笑いが絶えなかったです。
それでいて、総合診療科を回っているときに指導医の先生が研修医の先生をきちんと叱っているところを見て、きちんと指導してもらえているということも感じたからこの病院にしようと決めました。
——当院の研修医は本当に仲良くて、楽しそうに研修されていますね。それでいて、しっかりとした研修・指導も行なっています。見学の際にその点を感じていただけて、私たちも大変うれしくと思います。
当院の特徴について、先生の感じたところを教えてください。また、力を入れている科・強い科はどの科でしょうか。また、その科の特徴や魅力はどのようなところでしょうか?
初期研修として大事な救急と総合診療科に特に力を入れていると思います。総診では一人の先生に付いて教わるのではなく、全員の先生が担当医になることから幅広くいろいろなことを学べますし、一つの問題点に対してもそれぞれの先生からいろいろな考え方や対応の仕方が学べます。
また、総診では看護師さんからもファーストコールで呼んでもらえますし、救急は一人のスタッフとして働くのでいろいろと実践させてもらえます。
また、500床という病床数の割に研修医が1学年6人と少なくとにかく症例数が多いですし、研修医の教育をする病院ということが病院全体に根付いていて、指導医もスタッフも研修医の判断を待ってくれるのでしっかり考えることもできます。
それに看護師さんなどのコメディカルが非常に優秀なので、いろいろと教えてもらえるし、学ぶことがとても多いです。
——わかりやすくご説明いただいてありがとうございます。院内の雰囲気はどのような感じでしょうか。
科としての垣根が無くて、ちょっとしたことでも違う科の先生に相談しやすいです。また他の病院に比べて、飲み会などの行事が多くて雰囲気が明るいです。
——やはり雰囲気が明るいことはいいですね。指導医の先生方が企画する歓迎会や納涼会、忘年会などの他にも、若手医師の会で企画する研修慰労会も年2~3回行っていますね。いろいろな先生が研修医の先生のことを気遣っていますね。また、先生がおっしゃるように病院の横通しのつながりもスムーズで、研修の現場でも研修医の先生方を積極的に参加させていこうという雰囲気が病院全体にあると感じています。
それでは研修医室の環境について教えていただけますか。
1,2年目が全員一緒の研修医室があり、本なども買ってもらえるし、カルテをかけるパソコンが4台もあるので非常に充実しています。
——そうですね。研修医向けのカンファレンスはすべて研修医室で開催しているので、参加もしやすいですね。他にもシミュレーター研修なども研修医室で開催することも多いですね。
では、当院の研修プログラムの特徴について教えてください。また、特徴のある研修を行っている科や、すでにまわった科の中で印象に残っている科はありますか?
どの科を回っても同期の研修医が1人しかいないので、手技をいろいろやらせてもらえます。具体的には1回見ると次はやってねというくらいいろいろさせてもらえます。呼吸器外科などを回っていなくても、救急で気胸の患者さんが来たら呼吸器外科の先生が研修医室に来て誰か胸腔穿刺やりたい人はいないかって声をかけてくれます。
——手技や急変対応などは研修医を積極的に参加させようとしていますね。回っていない診療科からも声をかけてもらえることも嬉しいですね。手技はどの程度経験されましたか。
私が初期研修の1年目で経験した数で言うと、挿管は50例以上、CV挿入は20例以上、A-Lineも20例以上、胸腔ドレナージ留置10例、胸水穿刺のみは15例以上、腹水穿刺15例以上、腰椎穿刺は10回前後、積極的なCPA対応20例程度、胃カメラも4例程度触らせてもらえましたし、気管支鏡も4例程度させていただきました。
特に総合診療科に入院中の採血上の炎症所見が全く上がらない髄膜炎の患者さんで、途中発熱が再燃したこともあって治療効果判定のために腰椎穿刺を4回くらい穿刺したときに、次第に髄液がきれいになっていく経過を見れたことが大変印象的で記憶に残っています。患者さんにも私の腰椎穿刺は全然痛くないと言ってくださって嬉しく思いました。
——それは嬉しいですね。他に当院で力を入れていること、他の病院では経験できないようなこと、特徴的な取り組みなどはありますか?
毎週水曜日に行われている救急症例検討会では、『Dr. G』的な鑑別診断のためのトレーニングをしています。総合診療科から開業された先生やいろいろな科の先生方が来て下さるので、発表している側もすごく勉強になっています。
救急症例検討会はほかの研修医が当直で見た症例を学べるので、自分で当直をしていない症例についても賢くなれます。
意識障害の症例について血ガスや血糖値を早くとることが大事だと学び、その後の当直で実際に意識障害の救急症例が来た時に血ガスを早く取り、アルコール性ケトアシドーシスを診断して迅速に対応することができました。
——研修医に最も人気のあるカンファレンスですよね。毎回、問診での注意点、診察の見落としがないかをしっかり確認し、鑑別診断を20-30程度考えて可能性が高い疾患、見落としてはいけない疾患の観点で絞り込み、必要な検査を考えて検査結果を検討していきます。年間約50回、2年間で約100回も開催しますので、しっかりとした実力が涵養されていると思います。院内の興味深い症例がすべて集まる会と言ってもいいので、私たち指導医にも大変勉強になります。
では、先生が印象に残っている研修での出来事、症例があれば教えてください。
やはり、自分で患者さんから情報を引き出し、治療方針を考えるところまでさせてもらった総合診療科での患者さんは、今でも名前を覚えているほど記憶に残っています。特に途中ICU管理もしたアルコール性ケトアシドーシスの患者さんは、京都の学会や院内カンファレンスなどでも発表させていただき、特に印象に残っています。
他にも40代半ばの女性で下腹部痛を主訴として来た患者さんが、現在生理中で妊娠は絶対にないと言っていましたが、実は子宮外妊娠だったということがあり、「女性を見たら妊娠を疑え」という格言を改めて思い直しました。
——AKAの患者さんはアシドーシスが強くてかなり重篤な方でしたが、ICU管理もしっかりできていましたね。総合診療科では研修医の主体性が重視されていますので、研修2年目にもなると重症例のICU管理をしたり、退院調整のために何度もICをしてもらったりと今後どの診療科に行くにしても必要な力がしっかりとつくと思います。また、救急症例検討会では、50代の子宮外妊娠という症例もありましたね。
先生が研修で感じた楽しいこと・有意義なことや、苦労したこと・大変なことはありますか?
全国いろいろなところから研修医が集まるので、みんなでわいわい誕生日会をしたり、ユニバーサルスタジオに行ったり、滝(モネの池)を見に行ったり、仲良く楽しんでいます。大変なことといえば、総合診療科が患者さんをたくさん持てる分大変でした。私はマックス20人前後でそのときはちょっときつかったです。
——それは大変お疲れさまでした(笑)。総合診療科の受け持ち症例数は10~20名かと思いますが、20名はさすがに大変ですよね。
お誕生日会などは、毎年恒例でやっていますね。研修修了旅行も写真で見せてもらっていますが、同期の先生方のつながりの深さを感じています。
——当院の指導体制について具体的に教えてください。
基本的に循環器内科以外の科はすべて全員の先生から教えてもらえる体制になっています。循環器はこの先生につくということが一応決められていますが、勉強になる症例があれば気さくに声をかけてもらえて一緒にもてます。
——ありがとうございます。当院の当直についても詳しく教えてください。
当直スタート時期は1年目ゴールデンウィーク明けからです。当直の基本時間帯は午後5時半~から翌朝9時までです。
当直体制は内科・外科・循環器内科・脳神経外科・小児科・産婦人科の上級医6名、研修医は1年目1名、2年目1名の2名の体制です。当直頻度は月5~6回です。
当直時は風邪やインフルエンザなどのWalk inの軽症例は研修医が自分で見たりしますが、検査が必要な症例はすべて指導医が確認してくれます。救急症例は常に指導医が側にいてくれて、常にフィードバックしてくれます。
——少し補足すると、日当直の研修医1名あたりの月平均回数は5.3回ですね。だいたい週1回の当直と日祝直が月1回くらいという感じですね。連休が続いたり、研修医が外の病院を回って人数が減るときは、月6.0回以上の当直はしないでよい日を作って調整しています。当直に入ってほしい日のカレンダー表を研修医の先生に前の月にお渡しして、後は研修医の先生方が話し合って当直日を決めていますので、融通が利きやすいですね。毎月かなり盛り上がって決めていますね(笑)。
勉強会や講演会、カンファレンスなどについても教えてください。
総合診療科の先生や各診療科の先生が集まって研修医が症例発表と司会をする救急症例検討会、また研修医が発表するEPOCレポートセミナーや指導医が講演するモーニングセミナーは毎週1回1時間で行われています。
各診療科の先生方が持ち回りで発表する院内症例検討会と研修医が病理や各診療科の先生方に指導を受けながら発表する臨床病理検討会は毎月1回程度開催されています。ローテーション中の各科カンファレンスは週1-3回程度はそれぞれ行われています。
また年2回ですが、京都医療センターの研修医と合同でそれぞれの病院の研修医が発表する伏見総合診療臨床カンファレンスという症例検討会を伏見医師会の主催で行っていますし、他にも院外特別講演会が年2回、開業医の先生方や特別講師をお招きして行われています。
——ありがとうございます。ところで先生は将来どの診療科に進みたいと考えていますか?また、目指す医師像などはありますか。
将来の進路について初期研修を始めるまでは内科かマイナー科で考えていたのですが、手技をいろいろな科でさせてもらえて、手技が自分に向いているかもしれないと思うようになり、今(2年目5月時点)は外科系に進みたいと思うようになりました。
この病院でなければそこまで手技の経験させてもらうこともできなかったと思いますので、すごくよかったと思います。目指す医師像を語るには未熟者ですが、今はとりあえず上の先生から全て吸収するつもりで頑張っています!
——ぜひ頑張ってください。最後にご自身の大学時代を振り返りながら、研修病院の選び方や学生時代にやっておくべきことなど、医学生へのメッセージをお願いします。
私は研修病院を選ぶにあたって、研修医室が独立していることと、全部の科がそろっていることは必須条件だと思います。そのうえで、あとはその人次第のところがあるので、自分が実際に見学に行ってこの病院が楽しいとか雰囲気が合うなと思うところに行くことが大事だと思います。
最後に、時間があるのは学生のうちで医者になるとまとまって休みが取れなくなるので、学生時代に海外など時間がかかるようなところに行くことを強くお勧めします。
——ありがとうございました。