37.足の痛み、実は血管のつまりが原因かもしれません

「歩いていると、ふくらはぎや足の指が痺れて痛くなり、立ち止まって休みたくなる・・・」
「お尻や太ももの付け根がズキズキ痛む・・・」

こんな症状が続いている場合、末梢動脈閉塞症まっしょうどうみゃくへいそくしょうという病気が隠れているかもしれません。

 

■ 末梢動脈閉塞症とは?

全身の動脈が硬くなって血流が悪くなる「動脈硬化」が原因で、特に足に向かう血管が詰まりやすくなる病気です。
普段はあまり気にならなくても、歩いたときなどに足の筋肉へ十分な血液が届かなくなり、痛みや痺れなどの症状が出るのが特徴です。

この病気は放置すると、心筋梗塞や脳梗塞といった重大な病気のリスクが高くなることがわかっています。早めに気づき、検査や治療を受けることがとても大切です。

 

■ どんな症状が出るの?

以下のような症状がある方は注意が必要です。

歩いていると、ふくらはぎや足の指が痛くなり、立ち止まって休むと治る
→ これを「血管性の間欠性跛行はこうと呼びます

足の色が白っぽくなったり、冷たく感じる

足の血管の拍動(脈)が弱くなる

足の毛が抜けたり、爪がもろくなる

また、稀に血管の詰まりがもっと上の方(お尻や太ももの付け根)に起きると、
お尻、鼠径部(太ももの付け根)、大腿部の痛み

 

これらの症状は、腰部脊柱管狭窄症と似ていることがあり、間違われやすいため注意が必要です。

 

■ どんな検査をするの?

そのため、「ABI(足関節上腕血圧比)」という検査がよく使われます。これは、足と腕の血圧を比べるだけの簡単な検査です。ABIの値が0.9未満だと、足の血流が悪くなっている可能性が高いとされます。

さらに必要に応じて、腰の単純レントゲン(図1)やCT(図2)などで血管の石灰化((白く映ります)硬くなって詰まりやすくなっている部分)を調べることもあります。太ももの血管の詰まっている状態を血管撮影で確認します(図3:左赤矢印で詰まっています)。心臓や脳の血管の状態を確認する追加検査を行うこともあります。

 

■ どうやって治すの?

まずは、動脈硬化の原因となる生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)への対処が基本です。

 

血圧や血糖、コレステロールの管理
禁煙
ウォーキングなどの運動療法(医師の指導のもとで)
抗血小板薬(血液をサラサラにする薬)の内服

さらに、症状が重い場合やABIの値が非常に悪い場合には、カテーテルによる血管治療(バルーン拡張やステント留置など)が必要になることもあります(図3:右黄色矢印のように流れるようになりました)。

 

足のしびれや痛みが「歩くと出て、休むと治る」という特徴がある場合は、末梢動脈閉塞症の可能性があります。
「腰が原因の痛み」と思っていても、実は足の血管が詰まりかけているというケースもあります。
早期発見・早期治療が、命を守るカギになります。

 

気になる症状がある方は、脳神経外科や循環器内科などで一度ご相談ください。

 

参考文献
田中秀一, 川西昌浩 他. 腰部脊柱管狭窄症の術後に鼠径部痛で発症した末梢動脈閉塞症の1例. 脊髄外科 34:169-173, 2020.

 

脳神経外科・低侵襲外科部長 田中 秀一

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