35.非定型大腿骨骨折って何?

■ 転倒なしでも起こる骨折

高齢者が転倒すると、大腿骨(ももの骨)の頸部骨折(骨盤に近い部分の骨折)を起こしやすいことが知られていますが、今回は転倒しなくても起こる「非定型大腿骨骨折」についてお話しします。

骨粗鬆症の治療薬を3年以上使っている方の中には、強い衝撃を受けていないのに大腿骨が折れてしまうことがあります。特に太ももの前や付け根が痛む場合は、腰からくる神経の痛みとよく似ているため、注意が必要です。

普通の大腿骨骨折(転倒などで起こるもの)とは違い、軽い負担でも骨折が起こるのが特徴です。また、約10~15%の方は両足に発生するため、一方が骨折したら反対側の骨もチェックすることが大切です。

 

■ 誰がなりやすいの

この骨折は全体の大腿骨骨折の0.5%と少なく、年に10万人あたり約19人とされています。ただし、日本人を含むアジア人は白人よりも8倍発生しやすいと言われています。

特に70歳以上の方に多く、骨粗鬆症の薬を長く使っている方は注意が必要です。

 

■ こんな症状はありませんか?


「なんとなく太ももや足の付け根が痛い…」

 

そんな違和感を放置していませんか?

実は、それが骨折の前兆かもしれません。
約20%の方は、骨折する前に太ももや付け根の痛みを感じています。痛みが出てから骨折まで、1カ月~2年と幅があるため、早めの検査が大切です。

 

■ 検査で何がわかる?

検査では、レントゲン(図1)やMRI(図2)で骨の異常を確認し、骨密度検査で骨の強度を評価します。さらに、血液検査(骨代謝マーカー)によって骨の新陳代謝の状態を調べます。

特に、太ももの外側に「くちばし」のような骨の変化が見られる場合(図1の赤丸部分)、注意が必要です。図2のMRIでは、黄丸で囲った白く光る部分が異常所見を示しています。

この患者さんは、同部の骨折が生じて(図3の矢印)、治療を受けることになりました。

 

■ どうやって治療するの?

もし骨折が起きた場合、手術と薬の見直しが必要になります。
骨粗鬆症の薬を一時的に変更することもあり、ビタミンDやカルシウム、骨形成を促す薬で骨を強くする治療が行われます。また、通常の骨折と違い、治るまでに6~12カ月かかるため、慎重な経過観察が必要です。

 

■ 早めの受診が大切

太ももや付け根に違和感や痛みがある方、骨粗鬆症の薬を3年以上続けている方、転んでいないのに太ももが痛む方は、早めに病院で検査を受けましょう。
「いつもの痛み」と思わず、骨折のサインかもしれないと気づくことが大切です。

 

 

参考文献
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低侵襲外科部長 田中 秀一

 

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