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診療科・部門

骨粗鬆症外来

概要

医仁会 武田総合病院 名誉院長 森田 陸司

医仁会 武田総合病院 名誉院長

森田 陸司

国立大学法人 滋賀医科大学 名誉教授
公益財団法人 骨粗鬆症財団 監事
認定NPO法人 京滋骨を守る会 前理事長

骨粗鬆症を専門とする医師が、骨粗鬆症の診断・治療を行い、さらには運動や栄養など幅広く骨折予防のための生活指導を行う専門外来です。

骨粗鬆症の治療は長期の継続が重要です。当外来では、患者さんの声に耳を傾け、生活スタイルやその方の背景に合わせ、最適な治療と骨折予防のための生活指導を心掛けています。

外来診療表

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骨粗鬆症とは

骨粗鬆症のイメージ

骨粗鬆症のイメージ

骨粗鬆症は、骨の量が減り、脆(もろ)くなって全身のどの骨も折れやすくなっている状態をさします。骨粗鬆症それ自体は、痛みなど自覚症状を発するものではありませんが、骨折を引き起こすことが大きな問題なのです。

骨折の連鎖、寝たきりについて

令和3年高齢社会白書より

令和3年高齢社会白書より

骨粗鬆症は「沈黙の疾患」と言われています。骨量減少だけでは痛み等の臨床症状はありませんが、突然に「骨折」を来たすからです。骨折すれば、運動機能、生活機能が著しく障害され、寝たきりの大きな原因ともなります。実は、65歳以上高齢者が要介護となる要因の12.5%は「骨折・転倒」なのです。

そしてさらに大きな問題は、一度、骨折が生ずれば、次の新たな骨折リスクが高まり、骨折を繰り返す「骨折の連鎖」が始まる事です。

骨粗鬆症の骨折は、本人だけでなく、家族や周囲に負担を掛けますので、骨粗鬆症の予防、早期発見、早期治療がとても大切です。「自分だけは、まだ大丈夫」と考えずに、一度骨密度を測ることをお勧めします。

骨密度の変化

骨密度の変化

実際に骨の量(骨密度)を測ってみますと、骨の量は成長期に急速に増加し、男女とも20歳前後で最高値に達します。その人の人生の一番多い骨量と言う意味で「最大骨量」と呼ばれています。

以後、しばらく、その値を保ちますが、女性では閉経を境に急激な骨減少が生じ、その結果、60歳では正常若年者の平均骨量の80%程度に減り、80歳では70%と約半数が骨粗鬆症治療域に到達する事になります。

男性の最大骨量は女性より高いものの、加齢と共に、徐々に減少し、ことに60歳代の後半以降、減少速度が大きくなります。

最大骨量と骨粗鬆症予防について

骨粗鬆症の予防としては、成長期の「最大骨量」(骨の貯金)を如何に高めるか、そして、中高年期の骨減少を如何に喰い止めるかが、肝要となります。「最大骨量」を10%高めれば、高齢での骨粗鬆症の発症を10年遅らせることになります。

これまでにご自分の骨の量を測ったことのない方は、是非、測ってみて下さい。自分の骨量がどの位あるのかを知っておくことが骨粗鬆症対策の第一歩です。そして、骨粗鬆症である事が分かりましたら、躊躇する事無く薬物療法を始めてください。

骨粗鬆症 診断と治療の流れ

骨粗鬆症外来では、「身体所見」「骨量測定」「画像診断」や「血液検査」など総合的に骨粗鬆症の診断をしています。
骨粗鬆症と診断されると、薬物治療が開始されます。薬の効果は、骨密度と骨代謝マーカー(血液検査)で判定します。

現在の指針では、脊椎や大腿骨近位部に骨折があれば、骨量の如何に関わらず直ちに骨粗鬆症の薬物治療を開始する事が勧められています。これにより、次なる骨折リスクを半分に減らすことができますが、折角治療を始めても、約半数もの多くの方が途中で止めてしまうのが大きな問題となっています。根気のよい長期の治療継続が必要です。途中で止めてしまっては何にもなりません。

先ず、骨密度を測って、骨折リスクが高ければ、躊躇する事なく薬物治療を開始し、その後、長期間の治療を継続する努力が大切です。

診断と治療の流れ(大まかなイメージ)

  • 1

    医療面接・身体診察・画像診断・血液尿検査

  • 2

    骨評価(骨密度測定・脊椎エックス線)

  • 3

    鑑別診断(他の疾患の除外)

  • 4

    原発性骨粗鬆症と診断

  • 5

    治療開始(薬物治療、運動・栄養など生活指導)

  • 6

    骨密度、骨代謝マーカー(血液検査)で効果を判定

骨粗鬆症の鑑別診断

原発性骨粗鬆症かどうかを鑑別します。具体的には、①続発性骨粗鬆症を含む低骨量を示す疾患、②腰背痛をきたす疾患、③椎体骨折をきたす疾患、を鑑別し「原発性骨粗鬆症」の診断を行います。

低骨量を示す疾患

原発性骨粗鬆症
  • 閉経後骨粗鬆症
  • 男性骨粗鬆症
  • 特発性骨粗鬆症
その他の疾患
  • 各種の骨軟化症
  • 悪性腫瘍の骨転移
  • 多発性骨髄腫
  • 繊維性骨異形成症
  • 脊椎カリエス
  • 化膿性脊椎炎
  • その他
続発性骨粗鬆症

内分泌性

  • 副甲状腺機能亢進症
  • 甲状腺機能亢進症
  • 性腺機能不全
  • クッシング症候群

不動性

  • 全身性(臥床安静、対麻痺)
  • 局所性(骨折後など)

先天性

  • 骨形成不全
  • マルファン症候群

栄養性

  • 吸収不良症候群
  • 胃切除後
  • 神経性やせ症
  • ビタミンAまたはD過剰
  • ビタミンC欠乏症

薬物

  • ステロイド薬内服(GIO)
  • 性ホルモン低下療法
  • SSRI
  • その他薬物(ワルファリン、メトトレキサート、ヘパリン等)

その他

  • 関節リウマチ
  • 糖尿病
  • 慢性腎臓病 (CKD)
  • 肝疾患
  • アルコール依存症

骨代謝マーカー

骨代謝マーカー

成熟した骨では、常に、古い骨や傷ついた骨を取り除いて、新しい骨に置き換えています(リモデリング)。これによって、骨は常に新しい丈夫な骨であり続けるのです。古い骨を取り除くことを骨吸収(担当は破骨細胞)、新しい骨を作ることを骨形成(担当は骨芽細胞)と呼ばれます。

正常では、壊された骨の量と、新たにつくられた骨の量は、全く等しいのです(カップリング)。骨粗鬆症はカップリングの異常で、骨が減っていくのです。

リモデリングに伴って、骨芽細胞、破骨細胞や骨から放出された物質が骨代謝マーカーです。これを測ることによって、骨形成、骨吸収のスピードと病態が分かり、治療薬選択の手がかりとなり、また治療効果の判定にも役立ちます。

骨密度測定法

骨密度測定法

二重 X 線吸収法:DXA(Dual energy X-ray absorptiometry)

骨の強度の70%は骨の量に基づくものですから、骨密度を測ることは骨折リスクを知る重要な手がかりです。

骨量測定法には多種ありますが、現在、私共が使っている二重X 腺吸収法(DXA)は、最も標準的な方法です。測定部位は、腰椎と大腿骨近位部などで、この部の骨密度が骨粗鬆症の診断に使われます。

原発性骨粗鬆症の診断基準は

原発性骨粗鬆症 若年成人平均値

骨量を指標とした原発性骨粗鬆症の診断基準について

原発性骨粗鬆症の診断は、低骨量をきたす骨粗鬆症以外の疾患、または続発性骨粗鬆症の原因を認めないことを前提とし、次の判断基準を適用して行います。

脆弱性骨折あり

  1. 椎体または大腿骨近位部骨折あり
  2. その他の脆弱性骨折があり、骨密度がYAMの80%未満の場合

脆弱性骨折なし

骨密度がYAMの70%未満または-2.5SD以下の場合

※YAM: 若年成人平均値(腰椎では 20〜44歳、大腿骨近位部では 20~29歳)

骨粗鬆症の治療薬の選択

薬剤には、それぞれ異なった特徴がありますので、病態、骨折歴、薬歴、共存症、既往症、生活習慣などを勘案し、本人、家族とよく相談のうえ、治療方法の決定をしています。

薬剤名 骨吸収抑制 骨形成促進 骨代謝改善
ビスフォスフォネート薬
抗ランクル抗体薬
抗スクレロスチン抗体薬
副甲状腺ホルモン薬
活性型ビタミンD3薬
ビタミンK2薬
選択的エストロゲン受容体調整薬
エストロゲン製剤
カルシウム製剤
カルシトニン製剤

主な骨粗鬆症治療薬

骨吸収抑制薬(骨を壊す働きを抑制する薬剤)

デノスマブ(抗RANKL抗体薬)、ビスフォスフォネート(BP)、選択的エストロゲン受容体調整薬(SERM)、カルシトニン製剤

骨形成促進薬(骨を作る働きを高める薬剤)

ロモソズマブ(抗スクレロスチン抗体薬)、副甲状腺ホルモン関連薬(テリパラチド、アバロパラチド)

骨代謝改善薬

活性型ビタミンD3薬、カルシウム薬

お薬を続ける期間について

骨粗鬆症外来イメージ

薬物治療で骨折リスクは半分以下に!
何より治療の継続が重要です

効果的な薬物治療により、骨折リスクは半分以下に減らせることが知られています。
ところが骨粗鬆症と診断され、お薬を飲むことを始めた患者さんのうち、およそ45%もの方が1年以内に辞めてしまっています。その大きな理由は、お薬の効果をすぐに実感しにくいこととされています。

お薬が効果を発揮し、骨密度を高めるためには時間がかかります。数値として効果を感じる検査も、半年や1年と期間が空くこともありますが、それでも骨折・骨折の連鎖を予防するためには、お薬を飲み続けることが重要です。

骨粗鬆症をきたしやすい方について

骨粗鬆症の骨折をきたす要因は「骨折リスク因子」と言われています。その主なるものは、先ず、骨量減少です。骨量(骨密度)が低下する程、骨折し易くなり、骨密度が10%下がるとリスクは約2倍高くなります。是非、ご自分の骨密度を測って、ご自分の骨折リスクを調べておいてください。

次に、既往骨折のある方です。一回、骨折した方は、2回、3回と骨折を繰り返し易いのです。しかも、その骨折後の2年間が最も危険です。これは「差し迫った骨折リスク」と呼ばれているもので、特に注意が必要です。直ちに、きちんとした検査を受け、骨折予防の治療を行ってください。

その他、現在使用している薬物では、ステロイド、抗痙攣剤、抗ホルモン剤、睡眠薬などを常用している方は注意が必要です。

また共存疾患としては、うつ状態、糖尿病、閉塞性肺疾患、慢性腎蔵病、関節リウマチ、胃切除後などが、骨折リスクを高めます。
その他の骨折リスク因子には、生活習慣(喫煙、アルコール過剰摂取、運動不足、栄養不足、日光を浴びる機会が少ない)、やせ、早期閉経、転倒しやすさ、社会的孤立、など様々ありますが、これらの危険因子のうち、避けることが出来るものは、極力避ける事が第一です。

骨折の連鎖を断つチーム医療 FLS

STOP AT ONE
Make Your First Break Your Last

二次骨折防止のために多職種が連携して取り組むFLS(Fracture Liaison Service:)が2000年頃から英国・米国などで行われるようになりました。これによって骨粗鬆症治療率・治療継続率が向上し、再骨折率が低下しています。

初発の骨折・骨折の連鎖を断つOLS

日本では骨粗鬆症学会が、医師及び多職種のメディカルスタッフが連携して骨粗鬆症の予防と骨折防止に取り組むOLS(Osteoporosis LiaisonService:骨粗鬆症リエゾンサービス)を推進しており、2012年に認定資格 「骨粗鬆症マネージャー」のレクチャーコースを開始しました。当院においても認定「骨粗鬆症マネージャー」が新たな骨折の防止、また最初の脆弱性骨折の予防に取り組んでいます。

名誉院長 森田から皆様へ

名誉院長 森田から皆様へ

先ずはご自身の骨量を測りましょう!

骨粗鬆症は骨が脆くなって骨折する病期です。超高齢化社会の到来と共に骨粗鬆症に対する関心は高まりましたが、「私は未だ大丈夫」と他人事のように考えている方も多いのではないでしょうか。

骨粗鬆症は「沈黙の疾患」を言われています。症状が無いために、ついつい放っておきますと、突然に骨折を来して、それが原因で介護を受けることになりかねません。また一度骨折が起こると、次々に骨折を繰り返す「骨折の連鎖」が始まります。とりわけ1~2年以内に効率に次の骨折が起こります。

高齢女性の約40%は骨粗鬆症と考えられていますが、そのうち実際に治療を受けられているのは、僅か20%に過ぎません。大多数の方は、治療を受けずに放置されていることになります。 先ず、骨密度を測って、低ければ、躊躇(ちゅうちょ)することなく薬物治療を受けて下さい。薬物療法により骨折リスクは確実に下がります。

武田総合病院の骨粗鬆症外来は、脳神経外科、整形外科、その他の専門家集団と密接な連携・協力のもとに集約的な診療を行っています。骨粗鬆症への理解を深めて骨折の防止に努めることが、健康寿命を延ばすために極めて大切です。

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