臨床工学科
概要
臨床工学技士は生命維持管理装置など医療機器の操作、及び保守点検を行う医療機器のスペシャリストです。医療機器の安全確保と有効性維持の担い手としてチーム医療に貢献しています。
当院に臨床工学科が組織されたのは1992年で、養成校を卒業した新卒の臨床工学技士2名からのスタートでした。現在では33名の大所帯となり、医療機器管理を中心に多岐にわたり業務を行っています。業務は武田病院グループの中でも一番広範囲に及ぶため、MEセンター・血液浄化・手術室と部門ごとに役割を分担しています。部門同士は互いに連携して当直制や待機制をとり、24時間365日の対応を可能にしています。
認定資格取得
臨床ME専門認定士 | 1名 |
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臨床実習指導者講習会修了 | 1名 |
臨床検査技師 | 2名 |
3学会合同呼吸療法認定士 | 3名 |
消化器内視鏡技師 | 3名 |
透析技術認定士 | 5名 |
血漿交換療法認定技士 | 1名 |
体外循環技術認定士 | 2名 |
第1種ME技術者 | 1名 |
第2種ME技術者 | 21名 |
心血管インターベーション技師 | 1名 |
不整脈治療専門臨床工学技士 | 1名 |
呼吸治療専門臨床工学技士 | 1名 |
集中治療認定臨床工学技士 | 1名 |
ICLSインストラクター | 1名 |
フットケア指導者 | 1名 |
第二種電気工事士 | 1名 |
初級シスアド | 1名 |
継続して実施する教育プログラムが認定資格の取得につながっています。また業務範囲追加に伴う厚生労働大臣指定による研修の受講促進に取り組みタスクシフトを行い質の高い医療が提供できるように日ごろから心掛けて業務しています。
医療機器管理業務
医療機器安全管理者を担い医療機器を適正に管理するためデータベースを構築し、医療機器の基本情報と点検・修理情報を記録しています。
このデータベースを基に生命維持管理装置だけでなく、院内の医療機器を購入から廃棄まで一元的に管理しています。定期点検の時期になればデータベース上に対象となる医療機器が、リストアップされる仕組みとしているため適切な定期点検が実施できています。医療機器メーカー主催のメンテナンス講習を積極的に受講し、メーカー指導のもと機器の部品交換も行っています。
また、医療機器を安全に使用するため全職員対象の「医療機器安全講習会」を定期的に開催し、新しく導入された医療機器の安全使用のための講習会を複数回開催しています。また、医療機器だけでなく医療ガス設備・電気設備に関しても、施設管理部と連携して安全管理に取り組んでいます。
MEセンター
医療機器管理業務のほかに生命維持管理装置の導入介助や設定などの対応を行っています。また、心臓カテーテル・心臓植込みデバイス・内視鏡に対して検査/治療の介助を業務としています。
業務内容
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心臓カテーテル業務
虚血性心疾患に対する冠動脈造影検査と経皮的冠動脈形成術、末梢動脈疾患に対する経皮的血管拡張術、頻脈性不整脈に対してのカテーテルアブレーション治療に対応しています。
虚血性心疾患に対しての検査や治療では、血管内超音波(IVUS)や光干渉断層法(OCT)の装置をはじめ冠血流予備量比測定装置(FFR)、ポリグラフ装置の操作。重症症例には、アテレクトミーデバイス、大動脈内バルーンパンピング(IABP)、経皮的心肺補助装置(PCPS)にも対応しています。
カテーテルアブレーション治療では、心臓電気生理学的検査(EPS)装置・心臓電気刺激装置や三次元マッピングシステム、高周波心筋焼却装置・冷凍焼灼装置などの機器の操作及び心内心電図の解析を行っています。
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心臓植込みデバイス業務
ペースメーカ・ICD・CRT-P・CRT-Dなどの移植/交換術と外来での心臓植込みデバイスチェックおよび遠隔モニタリングに対応しています。全機種対応できるようプログラマを常備しており、植込み患者さんの安全の確保のため医師と相談し常に最適な設定となるよう努めています。また、患者さんやご家族に電磁干渉など日常生活における注意点の説明も行っています。
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内視鏡業務
消化器内視鏡検査では、上部消化管内視鏡検査と下部消化管内視鏡検査、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)、内視鏡的胆管膵管造影(ERCP)などに対応しています。内視鏡や電気メスなどの医療機器の管理だけでなく、内視鏡の洗浄管理や検査及び治療の介助を行っています。また、2018年4月より呼吸器(気管支)内視鏡検査の対応を始め装置の操作と検査の介助に対応しています。
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呼吸治療業務
医療機器管理業務の一つとして人工呼吸器の使用中動作点検を1日2回行う以外に、医師・看護師など多種職で連携した呼吸ケアチーム(RCT)としての活動を行っています。また、睡眠時無呼吸症候群に対する治療法であるCPAP療法の装置の導入と患者さんへの説明や、治療データ解析を行っています。
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集中治療 救急業務
集中治療室(ICU/CCU)では人工呼吸器、血液浄化装置、大動脈内バルーンパンピング(IABP)、経皮的心肺補助装置(PCPS)などを中心に医療機器の安全な使用環境を提供するだけでなく、多種職カンファレンスに参加して医療機器の専門家として集中治療に携わっています。救急では、心肺停止症例に対して心肺蘇生法(CPR)、自動心臓マッサージシステムの装着と操作、人工呼吸器の操作など積極的に介入しています。また、救急医学会認定の蘇生コースを定期的に開催し、心肺蘇生の技術研磨と知識の向上に努めいています。
血液浄化
本館の透析室10床と西館の透析室34床を合わせた44床で、血液透析療法とLDL吸着療法を中心とした特殊血液浄化療法の穿刺から終了までの業務を看護師と協力して対応しています。また、集中治療室で行われる持続的血液浄化療法を代表とする急性血液浄化療法や重症症例に対する血液透析療法、そして血液成分分離装置を用いた末梢血幹細胞採取にも対応しています。血液浄化装置の保守点検はもちろん透析液清浄化ガイドラインに準じて透析液の清浄化にも取り組んでいます。また、内シャントのトラブルを早期に発見できるように超音波診断装置を用いてモニタリングを行いシャントマップの作成に貢献しています。
手術室
手術ごとに必要な医療機器を準備するマネージメントを含め、麻酔器・電気メスなどの保守点検や機器の操作をしています。心臓血管外科手術では、人工心肺装置や自己血回収装置の操作とステントグラフト留置術に対応しています。脳神経外科、耳鼻咽喉科、整形外科では、ナビゲーションシステムの操作を行っています。2022年からは泌尿器科、呼吸器外科で使用する手術支援ロボットの対応を開始し、すべての手術が安全かつ円滑に遂行されるように努めています。
これまでのあゆみ
1992年 | 臨床工学科 設立 臨床検査科科長が臨床工学科科長を併任。養成校卒業者2名採用され、主に20床の透析室の業務を中心に血液浄化を担う。 |
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1994年 | 臨床検査科より臨床工学技士免許所有者2名配置。人工呼吸器などの医療機器の保守点検業務を本格的に開始。血液浄化・心臓カテーテル・人工心肺の業務に待機制をとり緊急対応を含めて担う。 |
1995年 | MEセンターの前身となる部屋を構える。 |
1996年 | 手術室に臨床工学技士を配置する。 |
1997年 | 消化器内視鏡業務の対応を開始する。 |
2001年 | 専従の臨床工学科科長が誕生。独立部門となる。 |
2002年 | 西館透析クリニック34床・本院透析室10床・MEセンター・ペースメーカチェック室・消化器センターが開設 医療機器の中央管理化を開始する。 |
2003年 | 経皮的椎体形成術(セメント治療)の対応を開始する。 |
2004年 | 当直制を開始。24時間の対応が可能となる。また、医療従事者のための蘇生トレーニング(ICLS/BLS)を開始。その事務局を担う。 |
2005年 | 消化器内視鏡の緊急対応を開始する。 |
2008年 | 抹消血幹細胞採取の対応を開始する。 |
2009年 | 睡眠時無呼吸(SAS)外来開設 CPAP療法の対応を開始する。 |
2011年 | 不整脈カテーテルアブレーション治療がDSA室で行われることに対応を開始する。 |
2012年 | 脳神経外科が導入した「ナビゲーションシステム」の対応を開始する。 |
2014年 | 心臓血管外科のステントグラフト留置術の対応を開始する。 |
2016年 | 不整脈科が導入した冷凍焼却(クライオ)装置の対応を開始する。 |
2018年 | 呼吸器内視鏡(気管支鏡)の対応を開始する。 |
2021年 | 心臓植込みデバイスの遠隔モニタリングシステムを開始する。 |
2022年 | 手術支援ロボットの対応を開始する。 |