東 義人
- センター長
泌尿器科は腎臓、膀胱を中心とした尿路、精巣を中心とした性器の疾患に対する病気に対応する科です。当科では、尿路性器の様々な疾患に対して、京都市南部地域の中核病院として、そのニーズに応えるべく、先進的な医療を提供しております。一方で、医療の基本として、患者さんの意思決定が容易となるように懇切丁寧な説明も心がけております。
当科の特徴として、負担の少ない治療を常に目指しており、特に結石、悪性腫瘍、尿路感染症、機能温存治療(尿失禁、排尿障害、小児泌尿器科)の4本柱に力を入れております。一方で、地域の特性として80歳以上の高齢者が多いことを鑑み、超高齢者への泌尿器治療にも積極的に取り組んでおります。
対象疾患 | 導入治療法 | |
---|---|---|
腫瘍 |
副腎腫瘍、腎癌、腎盂尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、他 |
ロボット手術、腹腔鏡手術、 経尿道的内視鏡下切除(TUR-BTなど)、化学療法 他 |
尿路結石 |
腎結石、尿管結石、膀胱結石 |
体外衝撃波結石破砕術(ESWL)、 経尿道的結石破砕術(TUL)、 経皮的経尿道的同時破砕術(ECIRS)、薬物療法(結石排出療法) 他 |
尿路感染症 |
腎盂腎炎、膀胱炎、前立腺炎、尿道炎、精巣上体炎、他 |
尿路ドレナージ(腎ろう、尿管カテーテル留置、尿道カテーテル留置)、抗生剤治療 他 |
排尿障害 |
腹圧性尿失禁、前立腺肥大症、 神経因性膀胱、他 |
人工尿道括約筋(AMS800)埋込術、経尿道的レーザー前立腺核出術(HoLEP)、経尿道的前立腺水蒸気治療(WAVE)、間欠的自己導尿 薬物療法 他 |
小児泌尿器科 |
停留精巣、先天性水腎症、 膀胱尿管逆流症、他 |
精巣固定術、腎盂形成術(ロボット手術)、尿管膀胱新吻合術(腹腔鏡手術) 他 |
専門:泌尿器腫瘍、尿路結石、排尿障害、小児泌尿器科
資格:泌尿器科学会 専門医/指導医、泌尿器内視鏡学会 腹腔鏡技術認定医、
ロボット支援手術プロクター、がん治療認定医機構 がん治療認定医、小児泌尿器科学会 認定医
外来スケジュール:月曜日~土曜日に一般診療(2診体制)
手術日:月、水、金曜日の週3日。内視鏡手術からロボット手術まで施行
体外衝撃波結石破砕術(ESWL): 結石に対する、主に外来手術治療。月、水、木、土の週4日。必要に応じて随時治療可能
泌尿器科領域の主要疾患のうち、代表的な尿路結石、悪性腫瘍、尿路感染症、排尿障害(前立腺肥大症、骨盤臓器脱)に対し、通院・入院に限らず精力的に取り組んでいます。また当院の特徴として、尿路結石、悪性腫瘍では80歳以上の高齢者が多く、高齢者に対する手術も必要に応じて積極的に施行しています。
結石は「開腹して取り出す」治療から、負担の少ない「砕く」手術となっております。当科は、「砕く」治療の先駆けとして、体外衝撃波砕石装置を1985年西日本で最初に導入しました。その後も、内視鏡治療、負担の少ない「取り出す」手術である腹腔鏡手術と先進的手術を導入し、現在でも年間500例を超える手術を行っております。
悪性腫瘍に対しては、現在は薬物療法による腫瘍縮小と負担の少ない手術による切除の2本柱が主流です。薬物療法としては新たな薬剤の導入を積極的に進め、手術としては負担の少ない腹腔鏡手術やロボット手術を積極的に行い、できるだけ早期の社会復帰を図っております。一方で、病気の進行した患者さんに対しては、緩和チームといった多職種によるチーム医療で幅広い患者さんのニーズに対応しております。
結石や前立腺肥大により尿路の閉塞が起こり、尿が流れずに淀んで感染を起こすケースがあります。高齢者に多く、尿路ドレナージとして腎や膀胱に管を挿入し、尿が流れるようにすることが必要です。緊急性のある疾患が多く、地域の病院から当院患者サポートセンターに連絡をいただく体制を作り、救急部、看護部と連携しながら、迅速な治療を行っております。
泌尿器科で扱う尿路、性器は、それぞれ「尿を出す」「性機能を担う」機能的臓器です。これらの臓器の機能が障害されると、日常生活に支障を来すことになります。当科では通常手術で機能温存に取り組むとともに、尿失禁、排尿障害、小児泌尿器科疾患に対して積極的に機能温存治療に取り組んでおります。
若手医師教育
京都大学泌尿器科の関連病院として、同じプログラムでの一貫性のある指導を施行。
学会発表、論文作成を通じて、自ら考える力を鍛錬。
治療、手技教育
問題症例、手術症例カンファレンス(週2回):治療方針の統一を図る。
ビデオカンファレンス(週1回):手術手技を全員で確認し、手順の標準化を徹底。
臨床研究
医療の波は「患者負担を減らす」ことから進化し、「患者自身の機能を温存する」ことに向いています。高度な手技が可能であるロボット手術が可能となった現在、十分な切除に加えてさらなる機能温存を図ることを目指して参ります。
我々は、患者さんのニーズに答えながらも、医療のプロとして必要な治療方針を提示し、それが実現可能な技術を常に身につけておくことが、医療者としての責務と考えています。個々人が研鑽を積みつつ、一方で共通認識を持つチームとして誰もが同じ質の医療を提供できるように、今後も励んで参ります。
(文責:泌尿器科 部長 今村 正明 2024年10月3日)
喜多 芳彦
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